小池百合子都知事

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 豊洲新市場で行われた9回目の地下水モニタリング調査で検出されたのは、これまでの結果を大幅に上回る“環境基準の79倍”に当たるベンゼンである。

 ところが「9回目」を担当した業者は、調査前に排水されるはずの水をそのまま分析にかけるという、過去8回とは異なる手法をとっていた。“都からの指示で行った”“再調査の指示もなかった”と業者が証言する一方、都側は“業者からの相談はなかった”とこれを否定。これは調査の信頼性を揺るがす不祥事に他ならない。盛り土問題が発覚した後の会見で小池百合子都知事(64)述べていた〈ガバナンス(統治)、責任感の欠如〉という発言は、そのまま自身に突き刺さろうとしている。

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 さらに京大大学院の米田稔教授(都市環境工学専攻)は、築地市場の土壌汚染疑惑に関する彼女の発言に注目する。

小池百合子都知事

 今年で開場から82年を迎える「東京の台所」は戦後、GHQの占領下にあった。当時の築地には米軍のドライクリーニング工場が置かれ、人体に有害な有機溶剤で土壌が汚染されている危険性が指摘される。ところが、築地では都の環境確保条例に基づく調査が行われてこなかったというのだ。小池知事は、

〈これまでも長年使われてきた所であります。基本的にあそこはコンクリート、アスファルトでカバーされている。汚染という観点、もしくは法令上の問題はないという認識です〉

 と、これを一蹴したが、

「小池知事が仰るように、築地市場の土壌汚染は心配する必要はないと思います。ただ、それならば、客観的な地上部の調査データもあり、新しいコンクリートで覆われている豊洲市場も明らかに安全でしょう」(米田教授)

 この発言も立派なブーメランなのである。

 化学物質のリスク評価の第一人者である、産業技術総合研究所の中西準子名誉フェローが言葉を継ぐには、

「そもそも地下水の環境基準は、70年に亘って毎食その水を摂取し続けた10万人のうち、がんになる人が1人以下という厳しい設定になっています。ただ、豊洲の場合は地下水を飲んだり、魚を洗うわけではないので土壌汚染対策法に照らしても問題はないのです。“ベンゼンが79倍”という数字だけがひとり歩きしていますが、これも201カ所の井戸のうち、たった1カ所で検出された結果に過ぎません」

 モニタリング調査の不手際はともかく、専門家は豊洲が「安全」だと口を揃える。それでも、小池知事が移転の先延ばしを続けるのは、「この問題を都議選の争点と位置づけている」(都政担当記者)からに他ならない。

■ポピュリズムの極致

 これには築地市場協会の伊藤裕康会長も憤りを隠せない。

「我々としては決算期の3月までに結論を出してほしいと訴えてきました。それなのに、7月の都議選の争点にするというのは不愉快千万です。小池知事の独断で延期が決まって以降、我々との話し合いの場が設けられたのは1度だけ。一体どこが“都民ファースト”なのでしょうか」

 さらに、都庁関係者によれば、

「小池知事の特別秘書を務める野田数(かずさ)氏は豊洲について“トイレでご飯は食べたくないでしょ”と周囲に漏らしている。そして、“改修工事は必要だけど、築地で市場は続けられる”とも。しかし、6000億円かけて建てた豊洲新市場への移転を白紙撤回し、築地を再整備するとなれば住民による行政訴訟が懸念されます。そこで、小池知事周辺はリスクを回避するウルトラCとして“住民投票”を検討し始めた。移転の可否を住民の判断に委ねれば自らの責任が問われづらくなるというわけです」

 とはいえ、橋本大二郎元高知県知事に言わせると、

「これだけ不確定要素が多い状況下で住民投票を持ち出すなどナンセンス。ポピュリズムの極致だと思います。むしろ、専門的な知識まで理解を深めた上で、議会がきちんと議論を尽くすべきです」

 進むも地獄、退くも地獄、口を開けばブーメラン。都庁の「ヒロイン」の茶番劇にハッピーエンドが待っているとは思えない。

特集「インチキ調査!?『ベンゼン79倍』で小躍りの『小池都知事』に突き刺さったブーメラン」より

「週刊新潮」2017年3月16日号 掲載