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●ローコストホテルというコンセプト
ロボットホテルで話題の「変なホテル」。ロボットが受付をこなすなど目新しさに溢れたホテルだ。HISホテルホールディングスは今後、フランチャイズ展開なども含めて出店を加速する考えだが、どんな戦略を描いているのか。

○変なホテルとは?

長崎県ハウステンボス内に2015年7月に誕生した変なホテル。宿泊者のチェックイン/チェックアウトなどをロボットが担当し、人手を極力かけないローコストホテルとして、運営面でも注目を集めているホテルだ。

変なホテルは当初30人体制で運営されていたが、順次ロボットを導入することで2017年3月現在は7人にまで減っている。最終的には6人体制で運営していく方針だ。従業員の少なさを取り上げるのは、ホテル運営において、人件費の負担が非常に多くの割合を占めるからだ。「生産性の高いホテルとは何なのか」という素朴な疑問に対しての答えがロボットホテルというわけである。

このほど千葉県浦安市にオープンした2号店の「変なホテル舞浜 東京ベイ」(以下、2号店)も従業員は少ない。スタート時で7人体制であり、ハウステンボス店のノウハウを開業時から活かした形だ。

ただし、この7人体制については少し補足説明が必要だ。朝昼晩のタイムシフトを考慮すると、常駐するのは1人か2人。となると、チェックアウト後の客室の清掃やベッドメイキングなども含んだ人数なのか? など疑問が出てくる。

2号店の運営方法を聞く限り、客室の水回りの清掃、ベッドメイキングのほか、レストランなど一部の仕事を外部委託し、運営上やるべきことを絞った状態での人数になるようだ。宿泊予約も電話での受付はなく、ウェブ経由に絞られているという。

●5年以内にシステムを1000店に
○1泊5000円で利益が出せる

いずれにせよ、ロボットを取り入れたことで実現したのは、超ローコストホテルだ。HISホテルホールディングスの平林朗社長によると、人件費は「他のホテルの5分の1から8分の1」。過去、ハウステンボス店の状況について語ったエイチアイエス澤田秀雄代表の発言を紐解くと「1泊5,000円でも利益が出る」としている。変なホテルは現状、シングル1泊で1万3,000円程度からというのが相場のようだが、1泊5,000円のチェーン系ビジネスホテルに負けない力を持っているわけだ。

仮に同じ料金になったとしても、ロボットが運営するという新味があり、他社との差別化が大きくあり、運営上も24時間稼動となってもロボットは文句を言わないなど、メリットは多々としてありそうだ。

○変なホテルの出店戦略

ローコストを実現した変なホテルだが、今後の出店戦略はどうなっているのか。平林代表によると、1号店のハウステンボス、2号店の千葉舞浜、ラグーナテンボス(2017年8月愛知県蒲郡市に開業予定)の3店を実証実験の施設として捉え、効率化の仕組みに磨きをかけ、フランチャイズ展開を図りながら、システム販売も行っていくとのことだ。

徹底的な効率化を果たした変なホテルの運営手法を提供するのが、このシステム販売だ。変なホテルのように多数のロボットを導入するのか、または一部分だけにとどめるのか、など、顧客の要望に応じてコンサルティング要素を含んだノウハウの販売を行っていく。5年後には世界で1000件のシステム販売を行い、目指すは「ホテル界のゲームチェンジャー」だ。

フランチャイズ展開、システム販売を通じて、変なホテルの運営方法に魅力がある限り、日本においてロボットを活用したホテルが増えるのは間違いなさそうだ。

●物珍しさというプレミアム
○変なホテルに感じる懸念

ただし懸念もある。自社物件にしろフランチャイズ物件にしろ、増えていく店舗が画一化してしまうのではないかという心配だ。

ハウステンボス店は開業以来、約1年半を経ても3月の稼働率は90%と高い。開業したばかりの2号店も80%稼動と、今のところ順調だ。しかし、そこには物珍しさというプレミアムが含まれているはず。もし、今後増える変なホテルがどこに行っても同じでは、稼働率の低下を招きかねない。

そのあたりを考慮してか、変なホテルは、2ブランド戦略を打ち出している。ひとつはエンタテインメント性の高い現行の「変なホテル」ブランド、もうひとつはビジネスユース向けの「変なホテル」ブランド(ブランド名は未定)だ。さらには立地に応じて全店舗の色合いが異なるように味付けをしていくという。

さらには、変なホテルの"変"の字には、常に進化し、変わり続けるという意味が込められたものであり、宿泊者アンケートを通じて、常に改善・改良を行っている。

具体例として「ロボットだと、ロビーが寂しいと言われるので、ロボットのオーケストラを入れたりだとか、ロボットがカクテルを作るロボットバーを作る準備もしています。変なホテルは常に改善して、進化していく。快適さと面白さは年を追うごとに増していくと思います」など、常に進化を意識した運営を目指していると澤田氏は話す。ある意味、同じ店舗でも、訪れるたびに新しい発見があるというわけだ。

しかし、「改善といっても、またすぐに飽きられるのでは」といった懸念は払拭できない。「ロボットに病気はないが、壊れることならある」という点も見逃せない。それらが裏目に出れば、採算に悪影響を及ぼしかねない。

○夢のある事業

このあたりは注視していくべき部分だが、変なホテルの本来的な価値は、生産性の高いホテルであり、そこにロボットを活用したにすぎない。ロボットが飽きられても"宿泊する"というホテルの本来的な役割が損なわれるわけではなく、採算ラインを大幅に上回る運営ができている現状、まだまだ夢のある事業といえるだろう。

さらには、長期スパンで見れば、技術の進化とともに今以上に魅力が増える事業といえる。たとえば、AI技術の発達により、雑談をこなせる受付ロボットも実現できるだろうし、画像認識技術と顧客データを紐付ければ、宿泊者個々人に応じた"おもてなし"もできるだろう。そうした技術の採用には、コストやセキュリティの問題など、多数の課題が生じるだろうが、変なホテルは、大きな夢の詰まった事業となりそうだ。

(大澤昌弘)