「拒食症」が女性に多いのはどうして?

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執筆:伊坂 八重(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ


拒食症は、女性に多い病気です。

なかでも、10〜20代の若い女性に多いといわれています。

しかしなぜ拒食症は女性に多い病気なのでしょうか?

この答えを探るために、今回は拒食症について解説していきます。

拒食症ってどんな病気?

拒食症は、激しい運動や必要以上のカロリー制限によって低体重(標準体重の80%以下)を引き起こす病気です。

専門的には「神経性無食欲症(神経性やせ症、神経性食思不振症)」と呼ばれています。

また、「思春期やせ症」という名前で呼ばれることもありますが、これは思春期のころに拒食症を発症する女性に多いことに由来しています。


拒食症は、食事のとり方や食習慣に問題がある摂食障害のひとつで、大きく2つのタイプに分けられます。

1. 摂食制限型


過度な運動と徹底的な食事制限によって低体重になるタイプ

2. 過食・排出型


過食(むちゃ食い)をしつつも、体重増加を防ぐための代償行動(※)を行うことで低体重になるタイプ

※代償行動とは、自ら嘔吐を誘発する、緩下剤・浣腸・利尿薬を乱用するといった不適切な排出行動のことで、過食をした代償として行われる。


この2つのタイプは、体重を減少させるプロセスに違いがありますが、食行動に異常をきたし、低体重をひきおこすという点で共通しています。

拒食症を発症しやすい性格

拒食症は、ダイエットをきっかけに発症することが多いといわれています。とはいっても、ダイエットに挑戦した人がすべて拒食症を発症するわけではありません。

拒食症を発症しやすい要因がいくつかあるところに、ダイエットというきっかけが加わることで発症するのです。

そして、拒食症を発症する要因のひとつに挙げられるのが本人の性格傾向です。

具体的には、次のような性格傾向があるといわれています。

・負けず嫌い
・完璧主義
・「こうであるべき」というべき思考
・物事の白黒をはっきりさせたいと白黒思考
・自分に厳しいストイックな性格

また、拒食症患者は自己評価が低い人が多いといわれています。

自己評価が低く、上記のような性格傾向の人がダイエットをすると、体重の減少が自分への評価を高めることに繋がりやすくなります。

その結果、身体に危険が及ぶほどやせているのにダイエットをやめられない状態、つまり拒食症になってしまうのです。

このほか拒食症の発症に関係している要因として、家庭環境や母親との関係性が指摘されることがあります。

これは、拒食症を発症しやすい性格や自己評価の低さが作られる背景に、家庭環境が強く影響しているためです。

さらに、拒食症に大きな影響を与えている要因がもう1つあります。

それが、「やせることは良いこと」という社会風潮です。

拒食症は、患者の男女比率が1:20と圧倒的に女性の患者が多い病気ですが、このことと、社会風潮には大きな関係があるといえます。

どういうことなのか、次から詳しく見ていきましょう。

拒食症が女性に起こりやすいワケ

1960年代ころより、アメリカでは「やせていることは自己管理ができていること」という風潮が広まりました。

この風潮は日本にも影響を与え、現在でも「やせていることは良いこと」という風潮がとくに若い女性の間で広がっています。

実際、雑誌やテレビなどで取り上げられる女性はやせている女性が多く、それが若い女性の憧れの対象になっていますね。最近では、ぽっちゃり体型の女性がモデルをする雑誌なども増えていますが、それでも「やせたい」という女性が多いのが現実です。

そして、この社会風潮は拒食症の発症に大きく関係しています。

先ほどお話したように拒食症を発症する患者の中には自己評価が低い人が多く見られます。

このような性格傾向を持つ人がやせて周りから「やせて、きれいになったね」などと言われると、どうなるでしょう。

「やせることは人から認められること」と認識されてしまい、ダイエットを加速させたり、ひいては拒食症を発症させるきっかけにもなります。

拒食症がカラダに与える影響

拒食症は、カラダやココロ、そして行動にも異常をきたす病気です。

とくに、低栄養状態によって徐脈(脈が遅くなる)や低体温、低血圧、運動障害や意識障害がといった症状が現れることがあり、この状態が悪化すると、死に至ることもあります。ですから、拒食症は決して看過できない病気なのです。

また、女性の場合、女性ホルモンのバランスが乱れて月経不順になったり、骨粗鬆症を合併することがあります。

この状態を放っておくと、将来的な不妊のリスクにもつながるため、早期の治療が必要です。

女性の中には、「やせたい」という気持ちから日々ダイエットに励んでいる方が多くいることでしょう。

でも、そのダイエットは本当に自分を美しくするものなのか、健康にするものなのか、ぜひ改めて考えてみてください。


<執筆者プロフィール>
伊坂 八重(いさか・やえ)
メンタルヘルスライター。
株式会社 とらうべ 社員。精神障害者の相談援助を行うための国家資格・精神保健福祉士取得。社会調査士の資格も保有しており、統計調査に関する記事も執筆


<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供