とはいえ酒量は適切に

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「酒は太る」とよく言われます。実際、缶ビールを1本飲んだだけで摂取カロリーは150kcalを超えますし、酒飲みほど腹が出ているイメージが強いのも確かでしょう。

 しかし、そのいっぽうで反対意見もよく耳にします。アルコールはカロリーとして摂取されないため体脂肪にはならず、酒で太るのは、あくまで食欲が増して「つまみ」を食べすぎてしまうからだというのです。

 それでは、酒はどこまでダイエットの敵なのでしょうか?

 酒太りに関する研究は、1980年代から何度も行われています。まずは実験室で行われた研究データを見てみましょう。

 2006年にオランダで行われた実験では、太りぎみな34人の男性に1日450mlのワインを飲み続けてもらいました(1)。1日の食事量は変えていないため、いつもの食事に330kcalも余分なカロリーを追加した計算です。

 ところが、4週間後の結果は「全員の体重に変化なし」。誰も体脂肪は増えておらず、みんな実験前と同じ体型をキープしていたのです。

◆ダイエット中の飲酒もまったく影響なし

 もうひとつ、2014年にはイタリアでも似たような実験が行なわれました(2)。268名の男女に6カ月のダイエットにチャレンジしてもらい、アルコールの摂取量と体重の変化をチェックしたのです。もちろん、こちらも食事の摂取カロリーは一定に調整されています。

 これまた結果はほぼ同じで、ダイエット中にアルコールを大量に飲もう飲むまいが、減量の成功とはまったく関係がなかったとのこと。やはり、アルコールのカロリーだけで体重は増えないとみてよさそうです。

 続いて、「アルコールで食欲が増すから太る」という説についてはどうでしょうか?この問題については、2011年にマイアミ大学がおもしろい研究を行っています(3)。

 調査の対象になったのは、120,877人の平凡な男女です。研究チームは、全員のアルコール摂取量と食事量を4年にわたって記録し続け、酒で体重がどう変わるかを調べあげました。

 その結果わかったのは、「酒をよく飲む人ほど体重が増えやすい傾向はあるが、その影響は4年で0.19kgぐらい」という事実でした。確かに、酒が好きな人ほどポテチや加工肉といった不健康な食品に手を出す傾向はあったものの、肥満を引き起こすほどの悪影響はないようです。

 また、2010年にも似たような研究が行われましたが、こちらも結果は変わりません(4)。43,093人のアルコール摂取量と肥満の関係を1年にわたって調べたところ、酒をよく飲む男性ほどBMIが増えていく傾向はありつつも、その影響はたいしたレベルではなかったようです。

◆一日のカロリー75%以上を酒で摂らない限りは太らない

 ただし、いくら酒は太りにくいとはいっても、なにごとにも上限はあるはず。いったいどれだけ飲むと本当にヤバいのでしょうか?

 そこで参考になるのが、ロンドン大学による2014年の論文(5)。8864人の男女を調べた観察研究で、1日にどれだけの酒を飲むと肥満につながるかを調べたものです。その結果は、以下のようなものでした。

・1日のカロリーの75%以上を酒で摂ると肥満率が70%アップする
・酒量が1日のカロリーの25%以下の場合は問題がなかった

 カロリーの75%以上とは驚きの数字じゃないでしょうか。肥満の前にアルコール中毒や肝炎を心配したほうがいいレベルです。

 もちろん、このデータはある時点での酒量と肥満の関係しか調べていないため、エビデンスのレベルはやや落ちます。しかし、3327人を対象にした2005年のリサーチでも「週に21杯以下までの酒なら体重に影響はなかった」との結果が出ており、現時点では相当の量を飲まない限り体重への心配はなさそうです(6)。