回転こそしないが、ラブホ的な利用で最も人気のスイートルーム。1泊2200バーツ(約7210円)。(THE HOUSE OF PHRAYA JASAEN提供写真)

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 下世話な話だが、タイの男女が肉体関係を持つとき、そもそもタイにはラブホテルというジャンルがなく、時間貸しをする小規模宿泊施設(以下便宜上ラブホテルとするが)のようなところに行く。こういったところは場末の小屋のようにひどい有様が多い。地方のラブホテルは1時間100バーツ前後(約330円)くらいからあり、基本的には街角に立つ売春婦とのちょんの間のような役割で、雰囲気もなにもない。

 バンコクはさすがにもうちょっと洒落たところはあるが、日本の昭和時代かとも思えるような設備であり、人も何人か死んでいそうな怪しいところばかりだ。

 そんな中、チャオプラヤ河に沿った古い区域に“おしゃれなラブホテルがある”という話を聞いて見に行ってみた。

「THE HOUSE OF PHRAYA JASAEN」というホテルで、バンコクでは旧市街に当たる地域にあった。チャオプラヤ河も目の前のニューロード沿いで、バンコクで一番最初にできた欧州式の舗装道路だから“ニュー”と付くのに最も古い通りというおもしろいエピソードもある歴史的な場所にある。
 まだ開業して2年ほどというこのホテルは外観はきれいで、そもそもラブホテルというのは大きな誤解だ。あくまでも新興の、外国人にも人気が出始めている中級ホテルであった。

◆バンコクで中級ホテルが増加中

 この2年3年でバンコクは中級ホテルの数が急激に増えた。かつては低予算でバンコク旅行をしようというと若者はカオサン通りを目指したものだ。レオナルド・ディカプリオ主演映画「ザ・ビーチ」(2000年)の冒頭でも登場した安宿街で、この年の前後は国籍別では日本人が最も多いというほど人気があった。しかし、現在は日本人旅行者がカオサンを訪れるのは宿泊ではなく、観光地としてやってくる人ばかりになってきている。

 それは単純にはカオサンの機能にメリットがなくなったからだ。ネット検索が便利になり、バックパッカーたちの口コミ情報収集が不要になった。航空券も2000年以前はタイが最も航空券の安い国とも言われたが、今や格安航空会社も登場しているし、レガシーキャリアでさえネットで早い時期に買えば安い。

 そして、なによりタイの物価が上がった。ジャンルによっては日本の方が安いものさえある。最近は日本人バックパッカーはタイに来ないでカンボジアのシアヌークビルやインドのプリーに流れるという話もある。カオサンも物価が上がり、しかもそこからバンコク市内観光のための往復を考えると、500〜2000バーツ(約1650〜6000円)の中級ホテルの方がコストパフォーマンス性に優れている。

 こうして今、日本人だけでなく、世界中の低予算旅行者はバンコク中心の中級ホテルを求めている。「THE HOUSE OF PHRAYA JASAEN」もその中のひとつになる。

 このホテルのオーナー、チャータヤー・ウォンパイブーンさん(ニックネームはウーさん)はタイで有名なデザイナーだ。12歳で当時誰もやっていなかったオリジナル・プリントのTシャツを皮切りに創作活動をはじめ、今は本職をインテリアデザイナーとしている。

 タイでアートデザイナーとして食べていくにはインテリアだと見て、このジャンルに入って27年が過ぎた。現在48歳であり、この年齢でデザイナーとして地位を確立しているということは相当な富裕層であると見る。実際、話し方も穏やかでユーモアにあふれた人物であった。
「インテリアデザインを手がけていることもあって、いつかは自分でデザインしたホテルを経営したかった。そんなときに、この物件を譲り受けることができ、ホテル業を副業として始めました」

 まだオープンして2年程度しか経っていないが、今はタイ旅行のオフシーズンでも70%以上の稼働率となる。基本的に宣伝はどこにも出していないが、口コミでここまで広がった。主に「トリップアドバイザー」がメインになる。外国人では主に中国人や欧米人が泊っていく。