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●顧客の声から始める新しいユニクロ
今までのアパレルの製造小売業から“情報製造小売業”へ――。ユニクロが進める抜本的なビジネスモデルの変革を、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏はこのように表現した。新生ユニクロは何を作り、どのように売るのか。

○顧客の求めるものだけを作る

ファーストリテイリングが「有明プロジェクト」と銘打って進める全社的な改革。これを総括するグループ執行役員の田中大氏によると、ユニクロは「作ったものを売る」企業から、顧客が求めているものをリアルタイムで把握・商品化し、素早く手元に届ける企業へと変貌を遂げようとしている。その原動力となるのはデジタルイノベーションだ。

肝となるのは、ファーストリテイリングが構築を進めるAIを駆使した情報プラットフォームの存在だ。このプラットフォームに顧客の声を集約し、どんな商品が、どこで、どのくらい求められているのかを割り出す。この情報をもとに商品の企画、生産、販売を行うのが情報製造小売業としてのユニクロが目指すビジネスモデルだ。「服を着る人と作る人の境目をなくす」と田中氏は語る。

○スピードを追求

顧客のニーズを素早く商品に落とし込むにはスピードが不可欠となる。ファーストリテイリングでは商品を作る際、企画、生産、販売という流れでリレー方式に仕事を進めていたが、これからは各社員が同じ情報を共有し、連動して動くような仕事の進め方を目指すという。

サプライチェーンのスピードアップに向けては、まずは商品の情報を全てデジタル化し、ライブラリーに集約することで、素早い企画立案を実現する。これまでの進め方では、例えば春物であれば春が来る前に企画を完了し、シーズンに合わせて新商品を投入していたのだが、企画立案のスピードが上がれば、今後はリアルタイムで顧客の求めるものを企画・商品化し、シーズン中に新商品を投入することが可能になる。

生産面の改革としては、新商品の投入サイクルを短くする。これまでは月ごとに新商品を作っていた工場でも、今後は週ごとの新商品に対応可能な体制とし、シーズン中に新商品を生産する比率を上げていく。物流面では空輸の活用や倉庫の自動化などでスピードを追求する。

販売面ではオンラインストアの商品を充実させ、スマートフォンサイトには直感的に商品を探せるような仕組みを導入した。商品はセブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの店舗(計4万3,000店)で受け取れる体制が整っている。

これら全ての取り組みが噛み合えば、顧客は自分の望んだ商品を、いつでも、どこでも買うことができるようになり、店舗に出向かなくてもコンビニで受け取れるようになる。

それでは、製造小売業から情報製造小売業へと変革を遂げた後のユニクロはどんな商品を売るのか。柳井氏に質問する機会があったので聞いてみた。

●全く新しい小売業の姿は示せるか
○どんな商品を作るのか

作ったものを売る企業から、顧客が求めているものを理解して「それだけを売る」(田中氏)企業へと変貌を遂げるユニクロ。まず気になったのは、多くの顧客が求める最大公約数的な商品が増えるのか、求める顧客は少数でも面白い商品であれば作るのか、というポイントだ。これについて柳井氏は「両方ともできると思う」と即答。顧客の声が工場に届く仕組みを作れば、ロットに関係なく、求められている商品を作ることが可能との考え方を示した。

では、顧客が求めるものが、ユニクロとしては作りたくない商品だった場合はどうか。例えば、3回着ればダメになってしまうようなシャツでもいいので、100円くらいで売って欲しいというような要望が多かった場合だ。それについて柳井氏は、「(ユニクロが掲げる)LifeWearというコンセプトは変わらない。ベーシックで、トラディショナルで、今の流行を取り入れた商品という範疇は変えられない」と回答。顧客の声に応えることと、アパレルメーカーとして商品の質を担保していくことは両立できるというのが同氏の見立てだ。

○顧客本位のビジネスが深化

筆者は以前、ユニクロが始めた「セミオーダージャケット」の取り組みを取材したことがあるが、その際に見たのは、マスブランドであるユニクロが、一人一人の顧客に寄り添ったビジネスを展開しようと方法を模索する姿だった。有明プロジェクトの説明を聞いて、同社が顧客本位のビジネスモデルを深化させようとしていることが確認できた。

情報製造小売業への転換。壮大な構想ではあるが、うまくいけばユニクロは大量生産、大量消費のファストファッションから脱却し、何か新しい小売業の姿を提示してくれる存在になるかもしれないと感じた。

(藤田真吾)