ネパールの首都カトマンズの西約520キロに位置するスルケート郡で、生理期間中に屋外で食事の支度をするパブリタ・ギリさん(左)とユム・クマリ・ギリさん(2017年2月3日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】ネパール西部にあるこのわらぶき屋根の小屋に寒さを防ぐ壁はない。中は一段高くなっており、生理中の女性を不浄な存在とみなすヒンズー教の慣習「チャウパディ(Chhaupadi)」に従って家を追い出されている間、パブリタ・ギリ(Pabrita Giri)さん(23)はここで眠るのだ。

 この「チャウ・ゴット」と呼ばれる小屋でギリさんは小さな火をたいて暖を取る。窮屈な小屋の中に煙が充満し涙が流れる。

 ギリさんは「チャウパディに従わなければ良くないことが起きるが、従えば(神々が)利益を授けてくれるとされている。効果があると思っているから生理中はこの慣習に従うの」と語った。

 ギリさんは身の回りを指し示しながら「もうこの慣習にも慣れたけど、はじめの頃は怖かった。家族から離れてこんな場所で暗い夜を過ごさなければならないんだから」と語った。

 生理中の女性を汚れているとみなすこの慣習は数世紀にわたって続いている。女性たちは家から追い出され、食べ物、宗教的象徴、牛、男性に触れることを禁じられ、簡素な小屋での追放生活を強いられる。

 出産後の女性も1か月間チャウ・ゴットで過ごさなければならない地域もある。

 最近チャウパディを行っていた2人の女性が死亡した。1人は暖を取るための火から出た煙を吸って窒息死した。もう1人の死因は明らかにされていない。これらの事件を受けて、この慣習は終わらせるべきだという運動に拍車がかかった。

 チャウパディは10年前ほど前に禁止されたが、この慣習の女性への強制を自由刑が科される犯罪とする法案が議会で審議中だ。

 この法案を推進しているクリシュナ・バクタ・ポクレル(Krishna Bhakta Pokhrel)議員はAFPに対し「女性はチャウパディを伝統として受け入れてきた。法律でチャウパディが犯罪と規定されたらこの伝統はすたれ、多くの女性の権利と生命が守られるだろう」と語った。

■神々のために

 しかしチャウパディの廃止を目指したこれまでの試みは、この慣習を支える深い迷信的な信仰の前に失敗に終わってきた。

 長年にわたりチャウパディ廃止を目指してきた人権活動家のペマ・ラキ(Pema Lhaki)氏によると、首都カトマンズ(Kathmandu)でさえ4世帯につき1世帯が、生理中の女性に台所や祈りの部屋への立ち入りを禁じるといった何らかの制約を課しているという。

 ラキ氏によると、この慣習を廃止しようとする試みのほとんどがチャウ・ゴットの破壊を目標に掲げてきた。しかし一部の地域で女性にもっと粗末な小屋や屋外での寝起きを強制した事例もみられ、女性が家から追い出されるのを防ぐことはできなかった。

 ラキ氏は「女性自身に決定権を与える前に生理期間を過ごす小屋を破壊するというのは表面的な目標にすぎない。小屋は残すべきだ。小屋があるのに女性がその中に入らなくなれば成功だといえる」と述べ、単に国際ドナーが設定した基準を満たすためにチャウ・ゴットの破壊を推し進める政府を批判した。

 この慣習をかたくなに守ろうとしているのはネパール農村部の嘆かわしいほどにお粗末な医療サービスの間隙を埋めている村のまじない師たち。それと長老たちだ。

 村はずれの家で、頭からつま先まで覆う白い衣装を身に着けたまじない師のケーシャル・ギリ(Keshar Giri)さんは、多くの病気の原因はチャウパディに従わない女性なのだと説いていた。彼は何らかの問題を抱えて訪れた女性にこの慣習に従うようアドバイスすることが多いという。

 ケーシャル・ギリさんは「こうした数日間(生理期間中)女性に遠ざかるよう命じるのは人ではない、われわれが崇拝する神なのだ」「それが神々のためになるのだ」と語った。
【翻訳編集】AFPBB News