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産業技術総合研究所(産総研) データフォトニクスプロジェクトユニットは、通信機器メーカーと連携して、光スイッチを駆使することで光信号を電気変換せずに光のまま交換し、超大容量・超低消費電力・超低遅延を実現した情報通信ネットワークシステムを開発したことを発表した。この詳細は、3月19〜23日に米国ロサンゼルスで開催される光通信国際会議「The Optical Networking and Communication Conference & Exhibition 2017」(OFC2017)において、プロトタイプ機の動態展示とともに8件の論文発表が行われる。

現在のネットワークではLSIを用いて電子的にパケット処理するルーターが広く使用され、メールやWEB閲覧などの小さな処理には適しているが、情報量に比例して消費電力が増大するため、今後の高精細映像など大きな情報量処理の需要に対してルーターの消費電力が増大し、社会問題となる可能性があることが懸念されていた。この問題を解決すべく、産総研はルーターを介さない光スイッチを使用した回線交換型の新しい「ダイナミック光パスネットワーク」を提案し、同ネットワークの実現に向けて通信関連企業10社とプロジェクトを立ち上げた。

「ダイナミック光パスネットワーク」技術を普及させるために、同ネットワーク構成の柔軟性を広げ、異なる企業が製造するさまざまな構成要素を同一のシステムに搭載できる標準規格を提案し、通信機器メーカーらと連携して提案規格に準拠したネットワークシステムを開発したという。同システムは、従来のオールインワン型からブレードと呼ばれる機能ごとに分割し、組み合わせ自在となるディスアグリゲーション方式を採用。これにより、異なるメーカーの製品同士でも同一のシステムに搭載可能となり、比較的安価に機能追加や性能改善を図ることができる。これらを組み合わせることで小規模から大規模ネットワークまでシームレスに対応できるとしている。

今回は、光ネットワーク機器のさらなる技術開発に加え、その成果を広く普及させるためにデファクトスタンダードを目指して、産総研が標準ブレードとブレードを収容する標準ラックを規格化したほか、さまざまな企業の製品を連携制御するための中間制御装置を開発した。従来、光伝送ネットワークに異なるメーカーの装置が混在させるのは難しいと考えられてきたが、今回、高速連携動作を実現する制御インターフェースを開発したことで、NEC、富士通、産総研製の異なった機器同士の高速連携動作を実証したという。連携動作を可能にするために開発された中間制御装置は汎用サーバーを利用できるほか、1RUサイズの標準ブレードに対応させて汎用性を高めて規格化した標準ラックに搭載したという。標準ブレードは、光入出力ポート、外部制御インターフェース、LEDインジケーターの必要最小限の構成であり、中間制御装置と連携させることによって最大限の相互運用性を実現するという。

また、光ネットワークの中核となる光スイッチは、産総研のシリコンフォトニクス技術により開発され、世界最小の光スイッチ・ブレード装置として標準ラック内に組み込まれ、中間制御装置によって制御される。今回の「OFC2017」での展示では、偏光無依存型8入力8出力(8x8)の光スイッチを実演するということだ。大規模なダイナミック光パスネットワークの実現には偏光無依存型の32入力32出力(32x32)光スイッチ技術が必要だが、既に偏光依存型の動作実証が完了しており、今後は偏光無依存化技術を同光スイッチへ適用していくとのことだ。

今後は、急速に進展する情報通信業界に対応するため、国際的な情報発信を継続し、同技術のデファクトスタンダード化を目指すという。標準ブレードで構成された機器を用いた大容量光ファイバーネットワークを東京都内に構築し、これを用いた低遅延な4Kテレビ会議システムや8K遠隔医療などの実用化試験を実施する予定だとしている。

(早川厚志)