アマゾンが「ミールキット」事業を拡大、元カリスマ主婦と提携

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生鮮食品の配送サービス、「アマゾンフレッシュ(Amazon Fresh)」は2016年秋、米食肉大手タイソン・フーズとの提携により、食材をすぐに調理可能な状態に整えて梱包し、顧客に届けるミールキットの宅配サービス、「タイソン・テイストメーカーズ」を開始した。

そのアマゾンフレッシュが3月14日、米国の「元カリスマ主婦」、マーサ・スチュワートと提携する「マーリー・スプーン(Marley Spoon)」のミールキットの取り扱いを開始すると発表した。ミールキットはニューヨークとサンフランシスコ、ダラス、フィラデルフィアの各都市にあるアマゾンフレッシュの実店舗でも販売する予定だ。

スチュワートは(株インサイダー取引で有罪判決を受け服役したが)、ケーブルテレビ局VH-1で放送中の「マーサ&スヌープのポットラック・ディナーパーティー」(「ポットラック」はあり合わせのもので作った料理、の意味)に出演。アマゾンフレッシュのターゲット層でもあるミレニアル世代とZ世代を中心に、再び人気を得ている。

有望なミールキット市場

食品やスーパーマーケット、レストラン関連の事業に携わる誰もが、ミールキットの影響力を認めている。ミールキット宅配サービス各社(ブルーエプロンやハロー・フレッシュ、シェフト、プレーテッドなど)は、最近まで見過ごされてきた大きなチャンスをこの分野に見出し、消費者の需要に応えている。

調理に必要な食材と分かりやすいレシピを箱に入れて顧客に提供するコンセプトは、高い人気を得ている。成功のカギは、1回分の食事に必要な材料が全て、計量済みの形で届けられることだ。

米国の食品業界は非常に大規模だ。ミールキット宅配市場は過去1年間で約15億ドル(約1690億円)の売上高を記録したと推計されており、5年後までに数十億ドル規模の市場に成長すると見込まれている(50億ドルとの予測もある)。

アマゾンの重要性

アマゾンフレッシュが同分野の事業を拡大することは、さまざまな意味で重要性を持つ。まず、ミールキット宅配各社は現在、単純に持続不可能な経済モデルに基づいて運営されている可能性があるためだ。

キットの注文数などについて予測し、材料をそろえて計量し、梱包の準備をするための施設や設備を確保するには、多額の費用が必要となる。また、材料を適温に保つためのボックスに入れ、配送することにもコストがかかる。顧客の大半を占めるミレニアル世代は持続可能性や容器包装廃棄物の問題、環境への影響といった事柄に関心が高く、梱包・配送については苦情も寄せられている。

さらに、各社のサービスを利用するには入会や複数回の利用が条件となっており、各社はさまざまな入会特典を提供している。例えば、ブルーエプロンは「3食分無料」、ハロー・フレッシュは「初回料金は半額」などのサービスを提供する。だが、1食分の平均価格が10ドル以下であることから、各社の黒字転換は可能なのか、経営の持続可能なのか、といった点に疑問の声も上がっている。

ただ、それでもミールキット分野には、今後の成長が期待されている。多くの消費者にとって、材料が事前に計測され、小分けにされて届くことは、健康的な食事を可能にするものだ。また、段階を踏んで作り方を説明するレシピのおかげで、料理を学ぶことができるという利点を挙げる人もいる。さらに、自宅で友人や家族と一緒に料理ができることが気に入っているという人たちもいる。

ミールキットの「社会貢献」

また、持続可能性の推進を目指して活動する非営利団体BSRがブルーエプロンの委託を受けて実施した調査では、ミールキットによって食品の廃棄量を削減できる可能性があることが分かった。

ブルーエプロンの施設に届く食材の量、ミールキットを作り、余った分を地元の非営利団体に寄付し、最終的に廃棄物となる食品の量で調査したところ、米国内の食料品小売店からの廃棄量が平均10.5%(米農務省のデータによる)であるのに対し、ブルーエプロンの施設からの廃棄量は同5.5%であることが明らかになった。

アマゾンの力は増すばかり?

ミールキットを提供するこれら各社が直面している問題の多くは、アマゾンフレッシュのソリューションによって解決が可能になるかもしれない。

一方、アマゾンにとってこの分野での事業拡大は、実店舗型の無人コンビニ「アマゾン・ゴー(Amazon Go)」、オンライン注文した生鮮食品を店舗で受け取る「アマゾンフレッシュ・ピックアップ(Amazon Fresh Pickup)」でのミールキット販売に注力するにあたっての、格好のテストとなる。

従来型のスーパーマーケットや食品サービス業界にとっては、アマゾンを恐れるべき理由がもう一つ増えたということだろう。