招集された高萩洋次郎、倉田秋、今野泰幸(左から)【写真:Getty Images】

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高萩、今野、倉田…アジアの戦いに慣れたハリルJの新戦力

 16日、ロシアワールドカップアジア最終予選のUAE戦とタイ戦に臨む日本代表メンバーが発表された。初招集となる選手はいなかったものの、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督にとって新戦力となる選手が招集された。過酷なアウェイのUAE戦、ホームでの勝利が求められる格下のタイ戦と異なる相手との2連戦だが、その中で指揮官は中盤をどう組み合わせて起用するのだろうか。その意図を読む。(文:河治良幸)

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 3月16日に日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は23日のUAE戦と28日のタイ戦に向けた25人のメンバーを発表(試合の登録は23人まで)。代表初選出は無かったが、ハリルホジッチ監督になって初めて高萩洋次郎が選ばれ、今野泰幸が2年ぶりに復帰、倉田秋が15年夏の東アジアカップ以来の招集となった。共通するのはすでに代表経験があり、ACLでアジアの戦いにも慣れた選手たちであることだ。

 一方で今年に入ってミランでの出場機会が無く、試合感が懸念された本田圭佑が引き続き選出されるなど、最終予選の折り返しとなり、初戦ホームで負けたUAEに対する“リベンジマッチ”となる大事な試合に向けて、経験重視の選考となった。

 その賛否両論はあってしかるべきだが、「彼が試合に出るかは別問題」と指揮官が語る様に、参加してみてのコンディションによっては好調の久保裕也に右サイドでスタメンのチャンスが与えられるかもしれない。

 それでも「チームのトップスコアラー」と指揮官が主張する本田は試合を決める存在として、あるいは締める存在として勝負所で頼りになることは確かだ。

 いずれにしてもハリルホジッチ監督はアウェイのUAE戦とホームのタイ戦という2つの試合を戦術的に分けて考えている様だ。その2試合のプランを想定しながら、中盤の3人の新戦力を絡めた起用法を展望したい。

 UAEには昨年9月に行われた最終予選の初戦で1-2と苦杯をなめさせられた。チャンスの数は日本が上回ったものの、司令塔のオマル・アブドゥラフマンを起点とした大胆な展開から前線の個人能力を活かした攻撃を仕掛けられた。結果的に直接FKとPKから失点したが、一発の危険なパスからアリ・マブフートやアハメド・ハリルが飛び出してくる形は要注意だ。

生命線となる日本のボランチ…キャプテン長谷部の相棒は?

 問題はUAEがホームの試合でどういった戦いをしてくるかということ。基本的にはボランチのハミス・イスマイールなどが中盤でパスをつなぎ、オマル・アブドゥラフマンが縦のスイッチを入れる様なスタイルだが、日本に対しては15年のアジアカップ準々決勝でも見られた様に、長めのパスを使った速攻を主体にすることは変わらないはずだ。

 ただ、ライン設定は高くなり、中盤でより強いプレッシャーをかけてボールを奪ってそこから素早くオマル・アブドゥラフマンにつなぐか、あるいはイスマイールやアメル・アブドゥラフマンが2トップに縦パスを通そうとすることが予想できる。

 そうなると日本の生命線はボランチとなる。「彼なしのチームは考えられない」とハリルホジッチ監督が強調する長谷部誠キャプテンが軸になるとして、もう1人を山口蛍にするか、あるいは今野にするかという選択肢だろう。UAEは基本的に[4-4-2]だが、右サイドのオマル・アブドゥラフマンはほとんど中に流れてくるため、流れの中で変則的な[4-2-3-1]の様になる。要するにボランチの1人が彼とマッチアップすることが多くなるわけだ。

 昨年9月の試合は長谷部と若い大島僚太のコンビだったが、オマル・アブドゥラフマンに中央付近のエリアでかなり自由を与えてしまい、そこを起点にPKも与えてしまった。より厳しくなるアウェイにおいて、ハリルホジッチ監督は明確な手を打ってくるのではないか。その場合、高い位置からプレッシャーをかけるなら山口が適任だが、自陣の深いところでの守備を強いられた場合は今野の方が強さを発揮できる。

アウェイでの過酷なUAE戦。選手の疲労やスコア次第で臨機応変な采配が求められる

 またインターセプトからの速いファーストパスや攻め上がりの能力を考えても、今野が起用される可能性は大いにある。

 もちろんアウェイのオーストラリア戦で十分な働きを見せた山口を優先するかもしれないが、今季のJ1では新監督のコンセプトにフィットしていない影響もあるのか、山口らしいアグレッシブさはまだ鳴りを潜めている部分がある。そうした事情も踏まえて、合宿でよりコンディションが良いと判断された方がスタメンで出るかもしれない。

 もっともアウェイの環境、しかも夜間でも気温が28度前後になるUAE戦において90分間ずっと同じリズムで試合が続くということは考えにくい。早い時間にリードを奪った場合、奪われた場合、選手に疲労が見られた場合、イエローをもらった場合など、状況に応じた臨機応変の指示や選手交代が求められる。

 攻撃的に行く場合はここで組み立てに定評のある高萩を起用するケース、4-3-3に変更してインサイドハーフに倉田を投入するなど、特に中盤は臨機応変なバリエーションが考えられる。

ホームでの勝利が絶対のタイ戦。“経験豊富な新戦力”はどう使われる?

 ホームで是が非でも勝ち点3が求められるタイ戦では高い位置でボールを持つ時間は長くなることが予想される。タイの場合は引いて一発のロングカウンターにかけるという戦い方をアウェイや格上相手でもあまり取らないが、守備を固めた相手を崩すというシチュエーションが生まれることは間違いない。

 そう考えた場合は指揮官が“守備的なMF”と位置づけるボランチの選手を2人置くよりも、組み立てを得意とする高萩の様な選手をボランチの一角に起用するか、あるいは形を[4-3-3]にして“攻撃的なMF”として選んだ4人(香川真司、清武弘嗣、高萩、倉田)のうち2人をインサイドハーフで起用して起点を多く作る方法を取ることも有効だ。

 もちろん香川と清武を同時に使う可能性もあるが、長距離の移動を含め中3日というレギュレーションで、タイ戦用にフレッシュな選手も有効な選択肢になる。

 その1人である倉田に関して指揮官は「ボールリカバリーをしながら、プレーを加速させる役割をこなしている」と評価する。G大阪では現在[4-3-1-2]のトップ下という役割に取り組んでいるが、クラシカルな10番というよりボランチと前線の間を幅広く動きながら、ボールを縦に加速させてゴール前にも入っていくスタイルは香川や清武ともまた少し違うものだ。

 東アジアカップの時は「チームのアクセントになりたい」と語っていた倉田はカウンターが利きにくい相手を中盤から崩していくのに打って付けのチョイスでもある。

 長谷部という心身両面で欠かせない大黒柱はいるが、中盤を対戦相手に応じて臨機応変に選択するというのはアルジェリア代表でブラジルW杯を戦った当時もハリルホジッチ監督が得意としていたことだ。その進化が発揮されるべき2試合で今野、高萩、倉田といった“経験の豊富な新戦力”がどう使われ、勝利に貢献できるか注目だ。

(文:河治良幸)

text by 河治良幸