宇佐美はたしかに日本屈指のドリブラーだが、2人との間に大きなクオリティー差はない。また、乾は15年3月のウズベキスタン戦、齋藤は昨年10月のオマーン戦と現政権下唯一の試合で大きなインパクトを残せなかったのは事実ながらも、現時点の試合勘とコンディションでは明らかに宇佐美を上回っている。
 
 それでもハリルホジッチ監督は宇佐美に賭けた。一時は左ウイングでレギュラー起用したほどその才能に惚れ込んでいるのは分かるが、不可解な選考と言っていい。
 長友の選出もサプライズだった。昨年11月にステーファノ・ピオーリ新監督が招聘されて以降も、相変わらずバックアッパーという立場から抜け出せていないからだ。
 
 11月のミラノ・ダービー後には、「いつも僕はこの立場から這い上がってきた。今回も諦めずに戦う」と語り、複数の移籍先候補が浮上した1月の移籍マーケットでも残留を決断。しかし、2017年にインテルが戦った公式戦12試合で、プレータイムを得たのはわずか2試合で(先発と途中出場が1回ずつ)で、10試合でベンチを温めるだけに終わっている。
 
 そもそもここ数年は怪我が増え、以前のような90分間を通じて運動量を保てないケースが少なくない。それでも太田宏介(FC東京)や藤春廣輝(G大阪)を選ばずに長友を呼んだ理由を、指揮官はこう明かしている。
 
「あまりゲームに出ていないので心配ではあります。しかし、ミラノでは長友と本田に会いましたが、長友は素晴らしいプロフェッショナルです。クラブのなかで非常に激しいポジション争いをしており、ゲームに出なかった時は個別にトレーニングしてそれを補おうとしている」
 
 本田もさらに酷い状況だ。ミラン入団4年目を迎えた今シーズンは、若手のスソに右ウイングのレギュラーの座を奪われ、開幕からベンチ暮らし。しかも、1月には退団の噂がいくつも浮上しながらも残留を決断し、2月下旬にはMLSのシアトル・サウンダーズへの移籍が急浮上したが、こちらも結局は即決定には至らなかった。
 
 結果、2017年に入って以降の出番は1月25日のコッパ・イタリア準々決勝(ユベントス戦)のアディショナルタイムのみで、股関節痛でベンチ外となった3月10日のユベントス戦を含めて目下、公式戦21試合連続出番なしという状態なのだ。さらに、現地時間3月15日には、同日のチーム練習をインフルエンザで休んだことがミランから発表されていた。
 
 開幕から7か月が経過した段階で95分間しかプレータイムがないため試合勘に欠け、怪我とインフルエンザでコンディションも整っていない選手を招集し、2月19日の国内リーグではハットトリックを達成するなど好調な南野拓実(ザルツブルク)、Jリーグで結果を残している小林悠(川崎)、鈴木優磨(鹿島)らを落とした理由はどこにあるのか……。ハリルホジッチ監督はこう明かしている。
 
「(所属クラブで)試合に出ていなくても、今の代表は本田を必要としている。これまで20試合近くを彼と戦ってきたし、チームのトップスコアラー(現政権下で9ゴール)でもある。もちろん、ミランでより多くの試合に出てほしいというのが私の願いだが、いつもプラスアルファのトレーニングをしているということも分かっている。この代表は彼の存在を必要としている。彼が出るのか、何分出るのかは別の問題。しかし、その存在は我々にとって重要だ」
 1つでも黒星が付けば他会場の結果次第で4位(予選敗退)に転落する可能性もあるこの3月シリーズは、日本にとってロシア行きが懸かった重要極まりない連戦。そこでハリルホジッチ監督はコンディションや試合勘ではなく、経験と実績を重視した格好だ。さらに、本田と長友に関しては、代役になる存在が今も見出せていないと吐露している。