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名古屋大学大学院経済学研究科 安達貴教准教授は、大阪大学大学院経済学研究科博士課程 久田貴紀氏との共同研究で、経済活動における「スタートアップ活動」(起業)についてジェンダー差(性差)を分析し、その背景的要因を明らかにしたことを発表した。この研究成果は、英文学術雑誌「Small Business Economics」2017年3月号の巻頭論文として掲載された。

同研究は、近年のアメリカ合衆国を対象としてスタートアップ活動における「ジェンダー差」に注目し、その背景的要因を探るべく実証分析を実施したもの。スタートアップ活動を「独立起業」と「社内起業」とに分類し、それぞれにおけるジェンダー差の背景的要因が考察された。「独立起業」は、成功した時の見返りは大きいものの、失敗した時の損失も負担しなければならない一方で、「社内起業」は失敗した時には将来の昇進にマイナスとなるが大きな金銭的な負担は伴わず、成功した時の見返りの多くは社内起業を行った個人や組織に還元される。

こうした異なる性質を持つ2種類のスタートアップ活動において、ジェンダー差の違いがどのように表われるのかを研究グループが分析し、その背景的要因を明らかにした。同研究では、米ミシガン大学社会研究センターが提供する「起業動態パネルデータ」を利用し、2005〜2006年における全米的スタートアップ活動の実態を調査している。

これによると、独立起業と社内起業のどちらにも関わっていない個人の集団において女性は51%を占めていたものの、独立起業に関わっている個人の集団では36%、社内起業に関わっている個人の集団では30%と、双方のスタートアップ活動で関与する女性の比率は低かった。

○「個人の家族属性」がジェンダー差を左右すると予測したが…

このジェンダー差の要因について研究グループは当初、「個人の家族属性が重要」と予測した。例えば、女性は子どもがいると独立起業に携わる確率が上がり、社内起業に携わる確率を下げるという仮説を立てた。これは、独立起業が時間の融通が比較的利くのに対し、社内起業は時間に縛られるコミットメントが要請されやすいと考えられるためだという。

しかし、同研究グループがさまざまな角度から実証分析を行った結果、子どもの有無や婚姻状態、家族の人数といった家族属性は、独立起業・社内起業どちらもジェンダー差の要因ではないことが判明した。むしろ、個人の労働実態属性がより重要であることを見出したという。

例えば、女性がパートタイムで働く比率は男性より高いが、このパートタイムにおけるジェンダー差が独立起業と社内起業に対して逆の効果を持っている。すなわち、女性がパートタイムに従事することは、独立起業におけるジェンダー差を縮める方向に働くのに対し、社内起業におけるジェンダー差を広げる方向に働くことが見いだされた。

○起業のジェンダー差縮小には「ジェンダーに関わらない機会創出」が重要

このことから、女性が独立起業を行いやすくするためには、準備期間確保のためのパートタイム従事の機会が重要である一方、女性がより社内起業に関わるには、女性がフルタイムで従事することが重要であるとしている。

これらのことから、個人がパートタイム労働のように労働外時間をより多く持てるような機会を選択できるとともに、フルタイムを望む個人に対してはジェンダーに関わらずその機会が確保されることによって、独立起業・社内起業の双方でにおいてジェンダー差が解消されるとしている。

同研究は、国や地域を問わず直面している重要課題である「スタートアップ活動の促進」と「ジェンダー差の解消」を交差させ、問題の所在に対しての認識とそれベースにした政策等による問題解決への議論に対し、学術的知見から貢献することが期待される。

(早川厚志)