1945年から1962年にかけてアメリカが実施してきた核実験の様子を高速度撮影で収めたフィルムが、55年ぶりにアメリカ政府の機密解除を受けて一部が公開されました。年月を経て劣化が進んだフィルムは復元作業が行われ、スキャンしてデジタルデータ化した後に一部がYouTubeで公開されています。

Physicist declassifies rescued nuclear test films | Lawrence Livermore National Laboratory

https://www.llnl.gov/news/physicist-declassifies-rescued-nuclear-test-films

Hundreds of films of nuclear bomb blasts films declassified, uploaded - Business Insider

http://www.businessinsider.com/new-nuclear-explosion-youtube-videos-llnl-2017-3

1945年7月16日に行われたトリニティ実験以降、世界で実施された核実験は2000回を超えています。旧ソ連との冷戦体制にあったアメリカだけでも1000回以上の核実験が実施され、大気圏内で核爆弾を実際に炸裂させる大気圏核実験が210回実施されたとのこと。実験の際には、火球の広がり方や爆発の威力を調査するために、2400コマ/秒という高速度カメラで撮影が行われており、そのフィルムの数は1万本以上にのぼると推測されています。

しかしその実態を知るものは少なく、多くはアメリカ各地にある厳重に管理された保管庫で機密扱いとして保存されていたうえに、年月を経て劣化が進んでおり、このままでは過去の記録が永遠に見られなくなるという状況を迎えていました。アメリカで核兵器開発のために設立され、現在では各種エネルギーやバイオテクノロジーなどの研究を行っているローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)では、過去5年間にわたってこれらのフィルムの回収と復元を行い、現在では禁止されている大気圏核実験の様子を収めた貴重な映像のアーカイブ作業を行っています。

兵器物理学者のGreg Spriggs氏ら科学者による研究チームでは、およそ6500本のフィルムの在りかを突き止め、そのうち4200本のスキャンを実施しており、さらに400〜500本について再分析が行われると同時に、750本が機密指定を解除されています。そして今回、2017年3月16日現在では64本の映像がLLNLのYouTubeチャンネルで公開されています。

LLNL Atmospheric Nuclear Tests - YouTube



この映像は、1958年に太平洋核実験場で実施されたハードタック作戦のうち、実験名「Redwood」の様子を収めたもの。現地時間で1958年6月28日の午前5時30分、412キロトンの核爆弾が炸裂した瞬間には朝焼けの空が真っ白に光り輝き、衝撃波による大きな白い雲が傘のように広がる様子の一部が収められています。

Operation Hardtack-1 - Redwood 52538 - YouTube

同じハードタック作戦で、1958年5月22日の午前6時30分に実施された実験名「Nutmeg」の爆発シーン。25.1キロトンの核爆発が起こると、こちらも衝撃波によって発生した雲がものすごい勢いで広がり、やがて消える様子が克明に記録されています。

Operation Hardtack-1 - Nutmeg 51538 - YouTube

こちらの映像は、1955年3月1日にネバダ州核実験場で実施されたティーポット作戦のうち、3番目に実施された作戦名「Tesla」の爆発の様子。約90メートルのタワーの上に設置された7キロトンの核爆弾が炸裂し、大きな火球が広がる様子がスロー映像で捉えられています。

Operation Teapot - Tesla 28616 - YouTube

丸い泡状の火球が広がる爆発直後の様子。小さく飛び出た脚のようなものが数か所に見受けられます。



火球の下にある空白の部分は、爆発による衝撃波が地面で跳ね返ったことで火球が押し戻されたことによるもの。爆心地点から広がった衝撃波が地面で跳ね返され、光り輝く火球を上空に押し戻す様子が実によくわかります。



「Tesla」の6日後、1955年3月7日に実施された作戦名「Turk」の爆発の様子をアップで捉えた映像。

Operation Teapot - Turk 28112 - YouTube

急激に広がる火球。その表面には突起部分が生じているのがわかります。下部に見える細い筋は、衝撃波の広がりを視覚的に観測するために打ち上げられた「煙ロケット」のもの。



光り輝く火球の外側には、同心状に広がる衝撃波の沿面が見てとれます。地面に当たって反射された衝撃波はそのまま地面と平行にも拡散し、直接波と反射波が地表の物体に2度のダメージを与えます。



その後、周囲はとてつもない量の土煙で覆われました。その様子はまさに「死の世界」と言ったところ。



1957年のプラムボブ作戦の8番目、作戦名「Diablo」の火球を克明に捉えた映像。まぶしすぎて何も見えない火球でも、明るさを調節して撮影すると実に複雑な表情を見せていることがわかります。

Operation Plumbbob - Diablo 41549 - YouTube

いったい何がどう反応すればこのような模様を作りながら火球が生みだされるのか、そしてこの中では膨大なエネルギーにより数百万度という温度が発生していると思うと、見ているだけでも震えが起こるようなスーパースローのワンシーン。



また、この映像はプラムボブ作戦の26番目に実施された作戦名「Rainier」のもの。アメリカ国内で初めて実施された地下核実験の様子で、爆発にともなう閃光や火の玉はもちろん確認できませんが、下から突き上げる衝撃波を受けて地表に土煙が起こり、小規模な地崩れが起こっていることもわかります。

Operation Plumbbob - Rainier 43771 - YouTube

LLNLでは、風化されて歴史から消えてしまう運命にあるフィルムの復元を進めることで貴重な実験の記録を残すことと同時に、いかに核兵器が凄まじい威力を持つのかということを目の当たりにさせることで、核の抑止力として映像が活かされることも狙いとしているそうです。