旧シャープ東京本社ビル photo by Lombroso CC BY-SA 3.0

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 経営再建のため半導体事業の売却が決まった東芝。買い手にはあの鴻海精密工業も名乗りを上げており、その行く末に注目が集まる。ところで、鴻海に買収されたシャープはどうなったのだろうか?

 買収直前には「偶発債務」が数千億円に上る可能性があると見て、鴻海から出資額が減じられそうになったり、大量リストラが行わる噂が立つなどガタガタだったシャープだが、鴻海CEOのテリー・ゴウ氏の指揮のもと、現在は債務超過を脱し、営業利益も黒字化した。

 ただし、その前途はまだまだ多難である。東芝との比較を交えつつ、現在のシャープの財務状態を見ていこう。

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 まず何と言っても大きいのが、長らく続いてきた負債が資産を上回るという債務超過の状態が2016年度第2四半期以降は解消されている点だ。

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 これはひとえに鴻海からの3000億円の入金が無事なされたためだ。一時は850億円程度に落ちこんでいた資本金は4000億円を超えた。

 これによって倒産の懸念がぐっと薄らいだことから、銀行からの借入も順調に進むという相乗効果が生まれた。しかも、短期での返済を迫られ、不履行となれば倒産の原因にもなる短期借入金は激減した一方で、長期借入金によってそれを補っている。一時は死の淵まで追い込まれていたシャープだが、反転攻勢に出るためのバランスシートは整ったと言っても良い。

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 それでは、損益計算書から読み取れる収益状況はどうか。2017年3月10日現在では2016年度第3四半期までの経営成績が開示されているが、それによればシャープは「減収増益」傾向だ。

 もっとも売上高が大きい液晶テレビを扱う「ディスプレイデバイス」事業から携帯を扱う「IoT通信」事業、エアコンや冷蔵庫などの家電を手がける「健康・環境システム」事業など7事業全てのセグメントで前年比の売上高は下がっている。

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 四半期報告書では7連続で「販売が減少しました」という文言が並ぶのが壮観だ。

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 利益の方はどうかと言えば、「健康・環境システム」セグメントを除けば、「IoT通信」や「ビジネスソリューション」などの黒字だったセグメントもその額を大きく減らしているが、もともとそれらの黒字を補って余りある大赤字を垂れ流していたディスプレイデバイス事業の赤字が大幅に減ったことによって、全体では黒字化することができた。

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 シャープが東芝と違うのは事業の売却に手をつけなかった点である。現在、「ビジネスソリューション」事業セグメントに属している複写機の売却などが囁かれはしたが、会社側は即座に否定した。

 いま東芝は将来の成長の柱になるはずだった半導体事業を手放さざるを得なくなっているが、シャープはIoTや複写機など会社の未来を支える事業を売却せずに済んだ。お金は鴻海と銀行から集め、事業については子会社の再編や人員の最適化などで徹底的にムダを削ることで、規模は縮小するが赤字が出ない体制を急ピッチで整えたので、それが実現できたのだと言える。

 以前、筆者はシャープの売上原価率は90%ほどもあり、電機業界の競合他社と比べても異常に高い値だと指摘したが、最新の四半期報告書によればそれも82%程度と、かなり改善している。資金繰りに困ることがなくなり、次は米国での8000億円規模の液晶パネル工場への投資も視野に入れているシャープは、高収益体質を目指していく。

 直近のシャープは売上高に占める在庫の割合を示す「たな卸資産回転期間」の値も良好だ。これが急に膨らんでいたらかなり無理をしているということで、拙著『東大式 スゴい[決算書の読み方]』でも指摘したが、かつてのシャープは大幅な赤字を出す直前にこの値が激増していた。

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 ただ、懸念がないわけではない。売上のうち、まだ会社に入ってきていないお金を示す「売上債権」は2016年度第3四半期において急増。その回転期間も40数日程度だったのが70日を超えるようになった。

 会社側の説明によれば、今まで資金繰りのために「ファクタリング」と言って売上債権を回収する権利を外部に売り、割り引いた現金を先にもらっていたのだが、余裕が出てきたためにそれを止め、自前で回収する方針に切り替えてきているのだという。

 確かにシャープのキャッシュ・フローは大幅に改善されたことは前述したとおりだが、一度は資金繰りで死にかけた会社であることは忘れてはいけない。

<文/大熊将八>

おおくましょうはち○国内外の企業分析を行い、「週刊文春」「現代ビジネス」「東洋経済オンライン」「ハーバービジネス・オンライン」」などに寄稿。東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。新刊『東大式 スゴい[決算書の読み方]』も発売中。twitterアカウントは@showyeahok