ブルボン小林の、デーモン閣下へのロングインタビューを覚えているだろうか。
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三十年来のデーモン閣下ファンであった僕はその熱い思いの丈をぶつけすぎ、結果、異様な熱量のこもった怪テキストとして6連続公開された。
ほうぼうで評判を呼んだものの、当の閣下にはドン引きされてしまったんじゃないかしらと落ち込んでいた。だがなんと、デーモン閣下から作詞の依頼を受けてしまった!
聖飢魔IIとしてではない、デーモン閣下、五年ぶりのソロアルバム「EXISTENCE』発売を記念して、二度目のエキレビインタビューが実現!
不肖ブルボン小林、今回のインタビューもインタビューというよりは「対談」の様相を呈していますが、とにかく熱いテキストをお楽しみください。


ブルボン小林も参加しています


───今日はよろしくお願いします。一年前の時はインタビューといいつつ、実質は…

閣下 「聴聞会」ね?(笑)

───友人には閣下への「陳情」といわれました。インタビュアー(僕)のテキストがこんなにたくさん載って(と手を広げて)! で、インタビューを受けている閣下は……

閣下 「そうそう」とかしか言ってないのね。

───そんな、思い入れの強いインタビューでしたが、これがおかげさまで大評判で。

閣下 へえ。たしかに面白かったけどね。

───しかし、閣下のニューアルバム『EXISTENCE』には僕、ブルボン小林も参加しています!(ので、またしても僕がたくさん喋らざるを得ない、という意を含める)

閣下 ハハハ

(注・前回のインタビューでは、僕のテンションの高さにいくぶん戸惑い、なおかつ興味深げに観察している風だった閣下だったが、今回はリラックスしてくださったのか、この日のテープを聞き返すと「ハハハハ!」「ハッハッハッ」という大笑いがとても多かった)


───友達に「今度、デーモン閣下の作詞をするんだよ」と言ったらですね。皆ものすごい盛り上がって。

閣下 ほうほう。

───ほとんど「あけましておめでとう!」みたいな感じの盛り上がりで。

閣下 ハッハッハッ! 人生の新年なんだ!?

───相手が悪魔だから、「悪魔とどうやって曲作りをするんだ」と関心をもたれて。

閣下 「どうやって交信するんだ?」(笑)

───皆、どう仕事すると思ったんでしょうね。

閣下 「よなよな枕元に現れて囁きに来てくれないんだ」と。ハハハ

───もちろん僕も好奇心がありました。メールアドレスとか、悪魔っぽいのかなって。

閣下 ものすごく普通だよね? 

───そうかなあ。ここでは言えませんが、間違いなく悪魔ってわかるアドレスですよ。

閣下 わかるかなー? 

───最初に閣下が下さったメールがとても丁寧で。作詞をお願いしたい、「どんな詩が来ても基本採用する」と。それから契約上のことから、印税みたいなこともあらかじめ具体的に細かく、フリーランスで仕事をしてる人種を実に安心させるような……

閣下 ハッハッハッハッハ! 

───ことを書いてくださってねえ。今回は僕のほか二人に作詞を頼まれてますが、メールは……

閣下 (頷きながら)三人とも同じように。ほぼ同じ文章をコピー&ペーストして、部分的に個人的に違うところだけ直して。

最初からこの三人ではなかった


───漫画原作者の貴家悠さんと作家の羽田圭介さん、そして僕、この三人に頼もうと思ったのは、どういったことろで?




閣下 ソロアルバムを作るにあたって、新しく作らなければならない曲が何曲かあると。曲もそうだし、詩も。で、最近じつは、曲はともかく詩の世界は、何をテーマに書こうかと悩むことが多くて。曲数を考えると、9曲、曲を書かなきゃならなかったのかな? 最初。

───ええ。

閣下 スケジュールもね、締め切りまでの日程を逆算していくと、何月までにどれくらいどういう風に書かなきゃいけない。会議で「いやあ、この期間で9曲書くの大変だなー、誰かに頼むっていうのができればいいんだけどなー、んー……誰かに頼むって? いいねえ……で、誰がいいだろう?(いいこと思いついたという表情で)」。でも、最初からこの三人ではなかったんだよね。どんな人が考えられるかなっていろいろ話し合っている中で…

───プロの作詞家の方に頼むというプランもあり得たわけでしょう?

閣下 あり得た。

───作詞なら、松本隆さんと閣下が組んだのを聴いてみたいとかね、ファンとしては…

閣下 (納得したような意外なような表情で)うーん……

───思ったりしますね。井上陽水さんとかね。

閣下 それは既にやってるからね、昔。

───そうですね。陽水さんは閣下に提供されてますね。


(注・閣下のソロシングル>『LOVE ROMANCE』魔暦前4年…えーと、つまり西暦1995年リリースの作詞作曲を井上陽水が提供。ここで名前を僕が出したのは「共作」をみたいという主旨で)

閣下 うん。前にやってることと同じことをやってもつまらないな、ということも頭によぎる中、去年、ブルボン氏とか羽田君とかに出会ったことは重要というか。会って、わりと直後だったしね? 貴家氏もアニメーションの『テラフォーマーズ』(の主題歌を)やったから。

───羽田さんが芥川賞受賞で大の聖飢魔IIファンと判明したのと、僕がエキサイトレビューでインタビューしたのもそのころです。


(注・『テラフォーマーズ』主題歌『荒涼たる新世界 / PLANET / THE HELL』については僕の過去のレビューを参照のこと

閣下 そうそう、そのころに、このニューアルバムについての会議があったので、そこでね、ピーンときたんだよね。あー、こういう人たちに頼むのは絶対に面白いんじゃないかと。

───特に「作詞専業ではない人に」というところですか?

閣下 はい(大きく頷く)。「作詞専業ではないが、文筆に関わっている人たち」。世の中に聖飢魔IIだったり我輩だったりのファンですと表明してくれている人は他にもいるんだけども、必ずしも皆が文筆業ではないから。

───うんうんうん。

閣下 プロボクサーに作詞たのんでもね?

───「エルドラド」を入場曲とされているチャンピオンがいらっしゃいますね。

(注・元WBCフライ級チャンピオン、五十嵐俊幸氏は閣下のファンで、入場曲は聖飢魔IIの『エルドラド』。ボクサーの入場曲はレスラーのそれと異なりノリがおかしいことも多いが、I『エルドラド』は勇猛果敢な格闘技の入場にぴったりだ)

閣下 元チャンピオンだけど。または科学者だったりとか。でも、文筆に従事してる人の方が幾分、ハードルは低かろうと。

───それで「侍従」のどなたかから「閣下から直々にメールが届くと思うので」という文面のメールがきて、座り直しました。僕の妻も弾んだ調子で、パソコンを後ろから覗き込んできて。悪魔から何かが来るって、日常にないですからね。

閣下 ハッハッハ! 日常にないよね。

───僕自身、これまで作詞をしたことはあるんですよ。

閣下 そうなんだ。

───真心ブラザーズの桜井さんと、共通の友達の誕生日を祝うサプライズで共作したり。あとヒップホップやってるsmallest君という年下の仲間がいて、ラップじゃないけども一緒にバンドやろうというので作詞してライブもやって。それぞれ楽しいし充実感もあったけど、でも、それらはまあ、「人間」ですよ(無意味に蔑んだ口調で)。

閣下 人間だね。

───悪魔から依頼があると、高揚感あります。

閣下 そうか、でもじゃあ(作詞)初体験じゃないんだ?

───そうですそうです。インディーズ的な場ですけどね。あと、僕は俳句をやっているので、情景を短い言葉に落とし込むようなことはやってきたんだけども、俳句と歌の歌詞は、全然違いますし、散文詩とも違う。あまり言いたいことを詰め込んでもいけないし…

閣下 (よくお分かりで、という風に)はいはい。

───筋肉の使い方がね、平泳ぎとバタフライみたいに、やっぱ全然違うというのを思ってた矢先の依頼だったんですよ。だからすごい、ワクワクしましたね…なんか、あれですね、昨年のインタビューは「陳情」で、今回は「対談」みたいになっちゃってますね(もう、たいして恐縮したそぶりもみせずに)。

閣下 ハッハッハッ! 別にいいんじゃないの? 四月にはトークイヴェントもあるからね、宜しくお願いします。

───はい! トークイベントでは、全曲詳しく。今回のエキレビではちょっと絞って聞いていこうかなと思います。

(注・このイベントはインタビュー最終回でも詳述しますが、こんなイベントです。皆さんぜひ応募してください!)

ついに魔の手が?


閣下 (この取材日の時点で)一番最後に残ってる(mixという、曲を仕上げる最後の作業が終っていない)のが、ブルボンさんの曲ですよ。今晩、アンダースが仕上げて来るんだけども、最後に残ったのが、それ。

(注・アンダース・リドホルム……スウェーデンのロックバンド「グランド・イリュージョン」の主宰者。閣下のカバーアルバム『GIRLS’ ROCK』魔暦9年すなわち西暦2007年作のアレンジで関わり、今回の最新作では作曲、編曲と密に携わっている)。


───閣下は人との出会いを生かすというか、アンダースさんも一度アルバムでご一緒されてからの…

閣下 『GIRLS’ ROCK』シリーズからで、オリジナルは前回の『MYTHOLOGY』ね?

(注・『GIRLS’ ROCK』はデーモン閣下の「女性ボーカル限定」カバーアルバム。好評で三作リリースされた。個人的な白眉は荘重な中島みゆき「地上の星」のカバー)

───そのアンダースさんにも「ピーンと来た」みたいなのがあって、継続的な付き合いになってるのですか?

閣下 まあ、そうだね。

───この前のアルバムでもたとえば小柳ゆきさんとデュエットするかと思えば…あ、前のアルバムのプロモーションになっちゃまずいか(笑)。

閣下 ハッハッハッハ!! 前のアルバム、別に売れてくれていいけどね。(同席している侍従やレコード会社の人たちの方を見渡して)あ、でもレコード会社違うからね。

(注・前のアルバム……『MYTHOLOGY』魔暦14年つまり西暦2012年5月発表。)

───いろいろな人との仕事が「前から大ファンだったあの人」への依頼もあるかもしれないですが、「なんかあの人面白いんじゃない?」という即興性を閣下は、より意識されてる気がするんですけど、どうでしょう?

閣下 …強く意識はしてないけれどもね。我輩はそんなに人間の好き嫌いは無いので、たぶん大概の人とは仲良くなれるんだけども。でも、その人と仕事をしやすいかどうかっていうのは、また別の問題でね? 「あ、この人たぶん一緒に深く物を作ったら面白いことになるな」っていうのは、何かそこには勘があるかな。

───はい。それで結果としてみた際、閣下のソロアルバムは、通常のミュージシャンが、単に意気投合した仲間とコラボしているというのとはまったく違う感じがするんですよ。

閣下 はいはいはい。

───単にソロアルバムの中にゲストがいる…という以上の、見たことなさ! ソロアルバムが出るたび、それを思うんですよね。小柳ゆきさんと一緒にネット時代の若者が混じってたり。

閣下 赤飯くんとかね。

───そうです。小柳ゆきさんにゲストで頼んだり、ネットで有名な赤飯さんに頼むミュージシャンはもちろんいると思う。でも、それが並ぶのが「変」というか、他にはない。他も、(元)ビートクルセイダーズのヒダカトオルや小室哲哉も関わって。そんなカラーリングのアルバムって、他のミュージシャンには無いと思うんですよね。


(注・前述の『MYTHOLOGY』では他にピンク・レディの未唯、May J、Skoop On SomebodyのTAKEなどが、演奏でTOTOのSteve Lukatherなども参加している。それ以前も、個々のアルバムごと、とても不思議な人選(の並び)がなされているのが閣下の音楽のみどころ)

閣下 ふむ。

───…とかなんとか、そんなふうに分析的に思っていたら、その雑多さの中に今度は…

閣下 自分が? 「取り込まれた! ついに魔の手が?」(楽しそうに)

───だから閣下からの作詞の依頼は、ワクワクすることでもあったし、周囲の「明けましておめでとう」的に無邪気な期待もあり、僕は凄くね、気負いましたね。

閣下 ほう。

───それで「なんでも採用」と仰っていただいたんだけど、一期一会だと思って。それで閣下にリスペクトを込めたいと。それで「微笑みがえし」というキャンディーズの曲を思い出して。

閣下 うんうん。

───キャンディーズのラストシングルで、歴代シングルの名フレーズが歌詞に織り込んである。そのように自分たちをオマージュする曲が、聖飢魔IIならびにデーモン閣下の活動の中には無いなと。手前味噌になるから、ああいうオマージュは自分たちで出来ないのではと思ったんですよ。それで、仮の題名を「微笑み仏壇返し」として。閣下は相撲も好きだから…

閣下 (聞いているうちに思い出し笑いがこみ上げた様子で、珍しく話を遮りながら)あのさ、あのさ。(笑) 今回ね、ブルボン氏が書いた歌詞を全部アンダースに伝えたの。コーラス入れたりアレンジしたりする上でも、歌詞がどんな内容かわからないと、彼もアレンジがしづらいから…

───アンダースさんはスウェーデンの方ですね。

閣下 そうそう、だから英語でやりとりしてるんだけど。全て我輩が歌詞の翻訳をするのね。でも、曲によっては説明が面倒臭いんだ。あの曲は特にそうで、まだ「微笑み仏壇返し」が仮のタイトルだったから、タイトルの説明さえしなくてはならず…


───スウェーデンの方には分からないですね。

閣下 「微笑みがえし」っていうのは、まず、70年代の日本に有名なアイドルがいて、どうしたこうしたで、まずそういう曲があると。一方、BY THE WAY (笑)、相撲の技で「仏壇がえし」という技があってどうこうで。それを合体させたタイトルだって、全部、英語で説明したんだよ! あげく、そのタイトルじゃなくなっちゃった。ハッハッハッ!

───大変な苦労をおかけしましたね。

閣下 うん。「微笑返し」と「仏壇返し」でシャレになってるんだってことも伝えなきゃいけないからさ、「ダジャレ」って英語でなんていうんだ、ともう延々と調べて。苦労しましたよ、この曲の「翻訳」。今思い出した (笑)

───編曲する人も最低限の世界観は知っておく必要がありますもんね。

閣下 そう、知る必要があるんだよ。また(歌詞中に登場する)「緑色の軽いカメラ」、これも、今から20何年前に我輩が出たテレビCMで、日本中ですごいヒットしてたみたいなさ、それもすべて説明しなきゃわかんない。 日本人だったら「これ『写ルンです』ね!」で伝わるんだけどさ。

───アンダースには「sorry」って言っといて下さい。

閣下 ハッハッハッハッ! 「sorry」って! 
(ブルボン小林)

その2に続く(全3回)