写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 ミランで4年目を迎えた本田圭佑だが、今年に入ってからは国内リーグで出番がない。また、体調不良との情報もあり、コンディションは気掛りだが、代表での実績や経験を考えれば貴重な戦力との見方もできる。はたして、3月16日午後に招集メンバーが発表される3月シリーズ(UAE、タイ戦)に招集すべきか。

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 クラブで試合に出ていない選手は招集しない――。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の基本スタンスに照らし合わせれば、本田圭佑の3月シリーズでの招集は「見送り」が妥当になる。
 
 今年に入ってから出場した試合は、1月25日に行なわれたコッパ・イタリア準々決勝のユベントス戦のみ。それもアディショナルタイムに3分間ほどプレーしただけだ。今冬にプレミアリーグなどへ移籍の可能性が報じられたなかで残留したものの、苦しい立場は変わっていない。
 
 指揮官は昨年9月のイラク、オーストラリア戦のメンバー発表会見で、本田、香川真司、吉田麻也たちの名前を挙げてこのように語っていた。

「本来なら(クラブで出ていない選手は)外さなければならない。ただし、現状では誰が代わりを務められるというのか」
 
 クラブでの出場機会が少ないとはいえ、経験値があり、かつ海外で激しいポジション争いに身を投じる選手たちへの信頼を口にした。
 
 ただ、これはあくまで9月時点での見解に過ぎない。「海外組で良い選手がいるのなら、日本代表に呼び たい」とも付け加えている。
 
 最終予選を戦いながらチーム作りを進めていくなかで、11月のサウジアラビア戦では右ウイングに久保裕也を先発させ、今回の最終予選で初めて本田をベンチに置いた(後半開始から出場)。経験の優遇はあくまでも暫定的に過ぎず、コンディション優先に舵を切っている。
 
 出場機会の少なかった他の海外組の状況は変わりつつある。
 
 プレミアリーグでは、吉田がレギュラーに定着して、リーグカップの準優勝に貢献した。岡崎慎司もクラ ウディオ・ラリエリ監督解任後のリバプール戦で奮闘。敵将のユルゲン・クロップ監督からその働きぶりを称えられた。
 
 ブンデスリーガでは、香川が徐々に存在感を増している。宇佐美貴史や怪我から復帰した武藤嘉紀もここにきて徐々に出場機会を増やしつつある。
 リーガ・エスパニョーラでは清武弘嗣がセビージャに別れを告げ、Jリーグで成長していく道を選んだ。
 
 つまり、ハリルホジッチ監督の要求に応えるべく、選手たちもなんとか事態を変えようと行動している。
 
 ならば、現状維持の本田よりも、変えている、または変えようとしている選手たちが優先されて然るべきではないか。
 
 国内組に目を転じても、小林悠が開幕戦でゴールを挙げ、齋藤学もキレのある動きを披露している。
 
 清武、久保、小林、浅野拓磨、南野拓実……。右サイドで本田に代わる人材は多い。もちろん、本田はミランで試合に出ていなくても、代表ではプレーで引っ張ってきた実績がある。後半から出場したサウジアラビア戦のパフォーマンスも決して悪くなかった。
 
 決定的な仕事をこなせる力が錆び付いているとも思わない。アウェーのUAE戦、ホームのタイ戦という試合の重要度を考えれば、「経験と勝負強さを持つ本田は必要だ」という声も当然あるだろう。だが、それでもクラブで出番に恵まれない本田よりは、先ほど名前を挙げた選手たちのほうに筆者は期待感を抱く。
 
 指揮官はサウジアラビア戦後の監督会見で、競争を煽る言葉を残した。
 
「我々のチームにスターはいない。スターはチームだ。大枠のリストには海外組、国内組合わせて55人ほどいる。彼らが良いパフォーマンスを見せれば、選ぶトライをしたい」
 
 経験は、長谷部誠や岡崎、吉田たちが伝えればいい。「経験」と「競争」を上手く噛み合わせようとする指揮官のスタンスを考えれば、今の本田を無理に招集する必要はない。

文:二宮寿朗 (スポーツライター)

※『サッカーダイジェスト』2017年3月23日号より修正・転載