前回、G・U・M PLAYの最初の提案の動きから3rdプロトタイプ開発までを駆け足で紹介させていただきました。

 >>前回の記事はこちら:スマホと連動するスマート歯ブラシ「G・U・M PLAY」のできるまで<1>

 今回は2016年4月18日に一般発売するまでの1年半を説明したいと思います。

歯磨きの良し悪しを数値で定量化する!

 3rdプロトタイプが完成し、アプリケーションとハードウェアのプロトタイプが揃ったことでいよいよ本格的な製品版への動きが具体化して行きました。

 そのため、3rdプロトタイプが完成した1ヵ月後の2014年の11月には、「アプリケーションの開発・ブラッシュアップ」と並行して「製品版はどのようにあるべきか」について検証する作業を行っていく事になりました。

・ 特許

 最初に問題になったのが特許です。今更説明するまでもないかと思いますが特許訴訟を起こされるような状態で商品を発売することは大きなリスクを抱えます。

 1. 現在のプロトタイプはこの特許でカバーすることが可能か

 2. 異なる場合、利用可能な特許構成をベースに変更を加えた場合、体験としての担保は可能か

 以上の2点について、新たなプロトタイプも制作しながら検討を行い、利用可能な特許の構成をベースとしたものに更新しました。

・ 量産設計(スケーリング)

 特許とは別の視点、「量産」や「価格」と言った観点からも仕様の見直しを行いました。

 製品版を想定する前のプロトタイプを利用して、製品版の仕様を詰めていくと、プロトタイプの余分な機能やオーバスペックな部品が見えてきました。

 そこで、製品版ではユーザビリティや価格、量産性、その後のサポートのしやすさ、その後のビジネス展開なども考慮した設計に変更していきました。

 

・より『G・U・M 』らしい機能

 当初、「オーラルケアブランドであるG・U・Mの 新たな側面を見せる」という目的で開発されたG・U・M PLAYは、その結果として従来のG・U・M製品とは異なる方向性をあえて見せたものになっていました。

 また、サンスター社内ではG・U・M PLAYについて、かなり綿密なビジネスモデルを検討しており、それに答えられるよう、G・U・M PLAYにもうひとつ、機能を研究開発することになりました。

 加速度センサを利用した歯磨きの良し悪しの判定、製品では「MOUTH CHECK」と呼ばれる機能です。

 通常、歯磨きは「歯を1本1本細かく歯ブラシを動かしてみがいていくのが良い」とされています。つまり、「歯ブラシが歯1本ぶんの移動をしているか、あるいはそれ以上の移動をしているか」が歯磨きの良し悪しに繋がります。

 加速度センサを利用した移動距離の計測は非常に難しいのですが、サンスター社の持つ歯磨きのノウハウとG・U・M PLAYのセンサの組み合わせで数値を定量化することが可能になりました。

 実際に記録したデータをグラフで表示したものを動画で書き出しました。

 左側が歯科衛生士のデータ、右側が普通の方の磨き方のデータです。

 歯科衛生士と普通の磨き方の比較

 赤線のグラフに注目していただくと、歯科衛生士の赤線は「小さな弧を描く波」なのに対し、普通の方の赤線は「ギザギザして、かつ山が高い波」であることが見て判るかと思います。

 この波の形状を判定するアルゴリズムを開発、実装することで、G・U・M PLAYに「G・U・Mらしい機能」である「MOUTH CHECK」を実装することができました。

実際のMOUTH CHECKの画面


発売日ギリギリまで開発が続く

・ ブラッシュアップ

 上記3つの懸念していた課題を解決し、製品版への落とし込み方が見えました。

 そして2015年の4月、実際に製品版の開発がキックオフしました。

 製品版のノウハウはプロトタイプのノウハウと大きく異なる部分が多いため、1-10での開発を行わず、製品開発が得意なメーカーがハードウェア本体及びファームウェアの開発を担当することになりました。

 1-10及びアプリケーション開発チームはメーカーの方にて仕様書を提案していただき、それを基に7、9、11月にそれぞれ製品版プロトタイプを共有いただき、動作確認をしました。

 ファームウェアはスリープのタイミングやスリープ時の挙動について、実際に動かしてみると大幅な変更の必要を感じたため、こちらからシーケンスを大幅に変更した仕様を提案し、その後も段階的なアップデートを繰り返してブラッシュアップしていきました。

実際の製品版向けプロトタイプ


 一方、アプリ側は一通りは完成していましたが、製品版用のシステムとの繋ぎ込みやチュートリアルの追加、エラーの洗い出し、Android版への移植、様々な機種でのデバッグ対応など、継続的に対応を行っていきました。

 

・ そして発売!

 2016年の4月11日に記者発表とウェブ上の予約を開始、2016年4月18日に発売開始しました。

 開発は本当にギリギリまで行われ、最終版のアプリがiTunes Storeに上がったのは記者発表の前日、4月10日の夕方でした。

最終版アプリの一場面。16エリアに分けられた歯をまんべんなく正しく磨けているほど高得点に


 非常に反響は大きく、TV番組を含めた多数のメディアに取り上げていただき、G・U・M PLAYの予約もあっという間に1stロットが予約で埋まってしまいました。

 そして予定通り発売日に二子玉川の蔦屋家電にて店頭販売を開始、現在は蔦屋書店と一部のGMS、歯科医院での販売を開始し、少しずつ販路を広げている状況です。

 全3回のうちの最終回である次回は、発売までの流れで感じた開発チームに必要な要素、技術、方針などについてまとめていきたいと思っています。

G・U・M PLAYのアプリはこちら
>>iTunes
>>Google Play

【連載】クリエイティブスタジオ1→10driveの「楽しいIoT」開発
第2回:スマホと連動するスマート歯ブラシ「G・U・M PLAY」のできるまで<1>

第1回:「便利で楽しいIoT」市場を先取りするプロトタイプ開発の重要性
 <執筆者プロフィール>

森岡東洋志

1-10drive, Inc.CTO兼Technical Director。工学修士。
東京工芸大学に大学院にてヒトの視覚についての研究を行う。
2009年単位取得退学。
2009年より、ニューリー株式会社にて3Dスキャナ及び画像認識装置の研究開発を行う。
2014年4月より、1-10design, Inc.に参加。
2015年10月、1-10drive立ち上げに伴い移籍。

【1→10drive】http://www.1-10.com/drive/

 

筆者:森岡東洋志