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●なぜ管制システムが必要か
楽天と米AirMap社は共同で、自律制御ドローン向けの自動管制システム(UMT)を開発する「楽天AirMap株式会社」を設立する。ドローンが飛び交う時代を担う管制システムは、業界全体としても考えねばならない課題だ。

○ドローン流通には欠かせない管制システム

冒頭では、楽天の執行役員兼新サービス開発カンパニーの虎石貴プレジデントが登壇。同社が昨年から「そら楽」のブランドでドローン流通に取り組み、世界初となるゴルフ場での商用空輸サービスを実現したことなどを挙げ、来たる超高齢化時代では一人では買い物にも出られない、アクセスを失う人が現れることを予見。無人ドローンによる流通は、アクセスを失っている人にも物流網を届ける重要なピースになることを示した。

現在は離島や山間部といった、ルート上がほぼ無人地帯での実験しか行われていないが、将来的には都市部をドローンが飛び交うことになる。ドローンによっては周辺を監視して緊急回避などの動作が取れるものもあるが、処理速度には限界がある。そこで、より安全なドローンのデリバリーに欠かせない技術として、ドローン同士のルートや高度、現在地などを把握し、制御する無人管制システム(UTM:Unmanned Traffic Management)の必要性を指摘した。有人の飛行機では管制塔の管制官からの指示で飛行機が航路を調整するが、ドローンの場合は人が乗っていないため、すべてコンピュータ上で処理するというわけだ。

そしていち早くドローン流通の時代を日本にもたらすため、米国のUTMベンチャーであるAirMap社と提携し、同社の技術を用いて日本にも本格的なUTMの誕生を目指すとした。

●新会社設立でドローン活用は進むか
続いてAirMap社のベン・マーカスCEOが登壇し、同社はDJIやインテルなど多くのドローンメーカーおよび周辺技術産業に対してUTMシステムを提供していることを紹介。ドローンの登場により、航空産業は現在、社会・経済に著しい影響力を与えていることからも、安全なインフラの確立が必要であるとした。

マーカスCEOによれば現在、同社のシステムを使って300万以上のドローンが管制下に置かれており、毎日10万フライト以上を制御しているという。同社の技術では、あらかじめ公園など大きな土地を持つ地権者にアクセスを取り、その中での飛行の可否や可能なルート、高度といった情報を収集。ジオフェンシングやドローンのリモート識別という形で衝突回避やルート決定といったソリューションを提供している。すでに米国では125箇所以上の空港や空域管理者が周辺空域の情報を提供しているという。

楽天AirMapの代表取締役CEOに就任した向井秀明氏によれば、日本では楽天AirMapが自治体や空域管理者などと連携して高精度な地図を作成し、日本国内向けのUTMとして提供していく予定だ。具体的なサービスの提供は2017年中旬を予定しているとのことだが、具体的なエリアや料金体系などは未定とのこと。すでに3月に入っているが、夏までには何らかのアナウンスがあると見ていいだろう。

●ドローン利用普及に向けたひとつの課題
○ホビードローンの世界にも普及が急がれる

2015年に航空法が改正され、ドローンの飛行には申請が必要になっているが、国土交通省に許可されたドローン飛行申請数は、2016年12月時点で1万件を越えており、今後さらに伸びることが予想される。政府は2018年をめどにドローンによる配送を可能にするべく、航空法の見直しなどを検討している。UTMはこうした規制緩和への必須条件となるため、スタンダードになることは大きな経済効果も生み出せることになる。

海外ではNASAが国際スタンダードを目指したUTMを開発中であり、欧州ではGUTMA、日本でも東京大学やNTTドコモ、JAXAなどがJUTM(Japan Unmanned System Traffic & Radio Management Consorcium:日本無人機運行管理コンソーシアム)という団体を設立しているなど、ドローン管制システムの構築は世界的な関心事となっている。

またベルギーのUniflyによるUNIFLY CONNECTやUniflyと提携したテラドローン社のTerra UTMなど、民間ベースのUTMも登場しており、標準化に向けた激戦区となっている。

楽天AirMapの参入により、また一つプレーヤーが増えることになるが、メーカー系の採用例が多いAirMapは一歩リードしているというところか。いずれにせよこうした自動管制システムが普及すれば、飛行ルートが明らかになっている商用ドローンの世界は安全性が格段に高まることは間違いない。

問題は、こうした自動管制システムをサポートしない古いドローンや、Wi-Fiなどで操作するホビー系ドローンの存在だ。自動管制システムはドローン側にGPSなど一定の精度を持ったハードウェアが必要になると考えられるため、これがない古いハードウェアの場合、精度が保証できない。ある程度は操作するスマートフォンなどのソフトウェア側をアップデートすることで対応できるかもしれないが、現在すでにドローンを導入済みの場合、予定よりも早めにアップデートする必要が出てくるかもしれない。

またホビー系のドローンはそもそも自律操縦できないものもあり、こうしたドローンが管制下にあるドローンのルートを邪魔するといった可能性もある。このような問題が起きないためにも、古いドローンに対する改修措置や、ホビー系にも管制システム下に加わるような規制が必要になるだろう。いずれにしても安全なシステムが採用されることを期待したい。

(海老原昭)