担当編集ガールからまた無茶なミッションが来たわよ。「天職と運命の人の見つけ方を指南して頂けますと幸いです!」 …って、ちょっと長いと読む気をなくされるネット記事1回に、どんだけ期待してんのよ。天職とか運命の人なんて、死ぬまで本人でも「アタシの人生、これで…良かったんだよ…ね…(ガクッ)」くらいに思いそうなものでしょ。いや、まさにそう自分が信じられるか否かで心に宿る「青い鳥」そのものじゃねえかって話よ。

たとえばアタシの「女装パフォーマー」という得体の知れない職業。ドラァグクイーンというゲイカルチャーの中の派手女装を趣味的に嗜んでいたら、その姿でのお呼ばれが増えて自称するようになった肩書きです。ミッツさんが初期のテレビ出演時にプロフィールを「女装」と出したら却下されて、「女装家」にしただけでそんな職業があるかのように浸透していったように、そもそも職業の名前なんて曖昧なものでしょうけど。

お仕事名言といえば、このアニキ! な、スティーブ・ジョブズさんが「すばらしい仕事をするには、自分のやっていることを好きにならなくてはいけない。まだそれを見つけていないのなら、探すのをやめてはいけない」なんて言うように、天職って「好きなこと、得意なことを仕事にできている」イメージよね。

となれば、アタシみたいに自身の性的指向を全開にできて、趣味の延長で演ってきたお仕事なんて、まさに天職だと思うでしょ。もちろんありがたくこのお仕事を(お声がかかる限り)やっていくつもりはありますよ。でも生々しい話、週末ヒロイン的な「あそび」だったものが「お仕事」になってしまえば、割り切らなきゃいけないことも増えるし、逃げ場でもあったところを自ら気の抜けない仕事場に変えてしまったような面もあるわけ。シュミや好きなことを生業にする、"もの作り"や"表現"なんてカッコよく言えてしまいそうなことを職業にした人には、多かれ少なかれこのジレンマが生まれがちなんですよ。(ちなみにお仕事がない時はおっさん姿のゲイなアタシの場合は、男性性至上主義のゲイシーンで女装という非モテ行為をやる仕事でもあるので、プライベートのモテを放棄する女芸人さん的な副作用もあるしね…)

好きなこと、得意なことを仕事にして生活できていても、心がきっちり満足するとは限らない。むしろどこかで「仕事として合わせる表現に甘んじる」自分に疑問を抱いたりもする。でもじゃあ、どこまでも自分のポリシーを潔く貫いて誰もがお仕事を成立させられるかって言えば、当然そうじゃない。ドラマ『カルテット』の中で、過剰にショーアップされた演奏会に遅咲きの主人公たちを送り込んだマネージャーが、葛藤の末にプライドを捨てた仕事を乗り切った姿を見送った後で、こう言うの。「志のある三流は、四流だからね。」

好きなことを仕事にするのは素晴らしいことで、恐ろしいことなのよ。「天職だ、天職じゃない」って言葉でこだわるんじゃなく、なんであれその仕事とそれにまつわるものを引き受ける覚悟、そしてやりきった結果が、「天職」と呼べる姿を成立させるんだと思うわ。

 「運命の人」だって、そういう言葉を使う女ほどキナ臭いもんよ。たとえば、まさしく古い女もオカマもすがりがちな「白馬に乗った王子様が現れる」ってアレ。つまり、家柄・権力・財産という、自分との相性とは全く関係のない他人様の持ち物をもらいたいって欲むき出しの要素も、自分は何の努力もしないで相手に演出されて迎えに来てもらおうっていう姿勢も、とんでもないふてぶてしさなわけよ。超フテ子〜。何が「わぁ!運命の人が現れたぁ!」だって話で、王子様からしたら、うっかり僻地に迷い込んだら欲むき出しのブスが大喜びでしがみついて来たようなもんだから、そりゃ一目散に逃げ出すわよね。

あと同じく「運命の人」論者が言いがちな寝言が「ずっと恋していられる相手」よね。手に入れたい、入るかどうか分からないからこそ燃え上がりがちな恋愛初期の「恋心」は、手に入って毎日目の前にいられる間に鎮火していくのが常。二つの炎は同じ速さで燃えはしないの(中島みゆきねえさん)。10年も20年もずーっと恋と性欲に燃えて貪りあい続けられるカップルなんて、ド変態同士が巡り合えた、宝くじに当たったようなおめでたいマニアカップルですよ。むしろ同性愛よりずっと性的少数者かも。うらやましいけどそんな変態行為、そうそうデキる相手はいないもんね。

周囲の人やペット、異性愛者であれば子どもも含んだりの「愛し、共にいる人」たちとの居場所、家庭は長続きすることも多いし、それは感謝すべき安らぎだと思うの。だけど、「運命の人」論者は、ずっとトキめいていたがるし、理想という型がある分、相手や自分に不満を感じたり息苦しく縛りがちなのよね。そんなの、先に掲げるお題目にしなくていいじゃないの。もう肉体を求め合うこともなくなった相手の、それでも時折可愛いなと感じさせられる瞬間に、しみじみと心の中で「きっとこの人がそうなんだなぁ」とありがたく沁みていれば、最期の時に自分にとって「運命の人」が誰だったのか、ちゃんと感じられるでしょ。

仕事も恋も、天職だとか、運命の人だとかは、成し遂げた人だけが後で感じればいいご褒美。というわけで結論。「天職が見つけたいんです」、「運命の人、現れないかなぁ」なんて先に口にしてるオンナからは、天職も運命の人も逃げてくよ〜! イイ女は、不敵な笑みでそれを胸に秘めて。HAVE A NICE FLIGHT!