「ブルーハーツが聴こえる」のイベントに出席した尾野真千子、市原隼人、斎藤工、豊川悦司ら

 パンクロックバンドのTHE BLUE HEARTS(ザ・ブルーハーツ)の楽曲をテーマにした6つの短編ストーリーを集めたオムニバス映画『ブルーハーツが聴こえる』の公開直前プレミア上映会イベントが15日に都内でおこなわれ、それぞれの作品で主演を務めた俳優陣のうち尾野真千子、市原隼人、斎藤工、豊川悦司の俳優陣と、作品を手掛けた、飯塚健監督、井口昇監督、清水崇監督、工藤伸一監督、李相日監督が舞台挨拶に登壇、作品撮影の経緯やエピソード、作品に込めた思いなどを語った。

 ザ・ブルーハーツの6つの楽曲をテーマとして描きあげられたこの作品群。『ハンマー(48億のブルース)』は、とあるアンティークショップに努める一人の女性(尾野)が、同棲中の彼氏の浮気現場を目撃、さらに周りの友人、知人に様々なことを言われながら一人悩む姿を描く。

 テンポよく進む作風に関して飯塚監督は「テンポ感を出したかといえば、どちらかというとそうかも。でもそんなに速くしようとは…」と回答、尾野は役者同士での意識合わせの時間が十分設けられたことが要因であることを補足、合わせて月1〜2回は共演者やスタッフらと飲みに行くような関係になったと、現場の雰囲気を振り返った。

 『人にやさしく』は未来の宇宙で、刑務所惑星を目指す囚人護送船がある日遭難、閉じ込められた囚人の中で、生きる意味と希望を問う姿を描く。

 本作で主演を務めた市原はSF的なストーリーであるにもかかわらず、特撮に関してはCGよりも「昔ながらの様々なアイデアによる手法」を主に使用し、映画が撮影されたことを明かしながら「自主制作的な撮影だったので嬉しかったです。これこそものづくり、作りたいと思うから作るという思いを感じました」と撮影現場での有意義な経験の様子を明かした。

 『ラブレター』は、ある脚本家の青年(斎藤)がひょんなきっかけでタイムトリップ、記憶から忘れかけていた初恋の少女と遭遇、未来には事故で亡くなるというその少女の運命を、脚本を書き換えることで阻止しようと奮闘する姿を描く。

 井口監督はこの作品が過去の思い出をベースに構成されたものであることを明かしながら、高校時代に太っていたというイメージの、主人公の男性を斎藤が演じるにあたり「太った人の動作」的なレクチャーを演出で実施したという。

 また、劇中のシーンでは、斎藤が少女を8ミリカメラを持って追いかけるシーンがあるが、このシーンについては実際に斎藤が撮影した少女の姿を使用しており「被写体との距離というものが、皮膚感覚で伝わる映画となっています」と映画のディテールをアピールする。

 『少年の詩』は1987年、とある団地に母(優香)と二人暮らしをする、反抗期を迎えつつある少年一人が、自分の誕生日に母とケンカ、さらに母に言い寄る男を嫌いながらも、当時に流行したヒーローのごとく自らを奮い立たせ、頭の中のモヤモヤした気持ちと対峙していく姿を描く。

 清水監督もこの作品に自身の少年時代を投影することを考え、設定のギャップを取材や調査などで埋めつつ制作を進めていたことを明かしながら、改めてそれぞれの作品に対して「監督それぞれの色が出ていますよね」と映画の感想を語った。

 『ジョウネツノバラ』は、最愛の女性を亡くした一人の男(永瀬正敏)が、いつまでもその女性のそばにいたいと亡骸を奪い去り、添い遂げていく姿を描く。以前より工藤監督は永瀬と交流があり、工藤監督の現場で永瀬がカメラで撮影をするなど、制作作業をともにすることがあったという。

 今回の企画に関しては、当初テーマに則ったタイトルとして、ザ・ブルーハーツの「トゥーマッチペイン」「ジョウネツノバラ」のどちらを取るかを悩み、結果的に「ジョウネツノバラ」を選択、それを永瀬も快諾し自ら主演を務めながら脚本も担当したという経緯を明かした。

 また、当初このプロジェクトがザ・ブルーハーツの30周年である2015年に公開される予定でありながら、2年のブランクができてしまったことを明かしながらも、今回公開が決定したことに対し「ブランクツーイヤーズでやっと公開ができるということで、感謝しかないです」と深い喜びを表していた。

 『1001 のバイオリン』は、元福島原発の作業員で、家族ともども東京に越してきた一人の男(豊川)が、一生懸命生きている家族の中で、一人あきらめを感じた人生と戦うため、友人とともに実家のあった福島の実家に向かい、震災で残した家族の愛犬を探しに出かける様を描く。

 現実性のある役柄設定に対して豊川は「現実にこの男性のように苦しんでいる人はたくさんいる。その意味で現実にいる人を演じるわけであり、撮影に対しては緊張しました。役作りをするというよりは、その人に寄り添うつもりでやりました」と撮影を振り返った。

 また豊川と李監督はかつて映画『フラガール』でもタッグを組んだ経緯もあり「豊川さんの福島弁がまた聞きたくて」と冗談を語りながら豊川の雰囲気に惚れて今回の作品へのオファーをしたという。

 撮影は福島の現地にも出向いておこない、現地の様子を見た豊川は「自分の想像をはるかに超えていました。ここで大変なことが起こったんだということを改めて感じ、スタッフ、キャスト一同と真摯に作品に向き合うことを考えていた」と撮影当時の思いを明かした。

 李監督も「撮影がちょうど震災から3年くらいのときだったんですが『この時間の有効性をどう見つけていけばいいんだろう?』そんな答えの出し様がない会話を、豊川さんとよくしていましたね」と、制作時に悩み続けた様子を明かしていた。

 なお、『人にやさしく』メガホンをとった下山天監督、『少年の詩』に出演した優香、『ジョウネツノバラ』で主演を務めた永瀬はこの日、都合があり欠席した。(取材・撮影=桂 伸也)