今季、ツアー本格参戦4年目となる藤田光里(22歳)。2013年夏にプロテストを合格すると、その年のファイナルQTでトップ通過。容姿端麗な「大物ルーキー」として一躍脚光を浴びた。

 そして実際、ルーキーイヤーの2014年シーズンから賞金ランキング38位という成績を残して、すかさずシード権を獲得。2015年シーズンにはフジサンケイレディスクラシックでツアー初優勝を遂げ、賞金ランキングは18位まで浮上した。プロ入り後、順調にステップアップを重ね、ツアー3年目となる2016年シーズンではツアー2勝目と、さらなる飛躍が期待された。

 だが、昨季の藤田は思わぬ不振にあえいだ。4度のトップ10入りを果たすも、優勝争いに加わることはほとんどなかった。出場34試合中、14回も予選落ちを喫するなど不安定な状態が続いていた。最終的には何とかシード権を獲得したものの(賞金ランキング48位)、シーズン終盤まで”崖っぷち”の争いを強いられた。

 もちろん藤田自身、その結果に納得しているはずがない。

 不振の原因は、ドライバーが合わないことで苦労し、スイングを崩したままシーズンを迎えてしまったことがひとつ。もうひとつは、シーズン途中から左手首やヒジの痛みによって、思うようなゴルフができなかったのだった。

「昨季は、オフの間もなかなか調子が上がらなくて、そのままズルズルとシーズンの開幕を迎えてしまったんですよ。その後、夏場には少し(調子も)よくなったんですけど、結局最後まで(自分のゴルフが)よくわからないまま終わってしまいましたね。

 手首やヒジの痛みもあって、思うようなスイングができなかった時期もありました。それでも、シードを獲りたい、という気持ちはすごく強かった。それで、最後までがんばれたのかなと思います。その気持ちがなかったら、きっとシードをぎりぎりで落としていたか、もっと下のほうで終わっていたかもしれません」

 出場試合の最終戦となる大王製紙エリエールレディスの結果次第では、シード落ちの可能性もあったが、無事に予選突破を決めて32位タイでフィニッシュ。ぎりぎりのところでシード権を獲得した。

 その結果が、藤田にとってはとにかくうれしかった。心身ともに疲れ果てていた気持ちを、少なからず癒してくれた。

 そして、ようやく迎えたオフ。厳しいシーズンからやっと解放された藤田は、落ち着いた日々を過ごしていた。新たなシーズンに向けての準備を整えながら、都内近郊でイベントなどをこなしていた。そこへ、思いもよらぬ知らせが届いた。

 父親の孝幸さんが自宅で倒れ、札幌市内の病院で急逝したというのだ。63歳だった。

 苦悩のシーズンの精神的な疲れがまだ残るなか、藤田を襲った悲劇だった。

 藤田は父親からゴルフを学んだ。3歳の頃からはじめて、ゴルフに関しては当時から”スパルタ”指導を受けてきたという。そんな父親の期待に応えるべく、藤田も精一杯ゴルフをやってきた。

 だから、藤田は「父のために、ゴルフをしていたようなものだった」と振り返る。その悲しみは他人にはとても想像できないが、藤田は父親の存在についてこう語った。

「子どもの頃から、ずっとゴルフをがんばってきて、どんなことも(父に)報告してきました。よかったねとか、悪かったねとか、そう(父に)言ってもらうことを、小学生の頃からずっと続けてきました。それが今や、(自分の結果を)報告する人がこの世からいなくなってしまいました。

(父が亡くなって)『私、何のためにゴルフをやってきたのかな』と考えていたら、父のためにゴルフをやっていたことに気づいたんです。(父に)『よかったね』って言ってもらうためにやってきたのかなと……。その存在がいなくなって、自分はこれから、何のためにゴルフをしていけばいいんだろうって……。お葬式の間も父の遺影を見ながら、『私はどうしたらいいの?』って思っていました」

 父親の厳しい教えもあって、藤田はゴルフから逃げたくなった時期もあったという。しかし、「(その父が)いなくなると、いい思い出ばかりよみがえるものなんですね……」と寂しい表情を浮かべる。

 昨年の11月末、父親からLINEで「シードを獲ったことが、今までで一番うれしかったよ。ありがとう」というメッセージが届いた。藤田は、それが「一番思い出に残る言葉になりました」と語る。

 藤田が成長するためには、父親の存在はまだまだ必要だったはずである。そして、彼女の悲しみが完全に癒されることはないだろう。それでも、立ち止まってはいられない。新たなシーズンに向けて、藤田はこう語った。

「父のためにゴルフをやってきたんだとわかったからには、これからも一緒に戦いたい、という気持ちが強くなりました」

 幼い頃から、「『賞金女王になる!』と父に復唱させられていた」と言って笑う藤田。今は、その言葉が彼女の胸に深く刻まれているに違いない。


ラウンド中、笑顔を欠かさすにプレーする藤田光里

 迎えた今季、藤田はここまで2戦を消化。開幕戦のダイキンオーキッドレディスは43位タイで終え、2戦目のヨコハマタイヤ・PRGRレディスカップは予選落ちと、スタートダッシュには失敗している。それでも、気落ちすることはない。

「今年は、成績よりも”笑う門には福来る”です。そういう気持ちでやろうと思っていて、そうすれば、成績もついてくるような気がしています。何もかも、不安に思うことはもうやめます。また(余計に)考えることが増えるだけですからね」

 新たな一歩を踏み出した藤田は、第一に”笑顔”でいることを決心した。前を向いて、笑顔でプレーする姿を見せることが、天国にいる父親へのメッセージ――。

 悲しみを胸に秘めて戦いに挑む藤田が、今季はどんなプレーを見せてくれるのか、静かに見守っていきたい。

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