ヤバイぞ、アジア最終予選4〜杉山茂樹×浅田真樹(後編)

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杉山 今回のUAE戦がピンチだという理由のひとつは、予選が中断していたこの4カ月の間に、日本に戦力の上積みや成長したような形跡が見られないことです。もっと言うと、初戦、ホームでUAEに敗れたころに比べて、「いや、今の日本にはこの選手がいますよ」とか、「こことここは確実によくなっていますよ」というのがない。

 それはハリルホジッチが海外組優先というような縛りをつけて思考停止に陥っていたからでもあって、本来はもっといろいろな可能性があったはずだし、国内などでそれを探す時間もあったのに、何もしてこなかった。それで結果的に海外組頼みとなり、今回もその延長上で戦わなければいけなくなってしまったわけです。ところがその海外組の調子はといえば、本田圭佑は確実に落第だし、香川真司や長友佑都もどうなんだろうという部分があって、期待ができなくなっている。今度こそ絶対にUAEに勝てる、という要素が見当たらないんです。


サウジアラビア戦で先発、体を張ったプレーで勝利に貢献した大迫勇也浅田 初戦のUAE戦とは「ここがちょっと違う」という言い方をするなら、やはり大迫勇也、原口元気の存在なんじゃないですか。サウジアラビア戦から4カ月、代表戦はない、Jリーグはシーズンオフに入ったという中で、コンスタントに試合がある海外組の中で、この2人は所属クラブで結果を出しているし、高いパフォーマンスを見せている。そこに長谷部誠も入れてもいいと思いますが、サウジアラビア戦からの流れという意味でも、彼らが中心にならざるを得ないでしょう。

杉山 そうですね。ポジションはかぶるけど、乾貴士も面白いと思います。原口もちょっと同じ傾向があったんだけど、昔は孤立しちゃうタイプだったんですよ。単品での魅力はあるんだけど、周囲との関連性の中で自分をよく見せ、周囲の選手も引き立たせるという能力があまりなかった。それがちょっと柔らかくなってきたような気がします。

 ただ、齋藤学も含めて左はいるのですが、右がちょっと手薄な気がする。で、香川が右をできれば何の問題もないのですが、香川がひとつのポジションしかできないというのもまた大問題なんです。それが前の4人を回す中で障害物になっているんです。

浅田 確かにやたらと左サイドはいい。「いいじゃん」と思う選手は、ことごとく左サイドという傾向はありますよね。だから僕は、右はもう、むしろそういうタイプの選手じゃなくて、要は小林悠とか岡崎慎司とか、フォワードっぽい感じの選手を置いて、左で作って右は背後を狙うみたいなイメージのほうが、全体的なチームのバランスとしてはいい感じがしますけどね。

杉山 あまり上積みがない中で、ホームのUAE戦との違いでいうと、やはりセンターフォワードとして大迫がブレークするしかないんじゃないですか。「どう見たってエースは本田、香川じゃなくて、あなたです」と、みんなで言っておだてて、背番号も9とか10とかをつけさせてしまう。現状ではそれしかないと思いますよ。

 ただ、新しい戦力を入れていかないと、たぶん9月までももたないと思う。23人入れるのだったら、4〜5人はオヤッと思うメンバーを選ばないと、特に本大会を見据えたら厳しいと思います。切る人は切る、投入する人は投入するという感じをそろそろ出していかないと。何度も言うけど、平均年齢が30歳近いでしょう。メチャクチャ高いんですよ。このまま2年経つと、平均年齢が31歳になってしまう。そんなチームはあり得ない。平均年齢は27歳にどうしても抑えておかなきゃいけないんです。「いない、いない」と言うだけでなく、無理にでも入れる努力をしないといけない。本来だったら、タイ戦の最後のほうなどはそういう選手を投入するチャンスなんだけど、ハリルホジッチにその余裕があるかどうか。

浅田 順番からいけば、リオオリンピックに出た選手たちがボチボチ入ってきてもらわなきゃ困るわけだけど、久保裕也がちょっと出てきたぐらいですか。そういう意味で、サウジアラビア戦での久保の使い方は気の毒でした。ほとんど経験のない4-2-3-1の右サイドで使われて、まさに右往左往。ほぼ何もできずに、日本は1人少ない状態でサッカーをやっているような感じでした。もしあの試合で「久保、失格」みたいな烙印を押すならかわいそうな話で、もうちょっと使い方をうまく考えてほしいなと思います。

杉山 だから布陣が4-2-3-1の1個しかないというのもちょっと苦しいと思いますよね。4-3-3もあっていいと思うし、4-4-2的なものもあってもいいと思うし。4-4-2と4-2-3-1の中間というのも選手次第では作れる。大迫はちょっと下がり目も得意だったりするから、そういう大迫と久保のツートップというのもあり得る。そういうのもどんどんテストしていけばいいんですよ。香川にしても、4-3-3ならインサイドハーフという選択肢はあるわけですから。それが判で押したように4-2-3-1では、選手のキャラを無理にそこに当てはめていく感じが出てきてしまうようなところがあります。

浅田 これまでの5試合を見ると、失点が多いですね。結局、無失点はタイ戦だけ。得点をそんなに取れないのはしょうがないにしても、必ず失点するというのは何とかしないといけない。その点、吉田麻也がプレミアで試合に出ているのはいいことですね。

杉山 サイドバックは酒井宏樹、酒井高徳は出ているけど、長友がちょっと出られなくなってきている。そのあたりも新しい選手をどんどん入れていっていいと思うんですよ。サイドバックとか両ウィングとかは、その時々で元気がいい人が出ていったほうが、勢いが生まれてチャンスになるんです。

浅田 あとは、あえて言うなら小林祐希じゃないですか。よくも悪くも何かしでかしそうな雰囲気というか、キャラクターがある。

杉山 確かに。だからその気にさせるかどうかの問題なんですよ。大迫にしても小林祐希にしても、多少ミスをしても「もうこいつに賭ける」みたいな雰囲気づくりというのも大切なんです。本田がいないとすると、日本の中心は誰になるのか。長谷部はいい選手だし、いい人だけど、日本の本当の中心ではない。香川も背番号は10だけどそういうタイプではない。

本田がいなくなるということは、チームの看板がなくなるようなリスクがあるんです。コメントを聞いていても、自分のことは棚に上げてチーム全体の話をしてしまうようなキャラクターじゃないですか。いたらいたで面倒くさいけど、そういう役割の選手をつくっていく必要もある。そういったことも、このUAE戦から考えていかないといけないんじゃないですか。

浅田 スケジュール的にいうと、3月の2試合が終わると、次は6月のイラク戦で、最後がオーストラリア、サウジアラビアとの2連戦。6月の海外組はシーズンが終わったばかりで消耗し切っているでしょうし、8月、9月もシーズンが始まったばかりでコンディションが整っていない。そう考えると、UAE戦、タイ戦は勝っておかないと、後々つけが回ってきそうですね。

杉山 焦りが出るとダメなチームだから、最後の2試合で連勝しないといけないなんてことになると、相当ヤバイと思います。

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