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By Eli Duke

「ナチス・ドイツが南極大陸の地下に秘密のUFO基地を作っている」といううわさは、第二次世界大戦後からあちこちで流れるようになり、2016年になってもMirror OnlineDaily Starのようなニュースサイトで報じられました。この半世紀以上にわたって語り継がれるうわさの真否について、ケンブリッジ大学のコリン・サマーヘイズ博士が調査を行っており、どのようにしてナチス・ドイツのフェイクニュースが生まれたのかを説明しています。

Hitler’s Antarctic base: the myth and the reality

(PDFファイル)http://www.histarmar.com.ar/Antartida/Base-Hitler/LaBaseAntarticadeHitler.pdf

Fake News About a Secret Nazi UFO Base In Antarctica Refuses to Die - Motherboard

https://motherboard.vice.com/en_us/article/fake-news-about-a-secret-nazi-ufo-base-in-antarctica-refuses-to-die

「南極大陸にナチス・ドイツのUFO基地がある」といううわさについて調べているサマーヘイズ博士は、2007年に「Hitler’s Antarctic base: the myth and the reality(ヒトラーの南極基地:都市伝説とその真相)」という査読論文を発表しています。この論文によると、南極基地のうわさが流れ始めたのは、1939年1月にナチス・ドイツの調査団が任務のため南極大陸に上陸したことに起因しているとのこと。

第二次世界大戦が勃発する数カ月前、ナチス・ドイツは小規模の調査団をシュヴァーベンランド号という船にのせて送っています。サマーヘイズ博士によると、ナチス・ドイツが調査団を南極に送り込んだのは、当時イギリスとノルウェーが南極大陸の一部を自国の領土だと主張していたことが原因とのこと。ナチス・ドイツは南極付近で行っていた捕鯨産業を保護するべく、イギリスやノルウェーと同様に南極大陸の一部の領土権を主張し、調査団の手によって捕鯨船団の拠点を作ることが目的だったと見られています。

ナチス・ドイツが南極に足を踏み入れたのはこれが最初で最後なのですが、第二次世界大戦終結後から、ナチス・ドイツの南極基地のうわさが流れ始めたとのこと。うわさの発端は敗戦2カ月後に、ドイツ軍の潜水艦であるUボートが、アルゼンチンの海軍基地に到着したことがきっかけとなっています。アルゼンチンの新聞が「ヒトラーやナチス・ドイツの残党がUボートで南極の秘密基地に運ばれた」と報じたことで、世界中の新聞がフェイクニュースを取り上げてしまったそうです。



By Jared Enos

さらに、当時アルゼンチンに亡命していたハンガリー人のLadislas Szabo氏が、Uボート到着から2年後に出版したナチスのリーダーの逃避などについてまとめた書籍が、その後もうわさの流布に拍車をかけ続けました。ヒトラーはベルリンの地下壕で死亡が確認されているのですが、「ヒトラーの遺灰やナチス・ドイツの財産が南極大陸の地下に移送された」などと言われていました。

いくつかの筋から、これらのうわさが流言飛語であることを示す動かぬ証拠も出ていたそうですが、ヒトラーの南極地下基地のうわさが消えることはなかったとのこと。また、1947年にアメリカ軍は「ハイジャンプ作戦」と呼ばれる大規模な南極観測プロジェクトを行っており、南極にイギリス軍がいたことを示す文書も存在します。この文書は南極にイギリス軍がいたことを記しているのですが、陰謀論者はアメリカ軍とイギリス軍が、ナチス・ドイツの秘密基地に攻撃を続け、1958年に3つの原子爆弾を落としたと主張していました。

サマーヘイズ博士は「これらのうわさや証拠には、一部の真実が含まれています」と認めていますが、「南極にナチス・ドイツの基地が存在する」ことを示す証拠はひとつも見つかっていません。サマーヘイズ博士は論文の中で、1911年にノルウェーの探検家が、南極大陸で80匹の犬を使い、14日間かけて小さな小屋を建てたことに言及しています。唯一、南極に上陸したナチス・ドイツの調査団の滞在期間は1カ月間であり、その間に南極大陸で大量の資材・装備が運ばれたり、大量の犬が使われたりした形跡はないとのこと。ましてやわずか1カ月で、厳しい南極の地で高度な軍事兵器を格納するような、地下複合施設を建造するのは不可能だとのこと。

「ナチス・ドイツの地下秘密基地」にUFOの尾ひれがついたのは、1975年にネオナチのカナダ人が出版した本「UFOs: Nazi Secret Weapon」の中で書かれている、「ハイジャンプ作戦中のアメリカ軍の航空機をナチス・ドイツ軍が墜落させた」という根拠のない報告に基づいています。その後も南極のUFO基地に関する本などが出回りましたが、サマーヘイズ博士は「ナチス・ドイツ軍がわざわざ南極に基地を建造し、戦闘機を飛ばして防衛を行うという考えは単なる幻想です」と話しています。



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原子爆弾のうわさについても、実際に1958年に南半球で3度の核爆発が記録されていますが、いずれも南極大陸からは1500マイル(約2400km)以上離れているとのこと。このように、サマーヘイズ博士は10年前に「ヒトラーの南極UFO基地に関するうわさがデマである」ことを証明しているのですが、うわさを信じてしまう一部の人が、フェイクニュースを世界中に拡散してしまうという流れは、今も昔も変わっていないようです。