【試乗記】ボルボS90&V90、デキスギ君がジャイアンとケンカ!?  待ってろビーエムメルセデス!  北欧のロールスはドイツ勢を駆逐できるか??:小沢コージ

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●時代と価値観が刻々と変わっていきます

 いやはや時代も変わるもんですなぁ。まさか、北欧の地味&イイ人ブランドのボルボが本気でメルセデス、BMWに対抗してくる日が来るとは。言わばドラえもんで言うのび太じゃなくって、デキスギ君が本気でジャイアンに挑むかのような時代変革!! それがこの新型ボルボV90&S90のプレミアムラージセダン&ワゴンの本質ですよ。

 SUV以外の90シリーズとしては久々の復活で正確には今から20年近く前の1998年以来。ぶっちゃけ言うとこのクラスはメルセデス・ベンツEクラス、BMW5シリーズの独壇場でボルボみたいな控えめ系は遠慮し、ガチなバトルをほぼ諦めていたんです。セダンではなくハズシのワゴンで趣味人を狙おうみたいな。

<XC90>
 ところが! ボルボも不況に苦しみ、存続危機の憂き目に会い、親会社も変わって心機一転。攻めの姿勢に出たわけで、それが去年日本に出るなり1000台以上をあっさり完売、去年世界で過去最高の53万台強を売り切った新世代ボルボの看板メニュー、XC90。

<SPAプラットフォーム XC90>
 そしてそのXC90と同じ新世代SPAプラットフォームと高効率パワートレインDRIVE-Eを使ったセダン&ワゴンがこの新型S90&V90。いやはや長生きすると面白いことあるわ(笑)。

●このエレガントさ、今までのボルボと別次元!

 さてS90&V90がどれだけ本気かっつーとまずはそのビッグサイズに表れてます。全長×全幅×全高はS90が4965×1890(Rデザインは1880mm)×1445mm、V90が4935×1890×1475mmとどちらもボルボ初の4.9m台。それでいて全幅は前と変わらず、さらに面白いのはワゴンよりセダンの方が長く、ライバルのEクラスや5シリーズよりも微妙ながら長いこと! かなり張り合ってる感、出してます。

 サイズ以上にスゴいのはデザインのクオリティ! 本気で新世代プレミアム性を狙っていて、小手先のディテールにこだわったものではなく、根本的にドイツ勢に負けないノーブルさを狙ってます。

 圧倒的なのはプロポーションで、骨格はエンジン横置きのFFプラットフォームでありながら、フロントノーズが長くて、前輪がフロンバンパーギリギリの位置に。いわゆる古典的高級FR車の優雅さを出していて、これぞザ・クラシック。デザイナー自身、寸法比を50年代のロールスロイスになぞらえているから面白い。誤解を恐れずに言えば、北欧のロールスロイスを狙ってるわけですな。

 ディテールも優雅の一言。中でもエレガントなのはフロントのヘッドライトからリアのテールライトまで一線に貫かれたサイドの2本のプレスライン。これがいわゆる高級ボート的な流れるラインで非常に上品。

 さらにワゴンのV90で特長的なのは、今回からリアデザインが露骨に寝かせたスポーティ路線になっているところで、今までの実用最優先の絶壁リアエンドはなんだったの? ってなカタチ。

 サイドの豊潤なら膨らみもアメリカンな力強さともドイツ的な威圧感とも違って繊細。さらにフロントマスクにはボルボらしい湾曲した横長グリルと、北欧神話に出てくる雷神のハンマーを模したLEDヘッドライトが備わり、まさしく北欧のロールスロイスたる風格。

 まあ、上手いこと新しい北欧プレミアムテイストを作り上げたもんですよ。いい料理人が、上手にドイツなど欧州料理の骨太さを抑えつつ、シンプルで美しい北欧料理を作り上げたかのよう。伝わりますかねこの喩え(笑)

●ジェレミー・クラークソンも目を見張るインテリア

 かたやエクステリア以上に優美なのがインテリア! 辛口コメントで知られる英国元トップギアのメインキャスター、ジェレミー・クラークソンが「ベストインテリア」と言ったとか言わないとかで、なにがスゴいってまずはスウェーデンっぽいマテリアル。

 ほどよい光沢のクロームメッキパーツもいいけど、素材感を活かした無垢っぽい仕上げのウッドパネルはまさに北欧風。どことなく化学調味料を一切使わない身体にいいオーガニック料理を食べてるかのようです。しかもそれを優美な曲線で切り取ってあるわけで。

 一方、ボルボ自慢のタテ型iPadサイズのセンターディスプレイもXC90同様に完備。おかげでエアコン、オーディオ関係のスイッチや車両設定スイッチを画期的に減らせたわけで下世話さ一切ナシ。それでいてディスプレイ両脇のエアインテークには、XCからあえて変えた縦長デザイン採用。これもエレガントです。

 さらに細かいこと言うとタッチパネル自体、iPhone系とは全く違う赤外線方式採用だから、分厚い手袋をしたまま使えるメリット付き。ここでも北欧イズム主張してます。

 一方、安全性は変わらぬボルボ自慢の部分で4つの世界初を含む15の先進安全技術を装備。XC90同様自動ブレーキこと新シティセーフティやら右折時対向車検知機能やら歩行者だけでなく、自転車からエゾジカなど大型動物検知機能、道路逸脱事故時もケアするランオフロードプロテクションを全車標準装備。

 大型動物との衝突なんて、正直北海道でも行かない限りまずは関係なさそうだけど、そこまで考えてあるのがボルボよね。

●伝統のドイツの濃厚走り味か、新時代の世界トップレベルの美しさ&安全か、アナタはどっち?

 最後になっちゃったけど、去年登場のXC90から一新したのが走り味よ。これまでボルボは骨格がフォード車と一緒だったりしたから、どうしても繊細な部分がスポイルされ、ダルになりがちだったけどこの世代からそんなことナシ。

 確かに骨格はフロント重めのFF横置きレイアウト。それだけにFRレイアウトのメルセデスやBMWほど絶妙に路面状況を伝えるステアリングフィールはありません。ただし、ステアリングの剛性感やトレース性は匹敵するレベルで運転中の路面を切ってる感も十分。

 それと十分パワフルなのは2リッター直4以上の排気量&気筒数のエンジンは作らないと決めた新世代パワートレインのDRIVE-Eよ。
 S90&V90は254ps&350Nmのガソリンターボ「T5」と、320ps&400Nmのガソリンターボ&スーパーチャージャーの「T6」、320ps&400Nmのプラグインハイブリッド「T8」が選べ、どれも最新型8ATを組み合わされる。それによりざっくり600万円代中盤から800円代中盤まで値段が変わるんだけど、個人的にはT5で十分かと思いました。

 これまたV6エンジンや直6エンジンも搭載可能なメルセデス、BMWに比べ、微妙なねっとり感、気持ち良さで劣ります。しかしもはやパワー感や静かさは2リッター直4+過給器もしくはモーターで十分。個人的にはもうちょい燃費がいいと良いけど、軽くても1.8トンレベルの重いロングボディを考えると悪くない。

 というか、正直冷静に比べちゃうと走りの濃厚さや力強さは今だドイツプレミアム勢に分があるんです。メルセデスならではの重厚感、BMWならではのスポーティさにはなかなか他社がカンタンに踏み入れられないのも事実。

 しかし、今やボルボは世界トップクラスの美しさと安全を備えるプレミアムブランドになったんです。路線は違えど、ドイツ勢と比べて申し分のない総合力を備えつつあると言っていい。ま、ドイツ家具と北欧家具、どっちも悪くないし、買う人の趣味次第! って感じですか(笑)。

【ギャラリー】VOLVO V90 S90 (140枚)


■ボルボ・カー・ジャパン 公式サイト