photo by はむぱん

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 次の“東芝”はどこだ?我々ビジネスパーソンは日々、さまざまなニュースを目にする。そのなかには粉飾決算、企業不祥事などショッキングなものも多く、明日は我が社か、我が身かと不安に思う人も少なくないだろう。

 3月12日に発売された『東大式 スゴイ[決算書の読み方]』では、現役東大生の著者、大熊将八氏がネットに公開されている有価証券報告書を読むだけでわかる大企業の”意外な一面”や、自分の会社が将来どうなるのか分析するためのノウハウを披露。ビジネスパーソンはもちろん、就活生にも有益な一冊だ。

 今回はその大反響の一冊から冒頭の「はじめに」の部分を、一部加筆のうえで特別に公開。今、なぜ決算書を読む力が求められるのか? 著者の鋭い視点でその理由を端的に説明しています。

◆過去最多の企業不祥事

 企業不祥事および企業倫理が問題となる事例が後を断たない。2016年はシャープの3500億円にものぼる偶発債務の発覚に始まり、三菱自動車やスズキ自動車の燃費不正、ピーシー・デポによる高齢者への高額請求問題、電通の広告費水増し請求と従業員過労死問題が紛糾した。

 DeNAの買収子会社による著作権侵害が野放しにされたメディア運営も大いに話題になったし、昨年末から、2015年に不適切会計で問題になった東芝が、突然買収子会社に対する巨額の減損損失を計上する恐れが発覚して株主を震撼させた。その総額は7000億円を超え、会社が解体する危機に瀕している。

 政府は2015年6月から成長戦略の柱として「コーポレート・ガバナンスの強化」を掲げ、適切な企業統治が行われることが企業の成長ひいては国家の成長に貢献するというビジョンを打ち出したが、まだまだ、実態が追いついておらず、日本企業は過渡期にあると言える。数字で見ても、企業による不適切な会計・経理の開示件数が過去最多(東京商工リサーチ調べ)となっている。 軽微な粉飾もあるが、会社を倒産させるものも多々ある。

 自分が勤めている会社、これから勤めようという会社でこのような事態が起きてしまうと、大惨事だ。経営破綻してしまえば、それまでどんなに優良企業と呼ばれていたところでも社員のクビを切るし、そうなったらまともな退職金も与えられない。就職ランキングで必ず上位にあったJALの事例を見ても明らかだ。

◆メディアやアナリストが機能しない理由

 ところで、上にあげた不祥事は、なぜもっと早く明るみに出て、報じられることがなかったのだろうか?それは、企業について取材・分析して世の中に伝える役割を担っている経済メディアや、顧客向けに企業情報を配信していく証券会社がそれぞれに欠陥を抱えているためである。

 まず、経済メディアは、企業に対して独立的な立場で論じなければいけないのに企業からの広告収入に経営が支えられている、という大きな矛盾を孕んでいる。「広告と編集の分離」という原則があるものの、大手経済新聞が東芝や電通の不祥事を余り積極的に報じられなかった例を見るにつけ、それが少なくとも部分的には建前であることが伺い知れる。また、大手雑誌・新聞メディア自体が業界の縮小というトレンドに飲み込まれつつある。それによって、コストがかかる、深く1つの事件を掘り下げる調査報道よりも低コストな記事を大量生産する方向に少しずつシフトしている。

 昨年はDeNAやサイバーエージェントなどのIT企業が運営する「キュレーションメディア」が、他の書き手のコンテンツをパクることを推奨して安価なライターに記事を大量生産させていたことが問題になったが、記事の粗製乱造は多かれ少なかれ伝統的メディアでも起きつつあることだ。私の友人の元経済記者は、1週間に何本記事を書けという「ノルマ」を課せられ、ひねり出すように記事を執筆していたそうだ。これでは、質が高い、深い追及はできない。