脳の活性化「炭水化物だけ」はNG、カギは朝食にあり

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だるくてぼんやり、なんだか仕事がはかどらない……。そのまま放置していると、取り返しのつかない結果に!? 食事、運動、睡眠を見直して、健康な脳と心身を取り戻そう。

■炭水化物は脳のエネルギー源

暑い時期は食欲が落ち、だるくなります。なぜ「夏バテ」が起きるのでしょうか。

人は恒温動物であり、体温を一定に保つための体温調節機能がついています。外気温が上がると、まず皮膚の血管を拡張して放熱し、次に発汗して気化熱で体を冷やします。

その結果、血液から水分と塩分が失われ、血液成分の濃度が上がり、血液の循環が悪くなります。すると内臓の血液が減り、胃液の分泌量が落ち、胃の機能が下がるため、食欲がなくなり、身体はエネルギー欠乏状態になります。

脳の重さは身体全体の2%程度しかありませんが、摂取カロリーの20〜30%を消費します。ですから、脳もエネルギー欠乏を起こし、頭がぼーっとしてくるのです。

脳を除く身体は、炭水化物、脂肪、タンパク質のいずれもエネルギーにすることができますが、脳がエネルギーにできるものは、ブドウ糖(グルコース)だけです。また身体はエネルギーを貯蔵することができますが、脳は貯蔵できません。ですので、ブドウ糖の量が減れば、脳の機能は落ちていきます。

ブドウ糖は炭水化物や糖分を分解してつくられるため、栄養が欠乏した脳は、甘いものや、うどんやそうめんのような炭水化物を欲しがるのです。ですから、夏バテしたときには、水分と塩分、炭水化物や糖分を摂る必要があります。

しかし、炭水化物ばかり摂っていてはいけません。脳のパフォーマンスを高めるためには、タンパク質、ビタミン、不飽和脂肪酸であるDHAが必要です。

脳とは神経細胞の巨大なネットワークです。脳は外側から、「知(思考)」をつかさどる前頭葉、「情(感情)」をつかさどる大脳辺縁系、「意(食欲や性欲)」をつかさどる視床下部があり、視床下部の中心には、「A10(エーテン)細胞核」があります。A10細胞核は1万4000の細胞からなり、大脳辺縁系や前頭葉に神経繊維を伸ばし、そこからシナプスを通じてドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質を放出することによって情報の伝達を行います。

ドーパミンは快感ややる気をもたらし、学習能力や運動能力、記憶力を高めます。セロトニンは精神の安定と安らぎをもたらし、睡眠の質を高めます。ドーパミンが不足すると認知症の原因となり、セロトニンが不足するとうつ病の原因になるといわれています。

この重要な神経伝達物質の原料となるのは「アミノ酸」です。人間の身体をつくる20種類のアミノ酸のうち、11種類は体内で生成されますが、トリプトファン、リジンなどの9種類は食物からしか摂れません。これらは「必須アミノ酸」と呼ばれ、タンパク質を分解してつくられます。脳の神経伝達のためには、タンパク質が必須なのです。

タンパク質が多く含まれるのは肉、魚、大豆、乳製品です。十分な神経伝達物質を生成するには、体重1キログラムに対して1日約1グラムのタンパク質が必要だといわれています。

■朝食バランスで夜まで脳を活性化

脳を活性化するためには、良質な脂肪を摂ることも欠かせません。最も効果が高いものは、青魚やマグロなどの魚油に多く含まれるDHAやEPAです。DHAは、脳にダメージを与える有害物質を防ぐ「血液脳関門」というフィルターを通過して脳内に入ることができる、唯一の脂肪酸です。血液から脳に移行し、細胞膜に作用して脳細胞を柔軟にします。DHAは脳の記憶装置である「海馬」に特に多く含まれ、これを増やすことは記憶力や学習力を増すのに非常に効果があります。

DHAは低温でも固まらない不飽和脂肪酸であり、サラサラしているのが特徴です。常温で固まってしまう動物の脂は、動脈硬化を促進する作用もあるので、体によくありません。肉は脂身のないものを食べ、脂は魚から摂るのが基本です。

では、おさらいです。脳のシナプスを繋いで脳を活性状態にするために必要なのは、タンパク質とビタミンとDHA。脳は一度活性化すれば1日状態を維持できますので、これらは1日に1回摂取すれば大丈夫です。そして脳のエネルギーとして必要なのが、炭水化物です。

私のお勧めは、朝食でそのすべてをバランスよく摂取し、毎朝、脳を活性状態にすることです。朝食を摂らないと脳のパフォーマンスが落ちることがわかっています。毎朝、バランスよく摂るのが難しい人は、サプリメントで補ってもよいでしょう。

昼食はご飯一膳分の炭水化物を摂るぐらいで十分。夕食は体重の増減に気を付けて、好きなものを食べたらよいでしょう。ただし「ご飯代わりにビールだけ」はダメですよ。

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阿部博幸
アベ・腫瘍内科・クリニック 理事長。医学博士。トーマス・ジェファーソン大学客員教授。1964年、札幌医科大学卒。88年、医療法人社団博心厚生会を設立。九段クリニック名誉院長、九段クリニック水戸理事長。

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(嶺 竜一=構成 中川原 透=イラストレーション 教えてくれる人:アベ・腫瘍内科・クリニック 理事長 阿部博幸)