試合終了間際に冷静にPKを決めた小林。チームに貴重な勝点1をもたらした。(C)Getty Images

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[ACL・3節]広州恒大1-1川崎/3月14日/広州天河
 
 0-1で試合は進み、誰もが敗戦を覚悟するなか、後半アディショナルタイムにドラマが待っていた。
 
 相手のハンドで得たPKを小林悠がゴール中央に決めて、土壇場で同点に追いついたのだ。小林がど真ん中というコースを選んだ理由は、蹴る直前に相手選手からある言葉を投げかけられたからだという。
 
 時間は90+4分だった。クリアを焦った相手選手がペナルティエリア内でハンドを犯す。この結果PKが宣告され、PKスポットには小林が立っていた。広州恒大の選手はこの判定に激昂。審判団に激しく詰め寄り、物々しい雰囲気が漂った。周囲は万が一の確率で判定がひっくり返る可能性を危惧しつつ、祈りながら抗議の行方を見守っていたが、小林は冷静だったという。
 
「ノボリ(登里)が軸足を滑らせないようにとか言いに来たんですが『うるせー』っていう感じでした」
 
 また、「最初は右に蹴ろうかなと」と思っていた小林に相手選手が声を掛けてきたのだという。
 
「ひとりの中国の選手が来て英語で『右に蹴るんだろう』と言ってきて。次の選手が来て今度は『左だろ』と言われ」その結果、小林は「じゃあ真ん中に蹴ろう」と決断したという。
 
 あの場面、もし最初に考えていた右方向に蹴っていたとすると、相手GKも同じ方向に飛んでいたため防がれていたかもしれない。そういう意味で、PKを成功させた影の立役者は小林に囁いたふたりの中国人選手と言ってもいいのかもしれない。
 
 そしてもちろん、緊迫した場面で冷静さを保ち、チームに貴重な勝点1をもたらした小林の強心臓ぶりはマン・オブ・ザ・マッチとして讃えられてもおかしくはないものだった。
 
 PKを見守るこちらが武者震いしていたのにもかかわらず、小林は「何ていうんですかね。いい感じで抜けてて。全然ガチガチにもならなかった。嫌な時間というか、すごく相手は時間を稼いでいましたが、良い意味での鈍感力でした」と話し、平常心を保っていたようだ。
 
 決めて当たり前のPKは、大一番で成功させるのは難しいものである。そのPKを冷静に沈めた小林がチームを救った。
 
取材・文:江藤高志(川崎フットボールアディクト編集長)