【ライターコラムfromG大阪】東口順昭、魂のセーブをチームの力に

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 明治安田生命J1リーグ第3節のFC東京戦。アデミウソン、倉田秋のゴールで2点をリードしたガンバ大阪は79分、今野泰幸の自陣ペナルティエリア内でのプレーがファウルの判定となり、PKを与えてしまう。キッカーはFC東京の新エース、大久保嘉人。彼にとっても移籍後初ゴールで流れを変えたいシーンだった。

 その直前、判定に対する異議によりイエローカードを提示されていたGK東口順昭だったが、ゴールマウスに立ったその顔は気迫に満ちていた。自身を落ち着けるかのように、セットされたボールを見据え、両手を広げて一呼吸を置いて気持ちを集中させる。その直後、大久保がゴール左下をめがけて右足で蹴ったボールを両手で弾き出すと、再びこぼれ球につめた大久保の左足でのシュートにも体を張る。その一連の動きの中で大久保のヒザが自身の左頬を直撃してもなお、その目は最後までボールの行方を見つめ、それがゴールマウスから外れたことを見届て、その場にうずくまった。顔には鼻血が流れていた。

「時間帯的にも、スコアとしても、決められたら厳しくなる状況で、プロになって初めてPKを止められた。これでようやく1つ、自分の殻を破れた。今日は立ち上がりからフィールドのみんなも体を張って戦っていたし、シュートコースも限定してくれていた。それに自分も続こうという思いだった」

 試合後、ミックスゾーンに現れた東口は左頬を大きく腫らしながらも、充実の表情を魅せた。

 ガンバ大阪で迎える4年目のシーズンを始めるにあたり、開幕前には「もう1ランク上の自分になる」ことを目標に据えた。昨季を振り返り「ガンバに加入した中では一番不甲斐ない結果」だと感じていたからこそ、敢えて自分自身にハッパをかけた。 

「特に昨年の前半戦はイージーな失点も続いたし、それによって自分を追い込んでしまった感もあり、なかなか自分のイメージするプレーができなかった。かつ、日本代表との行き来もあり、でも、代表では試合に起用してもらえないというジレンマの中でチームでも安定したプレーを発揮できなかったというか。常にいっぱいいっぱいで、冷静にいろんなことを判断できないことが多かった。その反省は必ず今季につなげたいし、ここからさらに1ステップ上の選手になるためにいろんなことにチャレンジしながら自分を高めていきたい」

 そのために取り入れたのが有酸素トレーニングだ。昨年末、天皇杯準々決勝を迎えるまでの時間にその必要性を痛感した彼は、今年もスタートからそれを自身に取り入れてきた。いや、正確には、今季は昨年末に負ったケガのリハビリからのスタートになったため、戦列復帰を果たして以降の話だが、AFCチャンピオンズリーグとJリーグを並行して戦うハードスケジュールの中でも必要なことからは目をそらさず、自分に甘えを許すことはなかった。

 その中で魅せた、FC東京戦での渾身のセーブ。この東口の気迫に背中を押されたチームは、その後、1点を追加して3−0と完封勝利を挙げる。残念ながら、その東口は左頬骨骨折と判断され、全治約1カ月の見込みと診断されたが、それでも彼が魅せた気迫、魂のセーブと、全員で掴み取った今季初の完封勝利は、目に見えない力としてチームに宿り、ここからの戦いを後押しするものになったはずだ。もちろん、東口自身にとっても。

文=高村美砂