バンコクで今一番楽しみたいのはビールだ。(Photo by BREW Beers&Ciders)

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 バンコクのクラフトビールパブの人気が止まらない。

 タイはアルコール飲料の規制が厳しく、メディアではビールそのものさえ映せない。また、販売に関しても小売りは昼の11時から14時、夕方17時から深夜0時まで。ビールの販促には不利な環境しかないにも関わらず、である。

 キリンがまとめたビール消費量の調査によれば、2015年度でタイは4.8%増。188.1万キロリットルで世界20位と前年22位からランクアップしている。東南アジアでは383.2万キロリットルで9位にランクインしているベトナムが7.7%増でトップではあるものの、酒税がタイは高いこともありビールが好まれなかった背景もある中、この数年の伸びはかなり大きなものだ。(参照:「キリンビール大学」レポート 2015年 世界主要国のビール消費量)

 その火付け役となったのが「HOBS」というパブ・レストランである。実業家クリス・フー氏が立ち上げたパブで、タイで最もビールの取り扱い点数が多いのではないかと言われるほど。この成功により、氏は「BREW Beers&Ciders」をオープン。今ではHOBSより大勢のタイ人、外国人客が訪れている。

 クリス氏がそもそもHOBSを始めたのはある大きな失敗からだったという。

◆ビール文化を広めるために開店

「HOBS以前はベルギービールを輸入する会社をやっていました。2004年ごろです。ところが、これがなかなか売れなかったんです」(ビアパブ「HOBS」オーナー、クリス・フー氏)

 ベルギービールは国土や人口から見ても醸造所やオリジナルのビールの種類が多いとされ、2016年にはユネスコの無形文化遺産登録されている。しかし、当時のタイではまったく売れなかった。

 普通、商品が売れなかった場合、取り扱いをやめるなり、ほかの商品を探す。しかし、クリス氏はベルギービールの味わいに自信があり、タイ人にも理解できると踏んでいた。

「売れなかったのは商品が悪いのではなく、ベルギービール、あるいはクラフトビールに対する理解がないせい」と考え、ビール文化を根付かせるため、クラフトビールを知ってもらう機会として2007年にHOBSを始めたのだ。ビールの種類だけでなく、おいしい料理もあり内装にも凝っている。まずはクラフトビールやベルギービールを体感してもらうことが目的だった。

 そして、その成功もあって、ネクストブランドとして「BREW Beers&Ciders」を立ち上げる。この店は2014年5月末のCNNによる『ビール通が選ぶ、アジアのベストバー10選』のうちのひとつに選ばれている。こういった記事によってどれくらい来客数が変化してのかを聞いてみた。

◆6:4でタイ人客が多い

「実はこの記事によってどれほどの集客があったのか把握していません。すでにたくさんの方がBREWに来てくださっていますから。外国人も多いのですが、なによりもタイ人が多いですね。20代から40代のかなり広い年齢層が見受けられます」

 HOBS当初は3:7でタイ人が少なかったが、徐々に半分くらいにまでなり、BREWでは6:4でタイ人の方が多いのだとか。現在バンコクに3店舗となった「BREW Beers&Ciders」はビールだけでなく、サイダー(元はリンゴ酒だがここでは果実系の炭酸酒)も扱う。そんなこともあってタイ人女性だけのグループもいるのは10年以上前のタイと比べると驚くべき変化だ。

 富裕層向けのバーが集まるトンロー通りにある商業施設「Seen Space13」内にあるBREWは中庭のビアガーデンのような雰囲気があり、特に人気がある。平日であってもディナータイムの直後くらいから運がよくなければ座れないほどの賑わいだ。誰もが実に楽しそうにビールを傾けている。この雰囲気の中に入れば自ずとビールを飲むことが楽しくなって、ファンになることは間違いない。

「BREW Beers&Ciders」、そしてHOBS、そのほかにもバンコクにはたくさんの名物クラフトビール・パブが存在する。特に欧米系のクラフトビールは「東京で飲むよりも雰囲気がよく安い」という人もいる。バンコク旅行の際にはぜひこういったビールを楽しんでもらいたい。

<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NaturalNENEAM)取材協力:「BREW Beers&Ciders」>