ヤバイぞ、アジア最終予選4〜杉山茂樹×浅田真樹(前編)

 4カ月の中断期間を経て、ロシアW杯アジア最終予選が再開。日本は3月23日にアウェーでUAEと、28日はホームでタイと対戦する。

 5試合で折り返しを迎えた現時点でのグループBの順位は、1位サウジアラビア(勝ち点10)、2位日本(10)、3位オーストラリア(9)、4位UAE(9)、5位イラク(3)、6位タイ(1)。最終的に1、2位はW杯出場権を獲得。3位はプレーオフへと回る。はたして日本は混戦を抜け出すことができるのか、それとも……。昨年11月に続いて、サッカーライター杉山茂樹氏と浅田真樹氏に今後の戦いを展望してもらった。


11月のサウジアラビア戦では先発を外れた本田圭佑浅田 去年11月、サウジアラビアに勝ったことで出場権獲得の2位に入り、ひと安心というムードも漂っているけど、あらためて順位を見ると、やっぱり接戦ですね。しかも3カ国で争っているのであれば、最悪でもプレーオフ進出は保証されるわけだけど、4カ国の争いだから、そこからこぼれる可能性も残している。

杉山 上位4カ国は団子状態で、その直接対決の勝ち負けはもちろん重要になるけど、逆に残りのイラク、タイ相手に取りこぼしたチームは脱落していく。特にそこそこ力のあるイラクは要注意で、日本はイラクとのアウェー戦を残しているのがひとつのポイントです。

 浅田 タイにしてもホームではオーストラリアに引き分けるなど、それほど弱くないというところを示しています。さすがにアウェー戦になるとそんなに怖い相手ではないけど、タイホームの試合を残している国は油断ができないと思います。日本はタイでの試合にはもう勝っているので、その点は安心ですね。ちょうど日本がUAEと戦っている裏では、サウジアラビアがタイに乗り込んでいて、足元をすくわれる可能性はある。タイに取りこぼす国が出てくるのを期待するというのも、若干寂しい話ですけど(笑)。

杉山 さすがに日本がホームでタイに負けるのは論外というか、普通に考えたらあり得ないでしょう。ただ、それも次のUAE戦次第のところがある。仮にUAEと引き分けたり負けたりしていたら、次のタイ戦は絶対に勝たなければいけない試合になる。絶対に勝たなきゃいけない試合の日本って、メンタル的にもカチカチになるでしょう。それが苦戦の原因になる。

 その意味でも再開初戦のUAE戦がすべて。今回の予選のハイライトといってもいい一戦になります。現状は勝ち点1差で、負ければ少なくともUAEに先を越され、明らかに4位が見えてくる。旗色は思いっきり悪くなりますよね。ここで引き分けだと、まだ泥沼状態が続くわけだけど、UAEに対しては勝ち越せなかったという話になる。

浅田 後半戦のスタートという意味で重要なのは当たり前のことだとしても、順位表的にも大きなヤマとなる試合ですね。次のタイ戦はそれほど心配する必要はないと思うんです。対戦した5カ国の中で、タイだけは日本に対して過剰にリスペクトしているようなところがあるし、この寒い時期に日本に来て試合をするのも不利です。逆にUAEに勝って、タイ戦も含めて勝ち点6を得ると、UAEは実質、蹴落とすに近い状況になることもあって、何となく2位が見えてくる。

杉山 9月の第1戦でもそうだったけど、日本はUAEが普通に戦ってきたほうが怖いと思いますね。UAEが守りを固めてカウンターを狙い、日本がボールを6割方支配するというゲームになると、UAEの魅力は出るかもしれないけど、日本は楽になる。それよりもUAEがガチッと攻めてきたほうが嫌だと思います。

浅田 でもUAEは勝ち点差を考えても引き分けでは苦しいわけで、ましてホームなんだからできれば勝ちたい。日本ホームの試合での戦い方を見ても、そんなに引いてこないでしょう。ある程度がっぷり組んで、技術には自信を持っているチームだと思うので、ちゃんとつないで攻めてくる。日本ホームの試合も、最終的に1-2とリードしてからはちょっと守りましたけど、それまではわりとノーマルに戦っていた。今回はそのときよりモチベーションも高いでしょう。

 あと、場所的に中東はヨーロッパに近いので、そこのアドバンテージを生かしたいですよね。3月はまだ日本のリーグが始まったばかりで、国内組のコンディションはどうやったって上がってない。コンディション的にも海外組に頑張ってもらわなきゃいけない試合になる。これだけ海外組が多くなっているのだから、そこは腕の見せどころでしょう。

杉山 いずれにしても日本は短い間に調整しなきゃいけない。4カ月ぶりの試合なのに、アウェー戦で日本では合宿を組めないわけですから、そのあたりのハリルホジッチの腹づもりはどうなのか。メンバーは11月のサウジアラビア戦のメンバーが中心ということになってくるんだと思うけど、誰を選ぶのかは結構大きな問題です。今回の最大の焦点は、本田圭佑を選ぶのか選ばないのか。

浅田 選ぶことは選ぶけど、使わないという可能性もありますよね。

杉山 そうかな。僕は選ばないと思うな。むしろそのほうがやりやすいと思う。そもそも論になるけど、僕は海外組を優先するというハリルホジッチの考え方にあまり賛成していないところがあります。どこにいようが、J2にいようが、いいものはいいわけだし、試合にあまり出てなくたっていい。代表チームというのはクラブチームの延長でやっているわけではないのだから、監督の新しいコンセプト、戦術があっていいし、自分のコンセプトに合う人、合わない人という判断があってもいい。

 ただ、それにしても本田の場合は出なさすぎだし、しかも活躍の場を外に求めて試合に出るという努力もしていない。本田は選ばれなくていいと思ってミランのベンチに座っているはずだし、厳しい言い方をすれば、それはサッカープレーヤーとして失格だと思う。そういう意味において、今回、本田を外してもそんなに世論はビックリしないでしょう。そういう状況は、逆に言ったら監督としてはチャンス。だからまさに外し時です。で、アメリカでも行って活躍するようになったら、また呼べばいいわけですから。

浅田 普通に考えたら、去年の最後の試合で本田を先発から外して勝ってるわけだから、それをあえてまた戻す理由はないです。しかもそれ以降、イタリアではまったくと言っていいほど出てないのだから、要はどんなプレーができるのか、コンディションすら確認するすべもない。現実的にちょっと本田を使うというのは考えられないですね。

 確かに昔の本田は、所属クラブでは出てないけど、代表に来ると明らかに違うなというところを見せていた。やはりあれだけ体が強くて、キープができて、ボールが収まると、確かにあそこに本田がいるといないとでは全然チームが変わっちゃうね、という力を見せていたと思うんです。ところが最近は、ミランで出てる、出てないはさておき、明らかに日本代表で見せるパフォーマンスが低調です。それを考えても、やはり現状、本田を使う理由はないと思います。

杉山 だから、逆に言ったらいいきっかけ。ちょっとずつ力が落ちている人というのは、世の中の評価が相変わらず高かったりするので切りにくいところがあるけど、今回、「ミランでまったく出ていない」ということで、大義名分的にも通りがいい。本田は招集されないと思う理由です。

浅田 同じ理屈で、清武弘嗣は去年、セビージャでは出てなかったけど、日本代表でのパフォーマンスはよかったと思うんですよ。そういう意味では使う理屈は通っていた。

杉山 清武は、少なくともあれだけたくさんいい選手がいるセビージャの中でも「出してやってもいいよね」という気にこっちをさせるような存在だったでしょう。それほどひいき目なしに、「もうちょっと出してもいいよね、清武は」と思えた。サンパオリが自分で選んだ選手じゃなかったということもあって、追い出されちゃったけど。

浅田 実際、日本代表は清武中心のチームという感じに徐々になっていたと思います。だから今回、日本に帰ってきた清武が選ばれるのはまったくおかしい話ではないのですが、少しコンディションの面で出遅れた。第3節ではフル出場しているので大丈夫だとは思いますが、もし清武が使えなかったら相当痛いことになる。本田が使えないのはある程度、計算済みでしょうが、本田が選ばれるかどうかに続くポイントは、清武が使えるかどうかになる。

杉山 そういう意味で、UAE戦は試合そのもの以前に、まずハリルホジッチが誰を選ぶかが見もの。指揮官の資質みたいなものも、選んだ時点で50パーセントは見えるし、先発メンバーが発表された時点で70パーセント見える。
(後編につづく)

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