韓国モバイル送金「Toss」が55億円を調達 評価額は290億円以上

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米ペイパル傘下の個人間送金サービス「Venmo」は、米国で若者を中心に人気を博し、2016年の取引額は180億ドルに達した。米国外でも同様の成功を狙うペイパルは、このほど韓国版Venmoとも言える「Toss」の運営会社に対する出資を実施した。

Tossを運営する韓国のスタートアップViva Republicaは3月8日、ペイパルとシリコンバレーのVCから総額4800万ドル(約55億円)を調達したことを明らかにした。同社は評価額を公表していないが、フォーブスは2億5000万ドル(約290億円)以上と推計している。

TossはVenmoやSquare Cashをモデルに、2015年2月にリリースされた。Viva RepublicaのCEO、Seung-gun Leeによると、累計取引額は昨年末時点で30億ドルを突破し、現在の月間取引額は4億ドルを超えるという。

韓国ではこれまでにもモバイル送金サービスは存在したが、セキュリティチェックなどの手続きが煩雑で使い勝手が悪かった。「これまでは政府の規制により、フィンテック系アプリを普及させるのは困難だった」と現在35歳のLeeは話す。しかし、最近になって金融セクターで規制緩和が行われたことに加え、大手銀行19行中18行と提携できたことでTossは一気に普及したという。

「我々は前年比で14倍の成長を達成した。今後もこのペースで成長を継続すれば、韓国のモバイル金融サービスで最大手の一つになることができる」とLeeは言う。Leeの前職は歯科医で、6年前にViva Republicaを創業した。当初はメッセージングアプリや投票アプリを開発していたが、オンライン送金の煩雑さに嫌気がさした経験からTossのビジネスモデルを思い付いたという。Tossを使うと、電話番号かユーザー名を入力すればわずか3ステップで送金が完了する。

今回のラウンドをリードしたGoodwater CapitalのEric Kimは、Tossについて次のように述べている。「私が最初にViva Republicaに着目したのは2016年の初めのことだ。我々は、個人間送金サービスへの投資を検討していたが、当初はPayPalやVenmo、Braintree、Squareなどに注目していた。しかし、そこに突如としてViva Republicaが現れたのだ。Tossのリテンション率はスナップチャットよりも高かった」

Tossの累計ダウンロード数は600万に達する。Viva Republicaは、総合的な金融サービスをワンストップで提供することを目指しており、既に財務状況を管理するためのダッシュボードやクレジットスコア、マイクロレンディングなどのサービスをリリースしている。マイクロレンディングでは、ユーザーは1回当り500ドル程度の融資を受けることができる。

同社は、これまでアプリの普及を最優先に事業を展開してきたが、新規サービスを加えたことで、今後は収益の向上を図っていくという。Viva Republicaのこれまでの主な収益源は、ユーザーが1か月に5回以上送金を行った際に支払う手数料で、昨年の売上は約300万ドルだった。

Leeによると、銀行に支払う手数料を差し引くと現在は赤字だが、2018年には黒字転換ができる見込みだという。韓国で最も人気の高いメッセージングアプリ「カカオトーク」を運営するカカオもモバイル決済サービス「カカオペイ」を提供しており、競争環境は厳しくなってきている。カカオは先月、中国アリババ傘下の決済企業、アント・フィナンシャルから2億ドル(約227億円)を調達し、フィンテック部門の強化を図っている。

しかし、Leeはカカオを脅威とはみなしていない。その理由は、カカオの提携銀行数が少なく、ユーザーの利便性が劣ることだ。「ブランド力があるからといって成功する訳ではない。ペイパルが良い例だ。ペイパルは韓国でもサービスを提供しているが、利用者は少ない」と彼は言う。そのペイパルは、Tossへの出資によって韓国市場で巻き返しを図ろうとしている。