2011年11月に、『無駄なく、豊かに、美しく生きる30のこと』という書籍が出版されました。住宅・インテリア設計、住宅関連商品のデザインを専門とする著者が、「美しいものしか置かない。そう決めれば、ものは少なくなります」というメッセージを込めてまとめたもの。

そんな同書のなかから、より実践的な項目だけをセレクトし、改稿のうえ、再構成したのが『少ない予算で、毎日、心地よく美しく暮らす36の知恵』(加藤ゑみ子著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)。ここで提案されているのは、シンプルな生活だからこそ味わえる本当の豊かさ、ていねいで美しく、潤いのある、簡素な生活です。

美しさや上質さは、予算とは関係ありません。現時点におけるに美的感覚とも関係ありません。なぜなら「美しい」を基準にしようと決めた時点で、個人差はありますが、少しずつ美的感覚は磨かれていくものだからです。その過程もまた、心豊かで心地よく、なにより心ときめく美しい毎日をつくります。(「編集部より本書のご紹介」より)

きょうは初級編「自分自身の『定番』を見つける」のなかから、いくつかのポイントを引き出してみたいと思います。

便利そうなものに、惑わされない


いま、私たちの生活はずいぶん便利になっているはず。にもかかわらず、「さらに便利なもの」がどんどん売り出されてもいます。その「便利なもの」とはなにかというと、時間と手間を減らしてくれるもの。

昔の日常生活は肉体労働がすべてだったため、そこから解放してくれる家電はまさに救世主だったわけです。また、家事とは手間や時間をかけずに行うべきことだと考えられてきたため、より素早く、より手軽にと、私たちはとことん便利さに走ってきたということ。

家電にもいろいろありますが、たとえばミキサーとジューサーとスライサーが一緒になったものなど、多目的に使える家電はことさら便利に見えるかもしれません。ただ、そういうものは多くの場合、はじめはおもしろくて楽しめたとしても、なにかひとつ困ったことが起きると、使わなくなる確率も高くなります。それどころか、手入れが面倒で、かえって便利でなかったりもします。しかも多くの場合、そういうものは大きく、美しくないといいます。

一方、長い時間をかけて使われてきたものは、便利で、しかも美しいものです。だからこそ、便利そうな新しいものを見たら、買い求める前に、便利さだけでなく、「使いこなせるかどうか」をシミュレーションして見ることが必要だと著者はいいます。

そして、本当に便利そうなものであっても、色や形が気になるとしたら、手に入れるのはやめるべき。あとで飽きてしまったとき、その色や形を腹立たしく感じてしまうものだというのです。

つまり、便利さに惑わされないためには、便利ということ以外の条件を厳しくすることが大切。そして、その筆頭が美しさだということです。「便利なだけでなく、美しくなくては使わない」そう決めることから、シンプルで美しい生活がはじまるという発想。

便利そうだけれど、結局使わないで放置されがちなものは、家電に多いと著者は指摘しています。そこで、一度全部取り出して、どうするかを決めることが大切。使いやすい場所に移動して徹底的に使いこなすか、あるいは処分するか、ひとつひとつについて、どちらかを決めるということ。

なお捨てる際には、「捨ててしまったら、いざというときに困るかも」と考えてしまいがち。しかし、著者によればそんな心配は不要。たいていのことは手作業でできるので、電力不足や停電になっても大丈夫だといいます。(10ページより)

<今日から始めよう>
1. 自分の手でできることは家電に頼らない。
2. 家電を使う場合は、その便利さを徹底的に利用する。
3. 使っていないものは、処分する。
4. 手作業用の道具を吟味して選び、使いこなす技術を磨く。
5. 家電や便利グッズを使うことでどの程度時間が浮いたか、確かめてみる。
(13ページより)


衣食住のスタイルを統一する


自分のテイストがはっきりしていると、あれも好き、これも好き、と、いろいろなものを集めなくてもすむようになるもの。つまり、無駄がなくなるわけです。軸になるテイストがあって、その許容範囲で広がりがあるというのなら深みにもなるでしょう。しかしテイストの軸がないままに好みが豊富だと、せっかくの幅広い好みが、お互いに相殺し合ってしまいます。

住空間のテイストと、そこで暮らす人の衣装のテイストがかけ離れていると、住まう人も訪れる人も居心地が悪いと感じます。日常生活は、衣食住が融合されて成り立っているもの。そのため、すべてが共通のテイストで繋がっていてこそ、相乗効果が生まれて魅力的になるということです。

とはいえ、好きなものがいろいろありすぎて決められないということもあるかもしれません。そんなときは、「似合うこと」を選択の基準にすべきだといいます。服にも同じことがいえますが、住まいもまた、好みと似合うものが一致するのが理想だという考え方。

たくさんの好みを一軒の家のいろいろな部位に取り入れたら、とんでもない奇天烈なものになってしまうはず。どうしてもいろいろ試みたいのであれば、寝室、個室などプライベートな部屋に限って試してみればOK。好みと暮らしぶりが一致してはじめて、住まいは美しく感じられるわけです。そしてテイストは、統一してこそ安らげるものだということです。

住まいはもっとも身近なものでありながら、自分の「好き」と「似合う」をもっとも一致させにくいものかもしれないと著者は記しています。なぜなら、好きとか似合うなど以外の要素がたくさんありすぎて、そこに徹することができないから。

でも、だからといってまったく不可能だというわけではないそうです。まずは自分の部屋から、テイストを確立させていけばいいわけです。たとえば好きな形状と色彩の家具や小物を揃えていく。部屋が煩雑に感じられるのは、テイストに合わないものがたくさん置かれているから。でも自分のテイストと一致しているのなら、数が多くても煩雑には感じないということです。

テイストに合ったものしか置かないことに徹するには、まず多くの不純物を取り除くことが必要。不純物の多くは、実用性や便利さから選ばれたもの、そして、形態や色彩には関係のない別の価値のもの(贈答品、流行の品、思い出、旅のお土産)など。

また、自室以外の家族との共有の場(洗面、トイレ、浴室)や居間などお客様が訪れる空間では、自身のテイストを少し抑え、生活の姿勢、考え方を表現することを忘れるべきではないといいます。

住まいは、形態、色彩、素材などの好みだけでは決まらないもの。設備の種類、窓の位置や大きさ、ドアの位置、生活行為に準じた空間の構成などのすべてにおいて、「納得できる状態」をつくることが必要だというのです。つまり「どのような生活行為をとっているか」ということが、似合うかどうかの重要な決め手になってくるということ。

ちなみに著者は、旅先のホテルや知人の住まいは、空間を疑似体験するよい機会だと記しています。憧れや珍しさにとらわれることなく、そういうときこそ、「気持ちよさや快適さがどこからきているのか」を考えてみるべきだというのです。それは、自分のテイストづくりの基盤になるとも。(30ページより)

<今日から始めよう>
1. 部屋を見渡し、テイストに合わないものは取り除く(どんなに便利なもの、思い出の品であっても)。
2. 自分の服装とインテリアのテイストは合っているか? 自分の服装は自分の生活行為と合っているか? 合わないとしたら、どちらに合わせるかを決める。
3. 色の好みも同時に絞り込んでテイストと色を関連させる。このテイストにはこんな色使いなのだとインテリアグラビアや西洋絵画(印象派以降)から学ぶ。
(33ページより)



このように、すぐに応用できることばかり。このあと続く、「中級編 無駄をなくす」「上級編 美しさを目指す」にしてもそうです。だからこそ、共感できることを実行してみれば、日々の暮らしをより快適なものにできるはずです。


(印南敦史)