東芝の綱川智社長(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

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 14日、東芝は予定していた2016年4〜12月期決算発表を再延期し、さらに東京証券取引所は東芝を上場廃止になるおそれがある「監理銘柄(審査中)」に指定すると発表したが、大手信用調査会社が東芝の信用力を見直し、評価を引き下げるという。粉飾決算や原発関連の損失が膨らんで債務超過に転落し、海外で原発工事の遅れが伝えられ、追加損失計上の懸念が残る。そのうえ家電事業や半導体事業に加えて、東芝機械の切り売りも伝えられ、急速に進むグループ力の衰えも響いているようだ。

 現在、東芝の評価は同規模の上場企業に比べて大きく劣るが、中小を含めた一般企業の間では与信上の問題は小さいと判断される水準をかろうじて維持してきた。しかしさらに評価が低下すれば、東芝の信用力は中小企業の“普通”レベルさえ維持できなくなる恐れもある。「リース会社などは与信を厳しく判断するようになり、これまで東芝に対して青天井だった与信限度枠は絞られる恐れがある」(クレジット・アナリスト)といい、資金繰りの悪化に直結する公算が出てきた。

 企業の信用力評価では、すでに格付投資情報センターが東芝の長期債格付けを昨年末に投資適格のBBB-から投機的等級のBBに引き下げた。2月15日にはさらにBへと格下げしており、機関投資家は東芝の社債を見送る水準に低下。資本市場での資金調達は事実上閉ざされており、信用調査会社が評価を引き下げることに意外感はない。

 しかし影響を及ぼす対象が大きく異なる。債券格付けの場合、これに注目するのは銀行のほか、社債の買い手である生損保などの機関投資家。これに対して帝国データバンクや東京商工リサーチなど、信用調査会社の評価引き下げは東芝と取引関係にある一般企業に影響を及ぼす。たとえば10億円の取引に対して、与信枠が5億円に設定されると、残る5億円は取引時に現金での前払いを求められる。

 東芝の取引先は事業の切り売りで取引先が減っているとはいえ、国内だけで1万3600社もあるのだ。それらのすべてに影響が及ぶわけではないが、評価が下がれば東芝は無傷ではいられまい。

●取引銀行の「足並み」に乱れも

 これまでは東芝は、巨額の損失計上により債務超過や上場廃止になるかどうかが注目されてきた。極端な話、債務超過に陥っても、資金繰りさえなんとかなれば、手形の決済などに行き詰まるなどして倒産することはない。

 しかし与信枠を絞る動きが連鎖すると、東芝の手元流動性は逼迫し、資金繰りは厳しくなるのは避けられない。企業の活動にとって現金は「血液と同じ」といわれるが、東芝ほど経営が悪化した企業にとって現金の流出は、命そのものが流れ出ているのと同じだ。

 東芝の資金繰りに直接的な影響が出てくるなかで、その支援に向けて取引銀行は足並みを揃えたままでいられるかどうか。そして半導体事業の切り売りで首尾よく必要額を調達できるかどうか。東芝のように図体が大きい企業が評点を下げられてもなお、社会インフラのように一つひとつの取引が大きくなりやすい事業を続けられるかどうか。

 その前途は、まだまだ茨の道が続く。
(文=山口義正/ジャーナリスト)