DAMのボーカルで主演のターメル・ナッファール

写真拡大

 パレスチナのヒップホップグループDAMのボーカル、ターメル・ナッファールが、自身の主演映画『ジャンクション 48(原題) / Junction 48』について、ウディ・アローニ監督、女優サマール・カプティと共に、2月28日(現地時間)ニューヨークのメトログラフ・シアター開催のQ&Aで語った。

 麻薬犯罪が多発するイスラエルの都市ロード出身のパレスチナ人、カリーム(ターメル)が、イスラエル警察による抑圧を受けながらも、音楽で戦うことを決意し、政治的メッセージを歌詞に込めて、舞台で披露していく姿を描く。サマールはカリームの彼女マナールを演じた。第66回ベルリン国際映画祭パノラマ部門で観客賞を受賞している。

 製作のきっかけについて「ニューヨーク在住中に起きた同時多発テロ」だったことを明かしたアローニ監督。「事件後、僕は母国イスラエルに戻り、テロの現状やこの(中東がアメリカへの)敵意の根幹がなんであるか理解しようと、(パレスチナ自治政府の)アラファト議長などさまざまな人に会った。その後、ある日友人から『パレスチナでヒップホップをやっている若者がいる。彼の言葉とエネルギーは他の人と違って、目新しいものを感じる』と言われ、ターメルと出会ったんだ」と経緯を明かした。

 作品の内容についてターメルは「実際に起きた出来事も含まれているが、僕の人生を基にしたというよりは、僕が影響されたことを記した」という。さらに今作で映画『メッセンジャー』のオーレン・ムーヴァーマンと脚本を共同執筆したことについて、「オーレンとのタッグは、まるで大学の授業を無料で受けたような感じだった。僕が彼にアイデアやストーリーをメールで送ると、彼は(その内容を)映画構成にして送り返してくれた」と称賛した。

 今作には、あまり知られていないパレスチナの女性の姿が映し出されている。マナールを演じたサマールは「今作を鑑賞した世界中の多くの女性から『マナールの抱えている問題がさまざまな角度から描かれ共感が持てる』と感想を言われたわ。だからわたしは、このマナールが保守的なパレスチナの社会、アラブ社会の女性であることを、あえて否定したい。これまでのパレスチナの女性はか弱く、自分の声も持たず、主人に仕えるように描かれてきたけれど、今作ではマナールやカリームの母親はちゃんと自分の声を持ち、その言葉は男の世界にも影響を及ぼすの」と語った。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)