セレッソ大阪が導入 「スゴイ照明」が見せる未来予想図

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先週、セレッソ大阪とフィリップス・ライティング・ジャパンは合同で記者会見を行った。セレッソ側は舞洲グラウンドを皮切りにフィリップスの照明を導入し、将来的にはホームスタジアムにもそれを導入していきたいというものだ。

セレッソ大阪の新スタジアム2020年予想図1

セレッソ大阪の新スタジアム2020年予想図1

「サッカー」と「照明」というと今一つぴんとこない読者も多いだろう。しかし、両者の関係性は深いものである。夜間のスタジアムで何気なくナイトゲームを楽しめているのも、電光掲示板もすべてそうした技術のおかげである。そして現在、LED照明の登場でライトの世界がすごいことになっていた!!

東京五輪へ向けて熾烈な競争が開始

元々、スタジアムに照明が持ち込まれたのは半世紀以上前にさかのぼる。1952年のオスロ五輪へ向けて競技場が整備されて初めてのナイターが登場した。

1949年ベルギーと1952年オスロ五輪でのスタジアムの様子

1949年ベルギーと1952年オスロ五輪でのスタジアムの様子

それから68年後の東京五輪へ向けて照明業界は特需を狙った競争が始まっている。オリンピックへ向けたスタジアムの新設、改築に合わせて新しくLEDを導入する見通しからだ。

実際に、GEライティングが東京五輪へ向けて照明機器でサポートする声明を出しているが、フィリップスもアイリスオーヤマらと提携して五輪特需へ向けた体制作りを整えている。

さて、ここまで難しいビジネスの話が並んだが、サッカーで我々にとってどう影響があるのか、そもそも今の照明は何なのかを取材内容と合わせてお届けしよう。

Jリーグではパナソニックなど複数のメーカーの照明が現在使われている。その中には、フィリップスの文字はない。しかし、ベガルタ仙台が使っている照明機器の電球はフィリップスのものである。

これまでもフィリップスはJリーグと間接的にかかわりをもっていた。今回、セレッソが64機導入する「ArenaVision」はEURO2012などでも使われてきたものになり、うがった見方を恐れずに言えば、「ついに狼が牙をむいた」「黒船襲来」といったところだろうか。

安い?高い?LEDのメリットとは

つまり、これまでフィリップスは照明機器をスタジアムに建設する体制がなかったためライトのみを納入してきた。先週発表された新商品はLEDの照明「機器」であり、初めてスタジアムに納入するためのアイテムを打ち出してきたことになる。

フィリップスのLED照明機器新商品

フィリップスのLED照明機器新商品

従来の照明に比べてLEDというと省エネ効果があげられる。GEライティングの資料では50%の省エネ効果があるとしている。

今回のセレッソ大阪の練習場のケースでも、省エネ効果があることからランニングコストが抑えられると考えられている。

セレッソ大阪が導入する「Arena Vision」

セレッソ大阪が導入する「アリーナビジョン(Arena Vision)」

しかし、LEDの照明機器は明るく、省エネである代わりに従来の機器よりお値段が高いとのこと。つまり、これまで20台の照明機器を買う予算を10台のLEDにあててもらえば、明るさをこれまで通り確保し、ランニングコストを抑えることができる。

明るいだけじゃないLEDの魅力

次にLEDはショービジネスの世界で飛躍的な発展をしてきたことがあげられる。それは、アメリカでマドンナのようなスターのコンサートやライブの演出で使われてきたからだ。

現在はスポーツのスタジアムも試合がない時には音楽や芸能に使ってもらうこともあるだろう。現在のLED照明機器は一台一台がインターネットでつながっておりスタジアムの管理室ではボタン1つでプログラミングした演出を行うことができる。

世界でのフィリップス・ライティング導入ケース

世界でのフィリップス・ライティング導入ケース

フィリップスはこれまでキエフ・オリンピック・スタジアム(ディナモ・キエフ)、アリアンツ・アレナ(バイエルン・ミュンヘン)、アムステルダム・アレナ(アヤックス)、スタンフォード・ブリッジ(チェルシー)など多くのビッグクラブのホームスタジアムへ照明機器を導入してきた。


特にアムステルダム・アレナはアヤックスの本拠地でありながら、ライバルPSVのスポンサーから機器を導入してまでも最先端のシステムを兼ね備えるチャレンジをしている。

その中にはスタジアムでリフティングをする少年にスポットライトをあてるといったショウビジネス的な使い方もあるという。

セレッソ大阪の新スタジアム2020年予想図2

セレッソ大阪の新スタジアム2020年予想図2

また、スタジアムの外装をLEDにしてしまえば、その模様を自由に変えることができる。そのために、広告をとってきて表示することができる。スタジアム全体を電光掲示板のような使い方ができるのだ。

さて、サポーターや選手からするとLED照明機器の導入はどのようなメリットがあるのだろうか?

アウェイチームにLEDの洗礼

まずは、スタジアムの周りを明るく照らすことで犯罪抑止効果がある。特に青色など落ち着く色調は、例えば性犯罪が起きにくくなるというデータがあり夜遅くスタジアムから帰るといったシーンの安全性が確保できる。

青色LEDはちょっとホームアドバンテージな使い方もできるという。例えば、味方のロッカールームには闘争心をかきたてる赤色のLED、敵方のロッカールームには落ち着いてしまう青色のLEDを初期設定しておけば、変えない限りはそのままサブリミナル効果のようなものが生まれるのだとか。

帰りも飲食も楽々

また、ライティングを使った誘導、導線作りもセレッソのスタジアムでは行っていきたいという。実際に物販や飲食店へのナビゲーションや、出口の場所を照らすといった電光掲示板的なものを多数使うことでわかりやすい環境を作っていけるからだ。

セレッソ大阪の新スタジアム2020年予想図3

セレッソ大阪の新スタジアム2020年予想図3

どこに何があるかスタジアム内で迷うような苦労はしなくてもすみそうだし、素晴らしいスタジアムというのは良い雰囲気を作りサポーターの誇りになる。ライバルチームであるガンバ大阪が新スタジアムで話題になっただけにセレッソとしては負けられないといったところだろうか。今回の記者会見では『市民プライド」という言葉を用いて「唯一無二の経験を創り上げる」説明されていた。

選手にとってもいいことづくめ?

次に意外なことだが、現在のフィリップスの照明機器は光の角度が変えられるために「まぶしくない」「高いボールを追うことができる」といったメリットもあるという。プロ野球の世界では日中、目の下を黒く塗りつぶして光対策をしたものだが、LEDは明るくてもそうした心配はなく、反対に暗くてボールを見失うこともない。

記者会見に臨む玉田稔社長(中央)ほか

記者会見に臨む玉田稔社長(中央)ほか

このようにLED照明が見せる新しいスタジアム像を見ると考えさせられるものがある。確かに田舎の牧歌的なスタジアムにいけば、その雰囲気の良さとは別にトイレや売店付近は薄暗かったりするし、夜道が暗かったりする。日本ならばいざ知らず、海外では夜道で怖い目にあったことだってある。サッカー観戦は決して安全一辺倒ではないし、試合以外のシーンだって多い。大衆化にはこうしたいらぬ心配は排除しなければならないし、エンターテインメントとしては試合以外のことも考えなければならない。

セレッソ大阪を運営する大阪サッカークラブ株式会社代表取締役社長の玉田稔氏は言う。「3万人規模の新スタジアムの建設を予定している。新スタジアムでプレーするのが楽しみ、観るのが楽しみと思ってもらえるような場所にしたい」と。