核廃棄物処理のキュリオンにも出資、異色のVC「Lux Capital」創業者の野望

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Lux Capitalの創業者、ジョッシュ・ウルフは異色のベンチャーキャピタリストだ。彼は約20年のキャリアの大半を、他のVCが敬遠するようなリスクの高いハードテックに投資をして成功を収めてきた。「投資を実行してから3、4年後に世の中に理解してもらえればいい」と彼は話すが、ウルフの手腕を評価し、資金を委ねたいと考える投資家は多い。

Lux Capitalは2月28日、4億ドルの5号ファンドを設立したことを明らかにした。これで同社の運用額は総額10億ドルを突破した。今回のファンド設立に合わせて、Felicis Ventures 出身のRenata QuintiniがLux Capitalのパートナーに就任した。

Lux Capitalは2000年の設立以来、科学者やエンジニアなどによる冒険的なプロジェクトを投資対象としてきた。その良い例が、放射性廃棄物処理を手掛ける「キュリオン(Kurion)」だ。Lux Capital がキュリオンに出資をした2008年当時、他のVCはこぞってグリーンテクノロジーに投資をしていた。「著名な投資家らはバイオ燃料を盛んに宣伝していたが、我々はエネルギー密度の高い原子力発電こそが次世代のテクノロジーだと考えていた」とウルフは話す。

ウルフらは、原子力発電の抱える課題が放射性廃棄物の処理だとわかると、それを解決する技術を持つキュリオンに出資した。その3年後に福島第一原子力発電所事故が発生すると、キュリオンは汚染水対策を行う企業に米国企業として唯一選ばれた。「キュリオンは、業界で最も優秀な技術と人材を持っていた」とウルフは当時を振り返る。その後、キュリオンの売上高は1億5000万ドルに急増し、2016年2月にフランス企業のヴェオリアに3億5000万ドルで買収された。

グーグルの衛星事業買収のPlanet Labsにも出資

Lux Capitalのもう一つの投資事例が、2014年に出資した衛星画像分析を手掛ける「Orbital Insight」だ。Lux Capitalは、もともとメタマテリアルの可能性に目を付け、これを用いた衛星アンテナを開発する「Kymeta」に出資をしていた。Kymetaはビル・ゲイツの支援も受けている。ウルフはゲイツを通じて衛星開発ベンチャー「Planet Labs」を知り、同社に出資をした。

Planet Labsは最近、グーグルの衛星事業「Terra Bella」を買収している。ウルフは、Planet Labsへの出資がきっかけで衛星事業の可能性に気が付き、Orbital Insightに出資をしたという。

「メタマテリアルへの投資からビル・ゲイツと知り合い、衛星開発や衛星画像分析への投資へとつながるとは想像もしなかった」とウルフは話す。

最近では、ウルフの投資スタンスに共鳴し、Felicis Venturesの中心的メンバーであったRenata QuintiniがLux Capitalに参画した。彼女はFelicis時代にカミソリ定期購入サービスの「Dollar Shave Club」(ユニリーバにより買収)や、VR企業の「Survios」「Bonobos」「Planet」への投資を担当している。

Quintiniによると、昨年の大統領選挙において偽ニュースがSNS上で拡散し、選挙結果に多大な影響を及ぼしたことが転機につながったという。「AIなどの先端技術を社会の発展に活用する上で、自分が果たすべき役割について深く考えるようになった」と彼女は話す。

「フロンティア技術への投資は、一般的なVC投資と大きく異なる。投資期間が長く、開拓しなければならない領域も大きい。こうしたスタートアップの創業者たちは粗削りで、初期段階での収益にこだわらないケースが多い」とQuintiniは言う。

ウルフは、自身の仕事について次のように述べている。「我々は、野心的でありながら、謙虚さも併せ持つ必要がある。Lux Capitalは、世の中を変革する次世代技術にしか投資をしないが、どれがモノになるかは全くわからない。唯一確信を持って言えることは、我々の投資先の中でも、最も革新的な企業からそうした技術が生まれるということだ」。