WE ARE X (C)2016 PASSION PICTURES LTD.

 ロックバンド・X JAPANのドキュメント映画『WE ARE X』(配給・東宝映像事業部)が3月3日に公開された。映画は、2014年におこなわれたライブ、マジソン・スクエア・ガーデンでのYOSHIKI(Dr.Pf)の舞台裏に密着しながらX JAPANの歴史を追う。監督にスティーブン・キジャック氏を起用し、米映画の祭典『第32回サンダンス映画祭』でワールドシネマドキュメンタリー部門の最優秀編集賞を受賞した。ToshI(Vo)の洗脳、HIDEさん(Gt)、TAIJIさん(Ba)の死などバンドに様々なことが起きた。そうした軌跡をYOSHIKIの密着を通して伝えていく。X JAPANの音楽がなぜ愛されるのか、その答えが映画に刻まれている。

「私たちはなぜ生きているのか」

 ここまで波乱万丈のバンドは世界を見渡しても稀有な存在だと思う。

 X JAPANは3000万枚以上のCDを売り上げたモンスターバンド。その中心人物であるYOSHIKIに焦点を当て、2014年におこなわれた米国でのライブ、ロックの聖地マジソン・スクエア・ガーデンまでの悲劇と悲しみのストーリーを映し出す。

 「私たちはなぜ生きているのか」。そんな哲学的なメッセージから物語はスタートする。常に死に方を模索していると話すYOSHIKIからは、人が人であるべき存在証明を考えさせられてしまう。ロックバンドのドキュメンタリーではあるが、YOSHIKIという一人の人間のヒューマンドラマであった。

愛される理由

 この映画を観て、なぜX JAPANの音楽がこんなにも世界で愛されるのかという要因が、わかった気がする。そこにはもちろん音楽としての完成度の高さはもちろんではあるが、もっと深い、YOSHIKIという人間性が音にも表れていることだった。

 例えばバイオレンスなドラムサウンドとは対照的に、繊細なピアノの旋律という、2つの人格があるのではないかと思うほど幅の広さ。そこには幼少期に起きた事件が関係していた。考え方をガラッと変えさせたという父の死。その背景から生まれた、行き場のない悲しみや葛藤が、ドラムとピアノという楽器にそれぞれ反映されている。

 映画ではYOSHIKIの限界ギリギリの痛々しい姿も確認できる。そんなボロボロの身体で叩くドラミングは唯ならぬ殺気を感じる。世間では、ドラムのスピードとテクニックの凄さが評価されているが、全世界を見ればテクニック面では同レベルの人はいるだろう。しかし、ひとつ一つの音に込められた重みはどのドラマーにも出せない説得力と鬼気迫るものがある。これは誰にも真似のできない、YOSHIKIの人生の重みが反映された唯一無二のサウンド。手打ちではない魂の1打である。そこに人々は惹かれるのだ。

Toshlの葛藤と悲劇

 そして、バンドとしてはボーカルToshlの新興宗教による洗脳。それに伴い97年にバンドは解散と一つの転機を迎えた。バンドの解散はTVなどでも伝えられるほど社会現象にまでなった。Toshlの葛藤も映画では語られ、YOSHIKIは解散ライブとなった『THE LAST LIVE』を振り返り「あのステージには立ちたくなかった。家族であるファンが敵に見えた」と当時を語った言葉が印象的に響いた。その背景もYOSHIKIとToshlによる会話で、その時の心情を綴っていく。スタジオで何気なく喋っている2人の姿は、バンドメンバーとしてではなく、幼馴染に戻ったかのような和やかな雰囲気も見られた。

 解散から5カ月後、直ぐに訪れたHIDEさんの死。まさに悲劇ともいうべく事件はYOSHIKIやファンに悲しみを負わせた。関係者はHIDEさんの人柄に触れ、その温かさとYOSHIKIに取っての理解者であることが映画のシーンから垣間見れた。バンドにとってなくてはならない存在であったHIDEさん。

刻まれる答え

 そして、悲しみを乗り越え2007年10月にバンドは再結成へ向けて動き出した。2008年には『X JAPAN 攻撃再開 2008 I.V. 〜破滅に向かって〜』を東京ドームで3日間開催。その後HIDEさんの代わりにロックバンドLUNA SEAのギタリストSUGIZO(Gt.Vn)が2009年に加入。様々な悲しみを乗り越え新たなスタートを切った。

 2011年5月、元メンバーTAIJIさんの死。2010年8月に開催された野外ワンマンライブ『X JAPAN WORLD TOUR Live in YOKOHAMA 超強行突破 七転八起 〜世界に向かって〜』での共演から11カ月後に訪れた悲劇についても語るYOSHIKI。

 なぜここまで死がまとわりつくのか。なぜYOSHIKIは音楽を続けていくのか。この『WE ARE X』にはその答えが刻まれている。“生と死”という大きなテーマの中にある音楽の存在意義とは。ファンならずとも見応えのある、ヒューマンドラマとして興味深い内容に仕上がっていた。(文=村上順一)