YUKI『まばたき』

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 シーンのなかの立ち位置、周囲とのバランスなどを気持ちよく逸脱し、自分自身の表現欲求に従いながら、誰にもマネできない音楽を作り上げる。自らのキャラクターをストレートに表現することに関しては、誤解を恐れずに言えば、女性アーティストのほうが圧倒的に優れていると思う。今回は“その人にしか体現できない”独創的な音楽世界を提示し続ける女性アーティストの新作を紹介しょう。

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 まずはソロデビュー15周年を迎えたYUKIのニューアルバム『まばたき』。「さよならバイスタンダー」(TVアニメ『3月のライオン』(NHK総合)オープニングテーマ)、「tonight」(映画『グラスホッパー』主題歌)、「ポストに声を投げ入れて」(映画『ポケモン・ザ・ムービーXY&Z「ボルケニオンと機巧のマギアナ」』主題歌)を含む本作の制作は、“自分が言いたいことを歌う”という衝動からスタートしたという。“世界のその先が見てみたいんだ”と宣言する1曲目「暴れたがっている」から<哀しい歌は報われないから 歌う>という決意を示すラストの「トワイライト」まで、現在のYUKI自身の感情が驚くほどビビッドに描き込まれているのだ。女性の生き方とか権利みたいな話ではなく(もちろんそれは重要なトピックだが)、ひとりの人間としてどう在りたいか、どう生きたいかを真っ直ぐに歌う。その凛とした姿勢、それを優れたポップソングへと導くナチュラルなセンスこそが彼女の魅力なのだと改めて実感させられる。

 デビュー以来、スキャンダラスなまでに自らの濃密なキャラを全開にしてきた大森靖子の3rdアルバム『kitixxxgaia』のコンセプトは、「誰もが自分の好きな人(モノ)たちを神と崇める現状を認識しながら、“個を尊重しながら共存する”ための音楽を提示する」というもの。押し寄せる情報のなかで、それぞれの人が“これが私の神”というモノを何個も抱え、それ以外のことは“関係ねぇし”のひと言で無視している現在の社会。そのなかにおいても彼女は、すべての人を肯定しつつ、「それでも音楽でつながりたい」という切実な欲望を諦めていない。小室哲哉、の子(神聖かまってちゃん)、DAOKO、fox capture planといったジャンルを超えたゲストアーティストが参加しているのも、彼女が持っている“人をつなげる力”の賜物だろう。

 “妄想系個性派シンガーソングライター”という独自すぎるキャラクター(筆者は密かに“憑依系SSW”と名付けています)を確立している吉澤嘉代子の3rdアルバム『屋根裏獣』。初期3部作の最終章と位置付けられた本作には、彼女自身の脳内で生まれた架空のストーリーがこれまで以上に色濃く描かれている。“海辺のカフェテリアで働く女の子”(「カフェテリア」)、“屋根裏に住む居候(旅人)に恋をする少女”(「屋根裏」)、“愛するあまり亭主の首を狩り、タクシーで逃げる夫人”(「地獄タクシー」)など、ストーリーテラーとしての才能と、それを親しみやすいポップスに結びつけるスキルもさらに充実。演じるように歌うボーカリゼーション、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、横山裕章(agehasprings)、田中拡邦(MAMALAID RAG)といった名うてのミュージシャンたちによるアレンジと演奏にもぜひ注目してほしい。

 “現役看護師&シンガーソングライター”としてデビュー以来、確実に注目を集めてきた瀬川あやかの1stアルバム『SegaWanderful』。単なる話題性だけではなく、“関わる人を元気にしたり助けてあげられるということでは、歌も看護も同じ”というスタンスこそが彼女の魅力であり、その真っ直ぐでポジティブな姿勢は『SegaWanderful』(瀬川+Wonderful)とタイトルされた本作にも強く表れている。恋愛ベタの女の子を応援する「いつでも恋はカメレオン」、離れ離れになってしまった“あなた”にもう一度会いたいという思いを描いた「恋の知らせ」といったラブソングもいいが、個人的に印象に残ったのは“歌”に対する彼女自身の考えがリアルに綴られた「未熟なうた」。特に<私らしいやり方考えて 誰かの力になりたい>という一節には、シンガーソングライターとしての彼女のスタイルが集約されていると思う。

 レコード大賞ノミネート、月9ドラマの主演を張るなど、女優と歌手を高いレベルで両立している西内まりやの7thシングル『Motion』(フジテレビ系月9ドラマ『突然ですが、明日結婚します』主題歌)は、ラテン風のバウンシーなトラックと起伏に富んだメロディが絡み合うアッパーチューン。作詞はいしわたり淳治。<『愛してる』って言葉は 1000の意味があって/何を伝えているか 分かるでしょ?>というサビのフレーズは、良い意味で“上から”なキャラクターが似合う彼女の存在感ともしっかりと結びついている。セクシーなフロウを生み出すメロディと歌詞のバランスも、ちょっとハスキーな声質にぴったり。“モデル→女優→アーティスト”というキャリアを辿ってきた彼女は、やはり自分の見せ方がよくわかっている。(森朋之)