ライフハッカー[日本版]編集長の米田智彦が主宰する「クリエイティブ塾」は、編集者としてのクリエイティブマインドを育成するワークショップです。今回のゲストは、女性向け動画ファッションメディアとして圧倒的な人気がある「C CHANNEL(シーチャンネル)」のブランドプロデューサー(当時)を務めるやまざきひとみさんです。

C CHANNEL」はカワイイものに敏感な女性をターゲットに、ヘアアレンジ、ネイル、レシピなどのコンテンツを1分程度の短い動画にまとめて発信しています。スマホで観ることを想定し、縦向きの動画を配信しているところも特徴的。月間の再生数は6億6000万再生を突破し、その影響力は日本を飛び出しアジア各国にも波及しています。

今回は、そんな注目の「C CHANNEL」の立役者であるやまざきひとみさんに「C CHANNELの成功要因」についてお聞きしました。


やまざきひとみ
1984年東京生まれ。新卒でサイバーエージェント入社後、「アメーバピグ」立ち上げプロデューサー、スマートフォンコミュニティ事業部長、ママ事業部長などを担当し2015年12月より女性向け動画メディアC CHANNEL編集長を経て、プロデュース会社HINT, inc.設立。メディアプロデュースや動画制作を手がける一方、メディア関係者限定で次世代メディアを考えるオンラインサロン「ネットメディアsalon」主宰。(※講演時2016年10月当時はC CHANNELブランドプロデューサー)

動画メディアとして成功できた2つの理由


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米田:もともとサイバーエージェントでいろいろなプロジェクトやられていたと思うんですけど、どんなことをやられていたか、ちょっとかいつまんで話していただいてもいいですか。

やまざきさん:はい、まず2007年に新卒でサイバーエージェントに入社しました。そのころのサイバーエージェントはAmebaがブログで業績を伸ばしている時期で、メディア企業へ転換するべく新卒人材をプロデューサーとして育成していたんですね。そんな背景があり、入社してすぐプロデューサーの仕事を始めることになりました。


米田:1年目でですか?

やまざきさん:そうです。入社して最初の配属で、プロデューサー育成室のような部署に入りました。そのまま本当にAmeba関連事業のプロデューサーを担当し、今の言い方で言えば、グロースハックみたいなことを1年ぐらいやっていました。2年目には、だんだん成果が出るようになって、新規事業でアメーバピグ、アバター事業の立ち上げを担当したりしました。そのあと、2010年ぐらいからスマートフォンが伸び始めたので、そこでまたいくつか、アプリやゲームの立ち上げも含めて、手探りでやらせてもらっていました。

そのあと、女性向けメディア「by.S」の編集長をして、2015年にサイバーエージェントを退職した後はC CHANNELのお手伝いをしているうちに編集長をすることになりました。


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米田:C CHANNELについて、簡単に説明していただけますか?

やまざきさん:はい。C CHANNELは元LINE社の森川社長が2015年の4月に立ち上げた会社で、「女性向けの動画メディア」というコンセプトで始まりました。当初は女の子(クリッパー)を100人くらい集めて彼女たちに日常を投稿させる、いわゆる動画ブログみたいなサービスとしてスタートしました。なので、このころのC CHANNELは女の子たちが「今日はここにお茶しに来ました」みたいな動画を、動画ブログ的に投稿しているサービスだったんですね。その後1年半ほどで大きく成長し、今は月間の動画再生数が6億6000万(※注 2017年3月現在)まで伸びてきています。

米田:すごいですね。動画は、クリッパーが制作する動画と会社が制作している動画と両方あるわけですよね?

やまざきさん:そうですね。一般投稿もできるんですが、基本的にはクリッパーを中心に考えられていて、2015年の12月前後から大きく伸びました。成功の要因としては大きく分けて2点あって、まず分散型メディア路線を強化したことと、あとはコンテンツの方向性が女性向けのHow to中心になっていったというところが大きくあります。

How to動画を制作するために内部の体制を強化して、自社にスタジオも作り、そこで撮ったものをすぐに配信するというサイクルを作ったことで再生数も伸びるようになりました。

米田:スタジオで撮影するのは動画クオリティの確保のためですか?

やまざきさん:そうですね。ただ、C CHANNELの動画の大きな特徴として短い動画(1分動画)であるという点と、縦型動画を配信しているという点があります。これはスマートフォンで見ることに最適化された動画というのを強く意識しているのですが、実はその縦型動画を制作できるところがほとんどないので、自社で撮るしかなかったという背景もありました。


米田:縦型動画はスマートフォンで撮影しているんですか?

やまざきさん:最初はそういうものもありましたが、今はほとんど一眼レフカメラを縦にして撮っています。なので、C CHANNELのスタジオは見た目がかなり変わっていて、スクリーンもモニターも全部縦で、独特なセットをしていると言われますね。でも、実はそこが大きな強みになっていて、横型動画の制作会社はたくさんあるんですが、縦型動画の制作会社はあまりなく、縦型動画を作るノウハウが溜まってきて、C CHANNELでしか作れないテイストが作れるようになりました。


米田:1日どれくらい動画を制作していますか?

やまざきさん:1日平均だいたい20〜30本ですね。


米田:クリッパーの選考基準はどういうところを重要視していますか?

やまざきさん:特に大事にしているのは女性に対して女性向けの情報を伝えるのに向いている子ですね。同じかわいい子でも男性ウケするかわいさと、女性ウケするかわいさがあるので、その部分は女性の感性に響く子を大事にしていますね。


「このコンテンツが並んでいると私ってこういう人に見える」


米田:女性がシェアしたくなるコンテンツのポイントはどんなところですか?

やまざきさん:これは私、前に「by.S」っていうテキストメディアをやっていた頃から意識をしているんですが、特にFacebookに関しては、女性ってFacebookを自分のプロフィールだと思っている節があるので、自分のタイムラインに並べたくなるようなコンテンツしかシェアしないんですよ。だから、見た目がおもしろくてシェアされるコンテンツもあるんですが、女性の場合はビジュアルが大事で、「このコンテンツが並んでいると私ってこういう人に見える」という点を大事にするんですね。実は自分はこういう人物なんだよっていうことを間接アピール、というのもあると思います。だからそういうコンテンツはシェアされやすいと思いますね。


米田:ここまでの再生数を誇る最大の要因は何だと思いますか?

やまざきさん:自社で動画制作をした点はポイントだったと思います。制作数が多いので、こんなにウェブ動画を自社内で作っている会社はまだないかなと思います。


米田:ヒットした動画をいくつか見せてもらえますか?

やまざきさん:アクアネイルの動画は、世界で累計4000万回くらい再生されていると思います。自社で制作したネイル動画の中では一番ヒットしたものです。



米田:こういうアイデアは、どうやって出しているんですか?

やまざきさん:企画会議は、和気あいあいと女の子同士でやるところを大事にしていて、それこそクリッパーの女の子とか社員の女の子を、女子会風に集めて、ネットで気になったネタとか集めてブラッシュアップしていきます。そこに、女子感覚を入れるみたいなところを大事にしていますね。

その中でみんな結構ネットを見ているので、をネタとかを出しながら、それをどんどんブラッシュアップしていくというようなことをやっています。なので今日は何本出すっていうのを決めて企画会議をします。


米田:女子感覚って具体的に言うとどんな感じですか?

やまざきさん:女子って本当に正直で、撮影現場でも女の子が、「これ、すっごいかわいいですね!」って、ちょっと声のトーン上げたときはやっぱりそれはヒットするし、同じ「かわいいですね!」でも、ちょっとお世辞だなっていうときはヒットしないんですね。


米田:クリッパーになる素質を持った人を探すのはなかなか難しい気がしますが、なにか工夫されているところってありますか?

やまざきさん:とにかく数を会ってみないとわからないと思います。クリッパーに向いている子っていうのが新人種というか、いわゆるインスタグラマーでもないし、YouTuberでもない、ちょうど間ぐらいの子なんですね。で、How toをやらせるので、本当にメイクが好きとか、そういうちょっと器用で、伝えることに対して丁寧になれる姿勢がないといけないんです。おっしゃるとおりこういう素質を持った子を見つける難易度は高いです。


米田:やまざきさんの次の目標はどんなところに置いていますか?

やまざきさん:ネットメディアのコンテンツは、過渡期というか融合期にあると思っていて、私は偶然、テキストメディアと動画メディアをこの2年でぎゅっとやらせてもらったので、いわゆる業界の融合も起こっているし、みんな高い志を持ってやっているんだけど、それが最適化されてるかどうかはよくわからないんですね。日本のネットメディアが強くならないと日本も強くならないと思っているので、もっとネットメディアをいいものにしたいなというのが、思いとしてはすごく強いです。


米田:やまざきさんがまたなにか新しいことやるんじゃないかなって期待してますよ。

やまざきさん:そうですね。私、新しいことやらないと死んじゃうんです(笑)



次々と新しいことに挑戦するやまざきひとみさん。今後の活躍に期待しましょう。ライフハッカー[日本版]では、今後もクリエイティブ塾の内容をまとめて発信していきますので、次回をお楽しみに。


(聞き手/米田智彦、文/大嶋拓人、写真/神山拓生)