今回のビジネスマナーは、IT関連会社勤務の小林みずきさん(仮名・32歳)から届いた相談です。

「新卒入社で共に頑張ってきた女性の昇格が決まりました。おめでとうという気持ちはもちろんあったのですが、素直に言葉にできず、目が泳いでしまいました。相手も気にしているようで……。こういうときはどうしたらいいんでしょう」

どんなに仲が良くても、むしろ、仲がいいからこそ、相手の幸せを素直に喜べないことってあります。とっさに目が泳いでしまったという質問者さんに、共感できる人も多いのでは?これから、どういう態度をとればいいでしょうか。さっそく、鈴木真理子先生に伺ってみましょう。

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 祝福できないのは、悔しいからだけじゃない

これまで、同じペースで進んできたと思っていた同僚に、ある日突然、先を越されてしまう……。アラサーになると、そんなシチュエーションもいろいろなところで起こりますね。

こういうとき、祝福できなかった自分を「悔しさに負けた、心の狭い人間だ」と責めてしまう人も多いのですが、祝福できない本音は、悔しさだけではないのではないでしょうか。

寂しいから、今までとはふたりの関係が変わってしまうのがショックだから。そのくらい相手と一緒に過ごした時間が大好きだったから、という気持ちもあるのだと思いますよ。

胸に手を当てて、考えてみてください。本当はおめでとうと言いたかったのではないでしょうか。でも、寂しい気持ちのほうが前に出てしまって、祝福の言葉がでなかったーー。それが本音ではないでしょうか。

相談者さんは彼女をきちんと祝福できなかったことを、「相手も気づいたようだ」と気に病んでいるようですが、もともと仲がよかったのならなおさら、その気持ちを素直に伝えるべきだと思います。

職場では、彼女との付き合い方の切り替えが必要

同僚が昇格したからといって、その人の人間性が変わるわけではありません。これからもずっと、仕事で得られた最良の人間関係を大切にしてください。仕事上のアドバイスをもらったり、彼女から見習う点をこっそり観察して、マネするのも手だと思いますよ。

しかし、職場では彼女との付き合い方に切り替えが必要です。
昇格して肩書がついたのであれば、たとえ同期入社であっても、話すときには敬語を使うのがマナーです。指示を受けることがあれば「はい」で、決して、「ウン、わかったやっとく」ではありません。

また、名前の「ちゃん」付けや、ニックネームで呼ぶのもNGです。「○○さん」とさんづけするか、同期の方に役職がついたなら「○○主任」「○○プロジェクトリーダー」などと敬意を込めて呼んでください。

たまに、自分の立場を大きく見せるために、自分より格上の人を気安く呼ぶ女性を見かけます。これは、みっともないのでやめましょう。

たとえばお客様がいらしたとき、その方とは丁寧に対応して、相手を呼ぶときに「〇〇ちゃんー、お客様ですよー」と声掛けしたりする人、いませんか。
お客様に、私と彼女は同じレベルといわんばかりの態度は、第三者を巻き込んだマウンティングです。呼ばれた本人だって、決していい気分ではありません。
心が醜くなっていくと、顔もおブスになりますよ。ここは、ビジネスライクに接して、あなたの評価をあげてください。

彼女へのサポートが自分のためになる

いくら昇格したとはいえ、彼女は4月からてんてこ舞いかもしれません。昇格すれば、今以上に仕事の質と量が求められ、周りからの視線も厳しいです。ぜひあなたがフォローしてあげてください。それは会社のためでもあり、あなたのためでもあります。あなたが頑張っている姿だって、必ず評価されますよ。

チャンスの女神は、きっとあなたにも微笑むことでしょう。

くれぐれも過去の暴露話を持ち出したりのマウンティングなどせぬよう。むしろ塩を送る気持ちで。



■賢人のまとめ
今までは、お友達感覚で〇〇ちゃんと呼んでいたとしても、役職がついたらその肩書きか、〇〇さん、と敬意を込めて呼ぶのがマナー。おめでとうと言えずにごめんね、と素直な気持ちを言葉にするのもその後の関係をスムーズにするコツです。

■プロフィール

女子マナーの賢人 鈴木真理子

三井海上(現・三井住友海上)退職後、“伝える”“話す”“書く”能力を磨き、ビジネスコミュニケーションのインストラクターとして独立。セミナー、企業研修などで3万人以上に指導を行う。著書は『ズルいほど幸せな女になる40のワザ』(宝島社)のほか、近著『仕事のミスが激減する「手帳」「メモ」「ノート」術』(明日香出版社)、『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』は7万部を超えるヒットとなる。 

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