直接フリーキックから先制ゴールを奪った中村俊輔【写真:Getty Images】

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中村俊輔と川又堅碁が新天地で刻んだ初ゴール

 3月11日、明治安田生命J1リーグ第3節で大宮アルディージャを下し、今季初の白星を勝ち取ったジュビロ磐田。新加入の中村俊輔と川又堅碁がゴールを奪ったことで、チームには勢いがつきそうだ。そしてこの2人の活躍と同等の輝きを放っていたのがボランチの2人。このダブルボランチの貢献度も見逃すことはできない。(取材・文:青木務)

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 主役の活躍は、チームを勢いに乗せる。エースと目される選手が期待通りの働きを見せれば、より強固な集団へと進化を遂げるはずだ。1分1敗で大宮アルディージャ戦を迎えた磐田にとって、それは特に重要なことだった。

 この日の主役は、中村俊輔と川又堅碁だった。

 日本サッカー史上屈指の天才が新天地で刻んだ初ゴールは、直接FKによるもの。チームに活力を与えた一発以外にも、正確なキックで味方のチャンスを演出し、守備では相手を観察しながら常に適切なポジショニングを取った。高い位置から潰しに行き、後ろで身体を投げ出すことも厭わなかった。縦横無尽にピッチを走り、勝利に対する貪欲な姿勢を見せ続けた。

 開幕2試合は無得点で、ベガルタ仙台戦は決定機を決め損ねた。責任を感じる中、川又は並々ならぬ覚悟で大宮戦に臨んだ。そして、後半開始早々の47分、相手DFに圧力をかけてプレーを狂わせると、豪快に体を入れ替えて最後は冷静にゴールを陥れた。

 彼らは磐田の浮沈の鍵を握る存在で、それぞれが高いパフォーマンスを披露すれば磐田のゴール数は増え、チームが掲げる「得失点差±0」以上の成果も得られるだろう。特に今シーズンは得点力アップが大きなミッションとなっており、トップ下とCFの活躍がなければ目標達成は覚束ない。大宮戦で2人が結果を残したという事実は、今後に向けて明るい材料だ。

 そして、主役と同等の輝きを放った選手への貢献も忘れてはならないだろう。今シーズン初勝利を支えたのは、ムサエフと川辺駿のダブルボランチだった。

中村俊輔のFK弾を生んだムサエフの積極性

 NACK5スタジアムのピッチの至る所に、ムサエフがいた。それが錯覚でないほどの存在感を示した。自陣でファイトしていたかと思えば、次の瞬間には猛烈な勢いでゴールへ走り込む。一人で複数の役を担う彼の存在なくして、大宮戦の勝利はなかった。

 中村俊輔のFK弾を巻き戻すと、絶好の位置でファウルを受けたのは元ウズベキスタン代表だった。

 始動からキャンプ期間中までは、良くも悪くも“無駄のない”プレーが多かった。中盤の底でパスを受けると近くの味方に素早く預け、自身の持ち場を留守にしない。最終ラインの前で相手を食い止め、セカンドボールを回収し、すぐにパス。ここまでが彼の仕事かのようだった。

 しかし、今は隙あらば前に出て行き、攻撃を後押しする。中村俊輔がピッチの各所でボールを受けるのと同じで、ムサエフもまたあらゆる局面に顔を出している。

 新たな“相棒”とのコンビはどうなのだろうか。背番号8は英語の猛勉強中で、コミュニケーションはまだ決して円滑とは言えない。しかし、川辺は「お互いにやるべきことは頭に入っている」と問題視していない様子だ。さらに、こうも言っている。

「行く時はガンガン行ってくれるので、自分がバランスを見るようにしている。1試合目より2試合目、2試合目より3試合目と、日を追うごとに良くなっていると思う」

 ムサエフとの関係が熟成していく中、川辺のプレーも目を見張るものがあった。

試合を重ねるごとに漂ってきた得点の匂い

「チャンスの数で言ったら仙台戦は決定機が3回くらいあったけど、もっと増やしていきたい。そうすれば前線の選手もそんなに気負うことなく、『またチャンスが来る』と思ってプレーしてくれるのかなと」

 開幕2試合を終え、川辺はこう述べている。少ない決定機をモノにするのも攻撃陣の仕事だが、ゴールに近づく回数を何度も作り出すことで前線の選手の負担を軽減させたかった。

 実際に大宮戦は先制点、追加点以外にも好機はあり、背番号40が果たした役割も大きかった。10分、中盤での川辺のボール奪取をきっかけに、抜け出した太田吉彰がクロスバーをかすめるミドルを放った。53分にはクロスのこぼれをPA手前で拾い、冷静にラストパス。川又のシュートを演出した。

 1試合のシュート数も開幕戦7本、第2節が10本、第3節は12本と右肩上がりで伸びている。大宮戦も全てにゴールの可能性があったわけではないが、流れの中からフィニッシュに結びつけるシーンは過去2試合と比べて多かった。

「良かった、勝てて」

 サンフレッチェ広島から期限付き移籍3年目を迎える気鋭のMFは、開口一番、安堵感を口にした。両チーム最高の12.365kmを走り切り、23度のスプリントを見せた。数字に表れない貢献ももちろんあるが、この日の川辺の働きは数字が雄弁に物語る。

 充実の90分だったはずだが、反省と課題を口にする。

「チャンスの割には点が入っていない。決定機があったので、しっかり決め切りたかった。奪われる回数が多かったのでその分、守備に回る時間もあった。自分たちの守備がいくらいいと言っても、その時間が長ければ長いほど、精神的にもキツくなる。1点先制したから守れたけど、0-0の状況が続くと特にキツくなると思う。奪った後がすぐチャンスだったので仕方ないけど、ミスでスローインとかにしてしまうのではなく、きっちり繋いでいければもっと良かった」

 仙台戦後に語ったのが『チャンスの数』なら、大宮戦後に川辺の口から出てきたのは『フィニッシュの精度』だ。試合を重ねるごとに得点の匂いもより漂うようになっているということだろう。

中盤トライアングルの関係性向上で、さらなる攻撃の引き出しを

 大宮には昨年の天皇杯で0-5と大敗を喫したものの、J2時代の2015年からリーグ戦は4試合連続ドローだった。いずれも磐田が先制点を奪いながら、追いつかれて勝ち点1を分け合う結果に終わった。

 しかし、3月11日の磐田は違った。試合序盤にスコアを動かすと、無闇にボールを追い回さず、ブロックを作って対応。名波監督は「特に縦のスライドと中締めというのを押し出して守備を構築させた」と明かす。また「ピッチ内の温度で俊輔と川又がだいぶ後ろまで下がって来て危険なエリアを消してくれた」と前線の守備意識を称賛している。

「ラインもボックスのラインに揃えるわけではなく、まめにラインコントロールしていたので、相手も動かされた感じがあったのではないかなと」

 決して自陣ゴール前に引きこもるのではなく、ボールを奪った後の攻撃のイメージも頭に入れていた。今の磐田の武器はカウンターとサイド攻撃だ。中村俊輔を中心に落ち着いてボールを繋ぎ、相手を崩しきって得点を奪うような形は今後も模索していくが、現状の“最大値”を発揮して掴んだ勝ち点3は、チームにとって大きな原動力となる。

 勝利を積み重ねながら、新たな攻撃を肉付けしていく。そうした循環を確固たるものとするためにも、大宮戦の結果を無駄にしてはならない。

 そして、川辺とムサエフには今後も高いパフォーマンスが求められる。10番を支え、彼ら自身も攻守に輝く。中盤トライアングルの関係性が今後も深まれば、カウンターやサイド攻撃以外の引き出しも生まれるはずだ。

(取材・文:青木務)

text by 青木務