磐田に新天地を求めた中村俊輔。インタビューは開幕直後に行なった。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 横浜から磐田へのサプライズ移籍から2か月が経とうとしている。 通算12年半に渡ってプレーした古巣に別れを告げ、 名波監督の待つ新天地で戦う覚悟を固めた。サックスブルーの10番として確かな一歩を踏み出した中村俊輔が、葛藤の日々と決意の背景をストレートな言葉で語る。ファンタジスタの魂を突き動かすのは、サッカーへの変わらぬ情熱だ。
 
 【俊輔を直撃!◆曚覆屡愿弔世辰燭里? 自らの考えをどう伝えるのか?
 
――磐田の 10 番をまとって迎えたC大阪とのリーグ開幕戦では、トップ下としてフル出場を果たしました。試合後、「やりたいことの半分ぐらいしかできなかったが、現状のベス ト」と言っていましたが?
 
「チームでの仕事であり、子どもの頃から変わらず持ち続けているものであり、その『やりたいこと』の理想がまずある。一方で、今優先してやらなければいけないこともある。そのバランスや現状を考えると、決して悪くないスタートが切れたと思います。特に守備面に関しては」
 
――守備面?
 
「練習試合を積んできても、実際に自分たちの守備力と攻撃力がどれぐらいのレベルなのか、それは公式戦で蓋を開けてみないと分からないところが多々あった。だからピッチ上 で力関係を感じ取りながら、僕がファーストDFとしてボールを奪いに行くのか、後ろの態勢が整っていなければ相手の攻撃を遅らせるのか、そういった舵取りを意識していました。守備のスイッチ役。それはトップ下だからこそできる仕事でもある。その次の段階が、そこからいかにして攻撃につなげるか。より良いバランスを探っていきたい」
 
――総走行距離12.64キロは両チームを通じて1位でした。
 
「あのデータは、あくまでバロメーター。いかに連動して動くか、相手の逆を取れるか、そういった一瞬のタイミングこそ大事で、トラッキングデータは参考にすぎない。僕もどちらかと言えば、守備で追うことが多くて走らされていた。そこはむしろ反省点ですから」
 
――公式戦に臨み、一気に課題が見えたと?
 
「自分にあのポジション(トップ下)が与えられたことで、チームであり、スタイルであり、ある意味、一から作らなければいけなくなったと認識しています。そこで、いきなりたくさんの成果を上げるのは難しいけれど、ひとつ守備で確かな前進ができた。スタンドから観ていた多くの人は、もっと川又の近くでプレーしてあげろよ、と思ったかもしれません。ただ、ここで攻められたらやられるな……という展開が見えて、6番(ソウザ)と10番(山口)を自由にさせないことに神経を使った。そこを怠るとやられてしまうかもしれないと感じ取ったからです」
――そういった課題が出たことを含めて収穫だったと?
 
「同時に、自分のやりたいことがはっきり分かった。あれができる、これもできそうだな、と。それがたくさん見つかったのは、充実している証拠。もっとレベルアップできる。そう気付かせてくれる環境を与えてくれた磐田に感謝しています」
 
――昨季左膝の靭帯を傷めた影響もあり、開幕戦は約8か月ぶりのフル出場となりました。それでも、あまり疲れを感じていないと言っていましたね?
 
「本当にあっという間だった。最後にカミック(カミンスキー)がFKを蹴った時、サイドに開いて、こぼれ球を狙っていたんです。まだ時間はあるはず……と思ったところで試合終了の笛が鳴って。残り10分までは時計を確認していたけれど、そこから瞬く間に時間が過ぎていった。最後まで集中できていたから、疲れを感じなかったんだと思う。『だったら、もっと走れよ』と言われたら、その通りですね、と言うしかないですが(笑)」
 
――久々の充足感?
 
「もちろん攻撃面は物足りなかった。 ひとりで崩すタイプではないので、いかにチームとしてひとつの形にしていくのか。そこは課題ですね」

取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)
※『サッカーダイジェスト』3月23日号(3月9日発売)より転載