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●新たなCypressの船出としてロゴマークを刷新
米Cypress Semiconductorは3月13日(CET)、ドイツで開催中の「Embedded World 2017」にあわせて新しい「PSoC 6を」発表した。先立って、これに関する事前説明会が日本サイプレスにて開催されたので、その内容をご紹介したい。

○Cypress 3.0

まず説明に立った長谷川夕雄也氏(Photo01)が、ここしばらくのCypressの動向をまとめて紹介した。氏によれば今はCypress 3.0なのだという。そもそもCypressが創業当時(Cypress 1.0)は、半導体製品を顧客に提供することを価値としていたが、次いでPSoC(PSoC 1)の提供開始によって、プログラマビリティを顧客に提供することが価値となった。その後、2016年に創業者のT.J.Roger氏が退任し、後継にHassane El-Khoury氏が就いた事、さらにBroadcomのIoT事業部を買収した事で、今後はソリューションを提供することを価値とする、Cypress 3.0に進化したのだという。

このCypress 3.0を象徴するのが、新しいロゴである(Photo02)。旧来のロゴ(Photo03)は広く知られているが、今後はこの新しいロゴを使ってゆくとする。

ところでソリューションビジネスとなるとどうしても市場の絞り込みが必要になる。Cypressでは現在オートモーティブ・IoT・産業機器という3つの分野に絞り込んで製品を展開しているが、日本に関して言えば自動車が売り上げの半分を占める大きなエリアだとする。次がIoTだが、特に日本では携帯型ゲーム機が大きいという。というのは全世界の80%を占めるトップ2社が居るからで、これが特徴的だとする。また日本ではプリンタ向けも馬鹿にならないそうだ。というのはこちらも大手メーカーが多く、しかも最近はプリンタが直接無線LANやBluetoothで接続できたりするからで、このプリンタ向けは安定しており、しかもシェアも大きいとの事だった。

●次世代IoTのニーズに対応するPSoC 6
○PSoC 6

さてここから説明はJim Davis氏(Photo04)と中津浜規寛氏(Photo05)に代わり、その新生Cypressが投入するPSoC 6についての説明が行われた。

先の説明にあったが、Cypressはオートモーティブ・IoT・産業機器の3つの分野に焦点を合わせており、PSoC 6はこのうちIoT向けの製品となる。問題はこのIoT向けのマーケットが急速に成長しており、今後はよりパフォーマンスの高い製品が必要となると同社は見込んでいるようだ(Photo06)。

これに向けて、Cortex-M4コアとCortex-M0+コアのデュアルコア構成にし、さらにBluetoothを搭載したほか、TEE(Trusted Execution Environment)まで内蔵した、ある意味の全部入りがPSoC 6ということになる(Photo07)。そのPSoC 6の特徴は省電力性である。LPモードでは1.1V動作だが、ULPモードでは0.9Vに降圧して動作するため、最大動作周波数は若干落ちるものの、類を見ない省電力性が実現できる、というのが同社の説明だ。RTCと一部のRAM Retention付きのハイバネートモードでは300/600nAという非常に少ない省電力になっているとされる(Photo08)。

そのPSoC 6の内部ブロック図はこんな感じである(Photo09)。基本的にCortex-M0+コアは通信とかCapSenseの処理などを担う形で、OSの動作などを含むアプリケーション処理はCortex-M4コア側が引き受けるといった形での処理を想定しているという。ちなみにこの図ではTEEあるいはCrypto EngineなどがCortex-M0+側のAux core resourcesとして示されているが、実際には後で図が出てくるがこれらはいずれも共通のMCUサブシステム内に置かれており、なのでCortex-M4側でもTEEの動作は可能とされている。

そのTEE(Photo10)だが、これは今のところCypress独自のもので、ARMv8MのTrustZoneとは互換性が無い。これに関しては「現時点ではまだセキュリティの標準仕様がそもそも無い」(Davis氏)という話であった。ただ長期的にはARMv8MというかCortex-M23/33を利用したTrustZoneの事も検討してゆく、というやや歯切れの悪い返事であった。なおセキュリティに関しては、暗号化はAESや楕円暗号など複数種類に対応したものがハードウェアで搭載されているとの事だった。

Photo11/12が競合製品との比較である。動作周波数は競合製品と比較して十分高く、そうなるとFlashが追いつかない可能性がある。これをカバーするために8KBの命令キャッシュを搭載しているのも、このクラスの製品としてはちょっと珍しい。またBluetooth 5.0に完全準拠したRFを搭載しているのも特徴で、その割りにGPIOピンが多いのも他との差別化要因ともなっている。もちろんPSoCでお馴染みの「Programmable Analog Block/Digital Block」や、「SCB(Serial Communication Block)」も搭載されている。他に、PSoC Creatorの中からピンの配置を自由に変えられる特徴もそのまま受け継いでおり、例えば開発中にピンの位置に問題があった、なんて場合でもPSoC 6側でそれに対応することでボードのRe-spinをしないで済ませる、なんて事も可能である。

また開発キットとしてはArduino Shieldを利用できるBLE Pioneer Kitが用意されるほか、E-inkディスプレイも新たにラインアップされるとの事だ(Photo13)。実際に使ってみるとさすがにE-inkは動作がちょっと遅いが、その分省電力ということもあり、PSoC 6向けとしては適切かもしれない。もちろん既存のArduino ShiledベースのTFTなりセグメントディスプレイなりを使うことも可能だから、別にE-inkのディスプレイが必要という訳ではない。

このPSoC 6、量産は2017年第4四半期を予定しており、サンプルは3月14日から順次リリースするとの事だ(Photo15)。

説明は以上だが、質疑応答を含めてもう少し補足を。まず内部構成だが当初はBT 5.0 RFを搭載したPSoC 63(Photo16)と、BT 5.0を含まないPSoC 62(Photo17)の2つがラインアップされる。良く見るとPSoC 62はBT 5.0の代わりにUSB 2.0を搭載するなど仕様が若干異なっており、なので単純にPSoC 62の上位モデルがPSoC 63という訳ではないようだ。

また現在のラインアップはある意味ハイエンドであり、今後よりメモリ搭載量を下げ、動作周波数を落としたモデルや、Cortex-M0+コアを搭載しないモデルも用意されるという。なので、Photo09ではMain core resourcesとAux core resourcesという形で2つに周辺機器が分かれているが、このAux core resourcesにCortex-M4がアクセスできない訳ではなく、現実問題としては両方のコアからアクセス可能という話だった。

ちなみにCortex-M7に関しては、Davis氏曰く「PSoC 7については、すでに以前に長期ロードマップとしてアナウンスしている」(Photo18)とした上で、具体的なスケジュールなどはまだ言えないとした。さらに自動車向けのFMシリーズとの統合については「次世代の製品は両方を統合していく事になると思う」という話であった。

(大原雄介)