雑念のない時間が多い人ほど、幸福に近づく

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■幸福度は「今この瞬間ゾーン」への滞在時間に比例する

「人生の目的は、幸福と心の平安を得ることである」

と言ったのは、ブラアン・トレーシー(アメリカ人の著名なビジネスコンサルタント)です。この定義に、私も賛同します。

私たちは自分を生きている、自分の人生を生きているという実感がなければ、豊かな人生を送ることはできません。では、ブライアンの言う、「幸福と心の平安」を手に入れるためにはどうすればいいのでしょうか?

ポイントは「今この瞬間ゾーンの滞在時間」を長くすることができるかだと私は考えます。人生全体で、また毎日の生活の中で、“ゾーン”に入る時間をどれだけ長くできるか。それが、幸福と心の平安を手に入れるための重要な要素になります。

【1:ストレスは未来の不安と過去の後悔からやってくる】

今、マインドフルネス(精神集中)がブームです。瞑想などによって自己の内面を静かに観察し、「今ここ」に集中すること。それが、マインドフルネスです。

ストレスマネジメントの観点で言えば、未来の不安や過去の後悔から抜け出すには外的環境を変えるよりも、「今この瞬間に浸る」ことのほうがいい。「今この瞬間に浸る」とは、まさにある一定のゾーンに入って雑念がない状態です。

座禅や瞑想をして、呼吸に集中しているとそれ以外のことが頭から徐々に消えていきます。そこには静寂があり、穏やかさや豊かさが広がってきます。禅や瞑想が昔から存在し人々に引き継がれてきたのは、本質的な意味がそこに存在するからに他なりません。

前述した「心の平安」を得るためには、まずは今この瞬間ゾーンに入ることが重要ですが、入り方には好ましいパターンと好ましくないパターンがあります。例えば、私たちが疲れたり不安になったりした際に心のメンテナンスが不十分だと、つい悪い習慣によってゾーンに入ろうとすることがあります。

アルコールは、そのいい例です。お酒で未来の不安と過去の後悔から逃れ、今この瞬間ゾーンに入る。また、パチンコやストロットなど刺激が強くギャンブル性の高い娯楽で、今この瞬間に入ろうとする。現実から“逃避”して勝ち負けの世界にはまり込むのです。言うまでもなくアルコールやギャンブルは度が過ぎ依存状態になると、健康や経済の破滅を招きます。これを、ジャンクフロー(体に悪い没頭状態)と呼びましょう。

■「マインドフルネス」習慣で幸福度は増す

テレビやスマホも、今この瞬間に没頭できるシンプルで手軽な手段ですが、これらもやはり接触時間が長いと弊害があります。

では、今この瞬間ゾーンへの入り方で好ましいパターンとはどんなものか。それは、瞑想、座禅、ヨガのほか、家族やパートナー、友人などとの談笑など。自分がそれをしていて「心地よく感じるもの」「好きなもの」であることが前提条件です。とはいえ、健全な今この瞬間ゾーンに入る“儀式”の内容は人それぞれ。自分と相談して探してみてください。

【2:ワクワクゾーンに滞在する時間を長くしよう】

今この瞬間ゾーンに入ることは、癒しやストレス解消だけが目的ではありません。幸福を得るためにも重要なポイントです。

いわゆるフロー(没頭)の状態は、時間の経過を忘れてしまうほどの活動をした際にしばしば起こります。子供の頃、プラモデルを作ったり、パズルを作ったりして一心不乱になって没入した経験は多くの人があるでしょう。大人でも、時を忘れるほど熱中できることがある、そしてそのために1日にどれくらい時間を持っているかで人生の幸福感が変わってくるのではないでしょうか。

では最近、幸福を得る、今この瞬間ゾーンに入ったのはいつですか?

私自身のことをお話しすれば、ブログを書いたり、本を執筆したり、習慣化の学校のグループコンサルティングをしたりしている時は100%の純度で没頭しています。メールも電話もシャットアウト。スタッフともコンタクトを取らない。完全な「自分時間」。それは、至福の時間です。

人によって、幸福感情を抱くことができる活動は様々でしょう。読書をしている時、ジョギングでランナーズハイの時、仲間とワイワイ盛り上がっている時、おしゃべりをしている時、趣味のゴルフをしている時、旅行をしている時など……。大切なことは各活動で、ゾーンに入っている自分自身をじっくり味わうことです。その今この瞬間ゾーンの合計時間が長い人ほど幸福感が高いのではないか。私はそう考えています。

■私の「今この瞬間ゾーンに入る」方法

【3:今この瞬間ゾーンに入るためには? 】

今この瞬間ゾーンに入るためにはどうすればいいのか。もう少し掘り下げてみましょう。

一言で言えば、心が平和になり、ワクワクする習慣を持つことです。朝と夜にどんな習慣をつくるか、もっと言うと朝と夜にどれくらい今この瞬間ゾーンに長く入れるか。

私の場合、仕事は毎朝次の6つの習慣でスタートします。

・身の回りの片づけ
・原稿を書く
・瞑想
・ブログ作成
・音声講義を聞く
・読書

以上を15分刻みで行います。ひとつひとつの行為に没頭し、タイマーをかけます。時間が経過したら切り替えて次の習慣に移る。このローテーションによって、朝一番から、それはそれは素晴らしい充実感が得られます。それぞれの習慣で得られるのは……。

・片づけ→自己規律感
・書く習慣→自己対話
・瞑想→静けさとフォーカス(集中力)
・ブログ→創造力
・音声講義→創造力
・読書→成長感や心の豊かさ

6つのフルコース計90分で私の1日の仕事時間はスタートします。

私にとっては朝の「ゴールデンルーティン」と言えます。ルーティンというと修行のような行動か単調で退屈な儀式をイメージするかもしれませんが、そう感じるなら全く意味がありません。

ワクワクするのが前提です。今この瞬間ゾーンに入れる習慣は誰もがあるはずです。あなたも、リラックス、成長感、つながり、自己効力感、内省、創造や気づきなどどんな感情を味わいたいかという心の中の声を聞き、それをかなえる「没頭できる行動」をつくると、朝も夜も、今この瞬間ゾーンの時間が増えて、幸せと心の平安が得られます。

しかし、日中の仕事がつまらなかったり退屈であったりすれば人生の“3分の1”(会社にいる時間)はゾーンに入りにくいということになります。

私が習慣化コンサルティングで、クライアントの皆さんがやりたいことを見つけたり、天職についたりすることをご支援しているのは、仕事という圧倒的に長い時間を退屈なものにしないようお手伝いしたいからです。仕事時間をゾーンに入れるだけのワクワクしたものにすることが「人生を変え、より幸福なものにする」上で重要だと思っているからです。

ぜひ、あなたの真の心が求めるものが何かに耳を傾け、それを満たしてください。

(習慣化コンサルタント 古川 武士)