photo by Own Work CC BY-SA 3.0

写真拡大

 原子力事業で7000億円以上もの減損損失を計上し、債務超過に陥った東芝。将来の収益の柱になるはずだった虎の子の半導体事業も完全売却すると見られており、いよいよかつての超名門企業は解体に向かっている。

 同社はもともと、2015年にPC事業での押し込み販売など、総額2000億円以上に上ると見られる粉飾決算が明らかになったことで赤字転落。さまざまな事業を売却してなんとか2016年度の黒字化が見えてきたところに、巨額の減損損失でトドメを刺されてしまった形だ。注目すべきは今回の減損損失は粉飾の類ではなく、ある意味正当な手続きを経て、潜在的なリスクが顕在化した結果生じたものだということである。

 このように粉飾でなくとも多額の損失が発生して会社の経営が傾くケースは珍しくない。昨年の今頃、世間を騒がせていたシャープについても、鴻海との買収交渉に入った後で「偶発債務」が数千億円発生するかもしれないということが問題となった。ある種、粉飾よりも危険なこうしたリスクについて解説していきたい。

 まずは掛売りの代金や貸したお金が回収できなくなったことによって引当金を計上するケースと、保有している資産の価値がなんらかの理由で毀損されて評価損を計上するケースについて見ていこう。

⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=133027

 この場合、引当金や減損損失は「損益計算書(PL)」上の損失として計上され、その額の分だけ資産が減ることになる。当然のことながら、純利益の額を上回る額の損失が出た場合、企業は赤字転落する。また、引当金や減損損失によって減った資産の総額が負債を下回った場合は「債務超過」と呼ばれる状態になる。これは資産を全部売り払ったとしてもこれまでの負債を返せなくなることを指し、こうなった会社は倒産寸前の状態にあると言える。すぐにこの状態を抜け出すためには出資を募るしかない。そのためシャープは鴻海に身売りし、東芝は半導体事業を売ろうとしているのだ。

⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=133028

 とはいえ、引当金や減損損失はあくまで「会計上の損失」だ。これらを計上することによって新たにキャッシュが社外に流出することはない。

 貸していたり、掛金にしていて将来的に回収できると思っていたキャッシュが回収できなくなったり、将来キャッシュを生むと見込んで投資して得た固定資産や被買収企業が、想定していたほどのキャッシュを生めなくなったと「認識」したということに過ぎない。

 危険な状態ではあるのだが、企業の手元にキャッシュが残っている限りは、即座に倒産するということはない。東芝にしてもどの事業をどれぐらい売るか、という経営判断をする時間がギリギリ残されていたわけだ。

 一方で、取引先との契約が履行できなくなり違約金を支払う必要が出てきたり、敗訴によって賠償金の支払いが命じられたり、急なリストラによって年金債務が膨らんだりといった「潜在的債務」が顕在化するのはより危険だ。

⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=133029

 これらの債務は一見、先ほどの引当金や減損損失の計上と同じように費用の増大をもたらす。当期純利益の額を上回れば赤字転落、資産ー債務の額が負債を下回れば債務超過というのも同じだ。

 ただし、引当金や減損損失があくまで「会計上の損失」であるのに対して、賠償金や違約金は「これからキャッシュの支払いが求められる損失」である。そのため、会社に支払う分だけのキャッシュが残っていない場合は一気に経営破綻してしまう。黒字だったのに、取引先のエアバス社との間で多額の違約金が発生し、経営破綻したスカイマークの例は記憶に新しい。