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 3月6日にトランプ米大統領が、移民や難民の入国を制限する新たな大統領令に署名したことによって、旅客需要の減少懸念が浮上し、デルタ航空など航空株は軒並み安となったという。(参照:日経新聞)

 トランプ米大統領による移民や難民の入国を制限する新たな大統領令によって、新たな軋轢が生じることも予想でき、テロなどへの危機感から旅客需要の減少懸念が生じることは、確かに、考えられよう。

 しかし、本当にそうであろうか?短期的には、上記のようなニュースにより航空会社の株価の変動はあるとしても、航空会社の業績は、特に、国際線の業績はビジネスの動向の影響を受けることの方が高いのではないだろうか?

 過去の事実としては、1991年の湾岸戦争、2001年の同時多発テロ、2003年のイラク戦争・SARS、2008年のリーマンショック、2009年の新型インフルエンザ、2011年の東日本大震災などの戦争・テロ・金融危機・震災の度に国際航空旅客数は一時的な落ち込みを見せたが、トレンドとしては成長を続けている。(参照:「エアラインビジネスとグローバリゼーション」)

◆2016年の世界の航空旅客数は過去最高の37億人へ

 2月2日、IATA(国際航空輸送協会)はプレスリリースで、「Another Strong Year for Air Travel Demand in 2016」(2016年は航空旅行需要のもう一つの強い年)というリポートを発表した。(参照)

 同リポートによれば、2016年の世界の航空乗客数は、有償旅客の輸送距離となる有償旅客キロ(RPK : revenue passenger kilometers)が前年比6.3%増(うるう年効果を調整すると6.0%増)と、需要の増加を示しているという。そして、この強いパフォーマンスは、過去10年間の成長率の平均値の5.5%を上回っており、2015年と比較しても、座席数は6.2%増加(調整無し)し、座席利用率(ロードファクター)を0.1ポイント増加させ、過去最高の80.5%へ押し上げる結果になったとしている。

 Alexandre de Juniac(アレクサンドル・ド・ジュニアック)IATA事務総長兼CEOによれば、その背景には“700以上の新ルートの開設により、コネクティビティが充実した。それに、往復運賃の平均価格が44ドル安くなり、空の旅がアクセスしやすいものになった”ことが考えられると指摘し、”結果として、過去最高の37億人が目的地に向かい安全な空の旅をした。航空需要は引き続き拡大基調にある“という。

 事実、2016年の国際線の旅客数の伸び率では、中近東が最も高く(有償旅客キロ;+11.8%、座席供給;+13.7%)、2番がアジア(有償旅客キロ;+11.8%、座席供給;+13.7%)であった。北アメリカ(有償旅客キロ;+2.6%、座席供給;+3.3%)が興味深い。牽引役は太平洋路線であった。対して、大西洋路線は横ばいで推移した。北アメリカとアジアを結ぶルートは伸びている。

◆成長を見込む報告は多い

 他のさまざまな調査でも、同様の成長を見込むリポートがある。

 例えば、国土交通省による世界の航空旅客輸送量予測(2005年〜2025年)では、2025年までの世界の航空旅客輸送において、最も伸びが著しいのはアジア太平洋地域(年平均+5.8%)であり、輸送量も2005年に比べ約3倍に増加し、世界最大の航空市場に成長すると予想されている。(参照:「航空を取り巻く社会情勢等について」)

 また、Airports Council International(国際空港協議会;1991年に設立された、国際空港の管理者の団体。179の国、地域の1650の空港を運営する580の団体が加盟している。本部は、2010年からカナダのモントリオール)によると、2015年から2040年までの航空旅客数は、年平均4.9%で成長する。2040年における最大の市場はアジア太平洋地域(世界シェア;2015年34%から2040年47%へ)であるが、成長率だけを見ると、中東が年平均+7.7%でトップ(ただし、世界シェアは2040年9%の予想)、アジア太平洋地域が年平均+6.2%で2位である。(参照)

◆ウォーレン・バフェットも航空会社の株を買っている

 以上の通り、航空の需要は伸びていくことが予想されている。
 さらに言えば、米国の著名投資家であるウォーレン・バフェット氏も、投資先として、米航空会社が有望だと、以前とは見方を変えているのだ。

 ウォーレン・バフェット氏によるバークシャー・ハサウェイ「株主への手紙 2016」を読むと、バークシャーは航空会社の株式の購入を増やし、2016年12月末時点で、デルタ航空約23億ドル、サウスウエスト航空約18億ドル、ユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングス約15億ドルの株式を保有している。

  2016年11月15日付の日経新聞によれば、“米航空大手はここ数年の業界再編で合理化を進めてきたうえ、原油価格の下落に伴う燃料コストの低下で業績も回復基調にある。” と、市場では評価されているという。

 トランプショックでの下げを「押し目」と見るか否か。いずれにしても今後の動きが気になるのは間違いない。

<文/丹羽唯一朗 photo by skeeze via pixabay(CC0 Public Domain)>