公道でも役に立つ! ドライビングスクール「Yui Racing School」を体験

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ルノー公認のドライビングレッスンに潜入

陽射しがだんだんと暖かさを増し、そろそろモータースポーツも開幕するころ。周囲にチラホラ出現するのが、なんだか無性に走りたくてウズウズしてくる人たちだ。冬の間の運動不足解消とか、運転スキルを磨きたいとか、今シーズンこそレースデビューするゾ、とか目的はいろいろ。そんな人たちにまずトライしてみて欲しいのが、運転のプロからじっくりと技術や理論を学ぶことができる、ドライビングレッスンを受講することだ。  

かくいう私もレース参戦歴は20年近くになるものの、昨年は一度もサーキットを走る機会がなく、どこかでしっかりリハビリをしたいなぁと思っていたところ。初心にかえって、スポーツドライビングの基礎から特訓できる機会を探していた。  

そんなとき、ルノー公認のドライビングレッスンを開催している「Yui Racing School」があると聞き、今回はメガーヌR.S.を借りて体験取材をさせてもらうことに。早朝の富士スピードウェイへ向かうと、すでに20人あまりの参加者が愛車を停めて準備をしていた。

「Yui Racing School」は、アメリカで長くモータースポーツに関わり、歴史ある名門レーシングスクール、「ジムラッセルレーシングスクール」でインストラクターを務めていたトム・ヨシダさんが、1999年12月に開校しチーフインストラクターを務めている。

ジムラッセルと言えば、アイルトン・セナをはじめ世界トップクラスのレーシングドライバーを数多く育成したことで有名だ。私の先輩たちも、一度はジムラッセルで学びたいと憧れ、念願叶って受講したらコテンパンにしごかれた、と自慢げに話していた。やっぱり、モータースポーツ先進国のレーシングスクールは一味も二味もちがうらしい。  

そうした豊富な経験をもつトム・ヨシダさんは、日本ではモータースポーツの敷居が高く、興味がない人や初心者を引き込み、段階的にモータースポーツを楽しむところに至るまでの橋渡しがうまくできていないと指摘。必ずしもレースに出ることが目的ではなく、クルマで楽しむことが目的で、クルマを安全に速く操ることを学ぶ過程に面白さがあり、結果としてレースに出てみたいと思うようになるのが本来の形だという。

参加者ひとり一人の状況を把握してくれる1対1のコミュニケーション

「Yui Racing School」は、トム・ヨシダさんのその想いを体現すべく、さまざまなカリキュラムが設定されている。ヘルメットなどレーシングギアの着用が任意で、初心者でも愛車で手軽に参加できるものから、ジムラッセルとほぼ同じ内容のレッスンを2日間みっちりと受けられるものまで、自分のレベルと目的に合わせて受講し、ステップアップしていける。

また卒業生を対象とした「スクールレース」なるものも開催され、参加者はそこで特訓の成果を腕試しすることもできるようになっている。  

今回受講したのは、富士スピードウェイの第二駐車場にパイロンで大小2つのオーバル(楕円)コースを設定し、そこでレッスンを受ける「YRSオーバルスクール」。クルマのバランスを崩さないで走る方法と、クルマの荷重移動を積極的に使って走る方法を体験し、最終的にクルマの限界内で走る方法を学ぶのが目的だ。 朝一番はまず、約50分間の座学からスタート。トム・ヨシダさんは出席確認をしながら、リピーターには「最近の調子はどう?」などと問いかけ、初参加者には「今までどんなところを走ってきたか?」「今日はどんな目的で来たの?」などと話を聞き、一人一人の状況を把握する。私はまずそれに感心した。

これまで数多くのドライビングレッスンを取材してきたが、インストラクターと参加者が一対一でコミュニケーションを取ることができるケースはほとんどなかった。同じカリキュラムを受けるといっても、参加するクルマも違えば年齢も経験値も違うのだから、そのベースを知った上でレッスンを進めてくれるトム・ヨシダさんのやり方は、参加者にとってとてもありがたいものだ。 

そして、座学では運転操作のすべての基本となる「Even Throtle」「Even Brake」の理論をわかりやすい例を交えながら解説してくれる。要するに4輪の接地バランスを限りなく均等にすることを考えながら操作すると、クルマは無理なく思いどおりに操れるという理論。頭のなかでは、「なるほど!」とすでにデキる気分満々になって、いよいよ実践の走行開始だ。 

車内ラジオで走っている途中に細かく指導してくれるから上達が早い

最初は、直線部分が60mほどの小さなオーバルで3台ずつのグループに分かれて走行。45km/h、50km/h、55km/hとだんだん速度を上げていき、同じようにバランスを崩さず走る練習を繰り返す。座学で教わった理論を思い描きながら走るものの、低速とはいえ操作とクルマの動きが一致せず、これがなかなか思うようにいかない。  

そんな走行を外から厳しくチェックしているヨシダさんの声が、車内でラジオを通じてビシバシ飛んでくる。私は「コーナー手前でアクセルオフするクセがあるよ!」「手前を見過ぎだから、もっと遠くを見て!」と言われたが、どちらもそのとおり! さすが、鋭い指摘に身が引き締まる。  

そして次に、グループごとに連なって走る練習。これも速度は同じように上げていくが、前のクルマに置いていかれないよう単独で走るのとはまた違った意識が必要になる。でもヨシダさんのアドバイスが走行中にリアルタイムで聞こえるから、すぐにトライできるのがいいところ。自分のダメなポイントをひとつずつ直していくと、自然とクルマの動きも安定してきて、上達している実感がある。  

こうして基本を繰り返し実践したあと、今度は直線130mの大きなオーバルに移り、速度無制限での走行。といっても4つのコーナーは微妙に角度や路面の傾斜が異なり、これがなかなかテクニカルで難しい。右回り、左回りと交互に走るので、そのたびに色々と考えながら走ることを求められる。  

インストラクターが参加者の愛車を運転してクルマへのアドバイスも

ヨシダさんはその間、参加者のクルマを自ら運転し、助手席に参加者を乗せて走りながらアドバイスをしてくれる。聞きたいことをなんでも聞けて、実際に運転の見本も間近で見ることができるから、短時間で上達するのだろうと実感。

しかも、ヨシダさんが「このタイヤの履かせかたは危ないよ」と言って、その場で交換していた参加者もいたほど。初心者はクルマのセッティングのイロハもよくわからないから、こうしてプロが指摘してくれるのはありがたいことだ。  

さて、ヨシダさんにメガーヌR.S.にも乗っていただいた。じつはFFのハイパワーモデルというのは、一般的にこうしたオーバルコースにはやや不向きで、速く走らせるにはそれなりの技術が必要なのだ。でもさすが、ヨシダさんはメガーヌR.S.を手足のように操り、スムースにオーバルを駆け抜ける。その秘伝の(?)コツは次回動画リポートで詳しく公開するので、お楽しみに。  

こうして夕方までみっちりと走り込み、すべてのカリキュラムが終了。私自身も、一般道では体感することのできない、メガーヌR.S.の懐深い挙動や、気持ちを昂ぶらせてくれるサウンドなどをじっくり堪能でき、とても清々しい1日になった。ヨシダさんが言うように、近年は誰でも簡単にスピードが出せてしまうクルマが多くなり、「うまく運転できている」と錯覚させられているけれど、本当はちがう。

あらゆる状況で思いどおりにコントロールできるテクニックこそが、クルマを安全に速く走らせるすべての基本。そしてそれを習得するには、むやみに我流で走るよりも、プロの指導のもとで効率的な練習を積むのがいちばんの近道だ。  

また、せっかくいいクルマを持っていても、そのクルマの本当の実力を知らずに乗っているなんてもったいない。「Yui Racing School」に来れば、こういう操作をするとクルマはこう動くのか、と頭と身体で知ることができ、思いもよらない新しい愛車の魅力に出逢えるはず。ルノーオーナーのみなさんも、そうでない人も、今年こそは「ちゃんと」クルマを操る楽しさを身につけませんか。