米リコード(Recode)などの海外メディアの報道によると、米アマゾン・ドットコムは、本社のあるワシントン州シアトルの近くに、新たな対面販売の書店を開設する計画という。

実店舗展開、着々と

 場所は、シアトルからワシントン湖を隔てた東側に位置するベルビューという都市のショッピングモール内。アマゾンの広報担当者は新店舗の計画を認めており、「アマゾンの書店をベルビューに開設するのを楽しみにしている。現在当社は店長やスタッフを募集している」と話しているという。

 同社が書籍を対面販売する店舗「Amazon Books」の1号店をシアトルに開設したのは2015年11月のこと。この店舗はワシントン大学近くにあるショッピングモール「ユニバーシティー・ビレッジ」の一角にあり、数千冊の書籍を販売しているほか、電子書籍端末「Kindle」やタブレット端末「Fireタブレット」、音声アシスタント機器「Echo」、映像配信端末「Fire TV」なども陳列し、同社製品を紹介するショールームのような役割にもなっている。

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 当初多くのメディアは、この1号店について、あくまでも実験的な店舗であり、もしこれが成功すれば、アマゾンは新たな店舗を他の地域で開設する可能性があるなどと伝えていた。

 しかし、それから1年4カ月がたった今、アマゾンはAmazon Booksをカリフォルニア州サンディエゴや、オレゴン州ポートランドなどにも開設し、現在は4店舗を営業している。さらに同社はニューヨーク市やシカゴなどにも同様の店舗を開設する予定で、今回新たに分かったワシントン州の店舗で合計10店になる。

 アマゾンは最近、こうした実店舗展開を加速させるとともに、小売り事業の強化を図っている。例えば昨年12月には、スマートフォンのアプリで自動精算する、レジ不要の食料品店「Amazon Go」を発表している。この店舗は現在、同社の従業員向けに試験的に営業しているが、米メディアによると、数カ月後にも一般公開される見通しという。

 また、昨年10月は、同社がドライブスルー方式の食料品受け取り店舗の開設を計画しているとも伝えられたが、米ギークワイヤによると、この店舗は工事が着々と進められているという。

インドで自前の小売り事業を展開か

 一方、アマゾンはインドで、食料品のネット小売事業を、地場企業を通すことなく自ら行うことを目指していると言われている。こちらは、米ウォールストリート・ジャーナルが3月9日付の記事で伝えたものだ。

 これによると、アマゾンはインドの新事業展開に関して、5億ドルを投資すること計画しており、そのための許可をインド商工省に求めている。

 許可が下りれば、主に野菜やフルーツなどの地場の食品を自ら仕入れ、ネット販売する事業を立ち上げる計画という。

立ちはだかるインドの外資規制

 アマゾンがインドで電子商取引サイト「Amazon.in」を開設したのは、2013年6月のこと。

 しかし、インドには小売業に対する外資規制がある。このためアマゾンが同国で行っているのは、地場の出店者と消費者を仲介するマーケットプレイス事業と、商品の保管と配送などを代行する「Fulfillment by Amazon(FBA)」事業。

 つまり、アマゾンは、自ら商品を仕入れ、販売するのではなく、電子商取引インフラや、倉庫・物流ネットワークなどのロジスティック業務を小売業者に提供し、その料金を得ているというわけだ。

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 ウォールストリート・ジャーナルによると、インドでは家族経営などの小規事業者を保護するため、外国企業が、地場企業を介さずに商品を販売することを禁止している。この規制があるため、アマゾンは同国で「Amazon Now」と呼ぶサービスを行っているのだという。

 このAmazon Nowでは、同社のスタッフが提携する食料品店の前で待機し、ネットでアマゾンに注文が入ると、店の棚から商品をピックアップし、それをオートバイで顧客の元に運ぶ。

 なお、今回のインド当局への認可申請は、ナレンドラ・モディ首相の経済・市場改革に向けた取り組みのもと、外国直接投資の要件が緩和されたことを機に出された。

 これにより、アマゾンなどの外国企業は自社が100%出資する食品小売事業を持つことが可能になる。ただしこれには、商品がインド国内で生産、あるいは加工されたものでなければならない、という条件があるとウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

筆者:小久保 重信