「ヤマシンフィルタ HP」より

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 公約に大規模インフラ整備を掲げたトランプ氏が米大統領に就任し、米国では今後道路や橋梁、空港などの整備が進む見通しとなった。米国だけではなく、日本や中国でもインフラ関連の需要は旺盛だ。こうした、日米中のインフラ推進がビジネスチャンスになっている企業がある。それが、建設機械用の油圧フィルタで世界首位のヤマシンフィルタだ。
 
 パワーショベルやダンプトラックに代表される建機は、駆動部分は油の力で動かす仕組み。空気の力で動かす空圧に比べて、パワフルな動きを制御するのに適している。建機用の稼動に不可欠なフィルタは、シリンダーなどの油圧機器を保護する目的で搭載される。建機の高性能化に伴って、トランスミッション(変速機)、エンジンオイル向けなど、フィルタは広範囲で使われている。

 同社の最大の強みは、独立系であるため、世界の主要な建機メーカーすべてに納入している点だ。米キャタピラー、日本のコマツ、日立建機、中国では三一重機、国営の徐工など、これらの企業の建機は、ヤマシンのフィルタなしに動くことはできない。

 ヤマシンは1956年の創業以来、一貫してフィルタの開発に取り組んできたことで技術的な優位性を維持。建機という高温・高圧のオイルのなかで、高い「ろ過」精度と耐久性が評価されている。

 米国ではトランプ政権の下でインフラ投資がこれから本格化するとみられる。全米の高速道路のおよそ半分は完成後45年が経過している一方、輸送手段の4割以上がトラックに依存しているという。リーマン・ショック以降の経済低迷で、公共工事が手控えられてきた代償で、もはや道路の補修はまったなしの状況といえる。橋梁なども同様だ。米国ではキャタピラーだけでなく、日本の建機メーカーも活躍している。

 日本では今年夏以降に、2020年の五輪に向けた整備が本格化するとみられている。また、中国については景気の先行きが不透明との見方があるが、政府が約2兆元(33兆円)規模のPPP(官民連携)のインフラ投資を昨年に発表し、以降は建機の需要が伸びている。ヤマシンの幹部は「三一重機の生産工場はフル稼働状態」と打ち明ける。

●懸念材料も

 こうした状況を受け、ヤマシンの業績は拡大基調にある。17年3月期の売上高は99億5000万円(前期比5%増)、営業利益は8億8000万円(同2.1倍)の見通しだ。営業利益は当初、3億4400万円(同16%減)の計画だった。第2四半期時点で7億8000万円に増額し、第3四半期時点でさらに上方修正となった。主に中国での案件増加が要因だ。18年3月期も勢いは衰えず、営業利益は初の10億円乗せが有力視される。

 だが、懸念材料もある。それはトランプ大統領が「アメリカ・ファースト」(米国第一)政策を打ち出し、メーカーに自国での生産を求めている点だ。ヤマシンではキャタピラーなど米国向けには、フィリピンで生産したフィルタを納入している。米国でつくる必要に迫られる可能性も否定できない。これについて、同社幹部は「キャタピラーから、米国にあるフィルタメーカーを買収しないか」と内々に打診されていることを明らかにしている。それほど、ヤマシン製品に対する信頼度が高い証しともいえる。ただ、単純にM&Aすれば良いという話ではない。高い品質が維持できるかなどの課題はある。

 また、IoT(モノのインターネット)への取り組みも積極的だ。現状、フィルタの交換時期は建機の稼働時間などでおおむね決められてきている。ただ、炎天下や寒冷地などでの差や、連続稼動時間によってもフィルタの寿命は変化する。そこで同社では、フィルタにセンサーを付けて、交換時期を顧客に知らせるシステムを開発した。現在、実機を使った試験を行っており、実用化が迫っているという。

 リーマン・ショックのような世界同時の景気後退リスクを除けば、日本のフィルタメーカーの躍進が続きそうだ。
(文=和島英樹/ラジオNIKKEI 記者)