「誰もが地理的・文化的境界を越えて情報を共有し、アクセスできるオープンプラットフォームとしてウェブを想像しました」と語るティム・バーナーズ=リーが、「今後もウェブが全人類にとって役立つツールであり続けるために変更すべき3つのこと」をイギリスの大手紙The Guardianに語っています。

I invented the web. Here are three things we need to change to save it | Tim Berners-Lee | Technology | The Guardian

https://www.theguardian.com/technology/2017/mar/11/tim-berners-lee-web-inventor-save-internet



◆1:個人情報の管理ができなくなっている

現在、多くのウェブサイトが「個人情報と引き替えに無料のコンテンツを提供する」というビジネスモデルをとっています。長く複雑な利用規約に同意する必要がある場合もありますが、ユーザーの多くはこのスタイルに同意しており、基本的にこういった類いの「無料サービスと引き替えに収集される個人情報」に無関心です。こういったスタイルを受け入れることと、何の対策も行わないことは似ているようで大きく異なります。例えば、ユーザーが情報を「誰といつ共有するか」などをしっかりと管理すれば、本当の意味で無料でサービスを使えるようになります。しかし、多くのインターネットユーザーは「その機会を逃している」とのこと。

これはウェブサイトに限ったことではなく、例えばTSUTAYAやコンビニで利用できるTカードでも、手動で「個人情報提供の停止手続き」を行うことで個人情報が勝手に引き渡されることを防ぐことができます。しかし、そういった手続きを行うユーザーが少ないことをティム・バーナーズ=リー氏は指摘しているというわけです。

Tカードが個人情報を提供する企業を通知してくれる「Tカード個人情報提供先新着bot」 - GIGAZINE



このような企業による広範なデータ収集には他の影響もあります。政府はインターネットユーザーのオンライン上でのあらゆる動きを監視し、プライバシーに対する脅威となるような極端な法律を通過させています。こういった環境下ならば、政府の方針に批判的な人物を監視することも簡単に可能であり、自由な発言ができなくなっていくであろうことは明らかです。「政府は市民にとっての最良を常に行う」と思われている国でも、国民全ての行動が監視されているとすれば、人に知られたくないような健康問題や性的嗜好については「ウェブで検索することは控えよう」と考える人が出てくることは明らか。そうなれば、ウェブ本来の意義が失われることは明白です。

◆2:誤った情報はウェブ上で簡単に広がる

多くのニュースサイトやソーシャルメディア、キュレーションアプリなどが存在しますが、実際のところ多くのユーザーは一握りのソーシャルメディアやサイトしか使用していないという分析結果が出ています。そして、ソーシャルメディアやニュースサイトは利用者のクリック情報などからユーザーの嗜好を学び、よりクリックされるもの、つまりはユーザーが好むものを見せようとする傾向にあります。そうなると、一部のソーシャルメディアやニュースサイトしか使用していないため、入ってくる情報が大きく偏る可能性は十分にあり得ます。

また、「ユーザーがクリックしてくれるようなニュース記事」が作成されているわけなので、それが誤った情報や偽ニュースであったとしても、それらは驚くべき速度で拡散されてしまいます。これに加え、データサイエンスの知識やネット上に無数に存在するボットによるネットワークを用いれば、その誤った情報を意図的により拡散させることも可能です。

実際、2016年のアメリカ大統領選挙以降、誤った情報を拡散させるために登場したと思われる「偽ニュースサイト」の存在が度々話題になっており、アメリカで発行部数第5位の新聞であるワシントン・ポストやGoogleが一部のニュースサイトを「ウソを拡散するニュースサイト」としてリストアップしています。

ワシントン・ポストが「ウソを拡散するニュースサイト」として200以上を列挙したブラックリスト記事に批判が集まる - GIGAZINE



Googleが偽ニュースを垂れ流すサイト200個を追放 - GIGAZINE



◆3:オンライン上の政治的広告には透明性と理解が必要

「ほとんどのユーザーが一部のソーシャルメディアやニュースサイトしか使用していない」という事実と、個人情報を活用したアルゴリズムが高度に発展してきたことで、オンライン上での政治的キャンペーンはユーザーを直接ターゲットとした広告に変化していきています。ある情報によると、2016年のアメリカ大統領選挙ではFacebook上に毎日5万種類の政治的広告が表示されたそうです。また、アメリカや世界の一部の地域では政治的広告が非倫理的な方法でも使用されており、例えば有権者を偽のニュースサイトへ誘導したり一部の層を世論調査から遠ざけるように誘導するという悪質な広告が表示されていたことも報告されています。

また、一部の層をターゲットにした広告ならば、グループごとにまったく異なる、場合によっては矛盾するような主張を行うことも可能です。これらは複雑な問題であり解決は簡単ではありませんが、ニュースを配信する側がこれまでとは異なる収益モデルを構築することや、公正なデータ管理機関を設けるなど改善方法はある、とティム・バーナーズ=リー氏は主張しています。



By LBJ Library

なお、フリーでオープンなウェブの推進、ウェブの機能性と構造安定性の拡大、地球上のすべての人々へのウェブの恩恵の拡大を目指すWorld Wide Web Foundationは、2022年までの解決目標に取り組む問題としてこの3つに取りかかっています。